メリット制
メリット制とは?
「メリット制」とは、一定要件を満たす事業場の労災保険料率を、その事業場で発生した労働災害の多寡に応じて±40%の範囲内で増減させる制度のことです。労災保険率は、事業の種類ごとに過去3年間の災害発生率等を考慮して定められますが、同一の業種でも個々の作業環境や事業主による災害防止努力などの違いによって災害発生率に差が生じるため、保険料負担の公平性を確保するとともに災害防止努力を促進する観点から同制度が設けられています。これにより、災害の発生率が高い事業場ほど保険料負担が重くなり、逆に低い事業場は軽減されます。
災害発生率が低いほど労災保険料が下がる
法改正で2012年度から適用対象拡大も
メリット制は「一定の規模以上の事業」に適用される制度であり、「一定の規模以上の事業」とは以下の要件のいずれかを満たしている事業を指します。要件の(3)については、2012年4月1日施行の厚生労働省の改正省令によって緩和され、同制度の適用範囲が拡大されていますので、留意してください。
(1) 連続する3年度中の各保険年度において、常時100人以上の労働者を使用している場合
(2) 連続する3年度中の各保険年度において、常時20人以上100人未満の労働者を使用しており、その使用労働者数に、事業の種類ごとに定められている労災保険率から非業務災害率(通勤災害や二次健康診断等の給付に充てる分の保険料率)を減じた率を乗じて算出した数が0.4以上である場合
(3) 建設業と林業では、従来、一括有期事業(年間の中小規模の工事をひとまとめに扱うもの)については、連続する3年度中の各保険年度において年間の確定保険料の額が合計100万円以上である場合に、単独有期事業(大規模な工事)については、当該工事の確定保険料額が100万円以上であるか、または請負金額が1億2000万円以上である場合にメリット制が適用されました。2012年の改正により、有期・単独とも適用要件となる確定保険料の額が従来の「100万円以上」から「40万円以上」に緩和され、適用対象となる事業場が増えることになります。
ただし一括有期事業にかぎっては、連続する3年度中の各保険年度の確定保険料額が合計100万円以上なら、保険料率を上げ下げするメリット増減率は従来通り最大で「±40%」が適用されますが、3保険年度中のいずれかの保険年度の確定保険料額が40万円以上100万円未満の場合は、適用される増減率は最大で「±30%」に変更されています。
メリット制が適用された事業場の保険料率が実際にどれくらい増減されるかは、メリット収支率によって判定されます。メリット収支率とは、一定期間において支払った保険料の額に対し、業務災害に関わる保険給付等の額の割合がどれくらいであったかという比率をもとに厚労省が算出するもので、すなわちその事業場における災害発生の多寡を示す尺度となります。収支率が75%以下である場合は保険料率が割引され、その値が小さいほど割引率が大きくなります(最大40%の割引)。一方、収支率が85%を超える場合は、その値が大きいほど保険料率は大きく増加します(最大40%割増)。収支率が75%を超えて85%以下である場合は、労災保険料率に増減はありません。
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