肩代わり法
肩代わり法とは?
肩代わり法とは、2010年5月に成立し、同7月からスタートする改正健康保険法の通称です。同法は、中小企業の社員が加入する協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)の保険料アップを抑えるために、3年間の特例措置として、大企業中心の健康保険組合に負担増を求めるもの。協会けんぽに対する国の財政支援の一部を、健保組合や公務員らの共済組合が事実上「肩代わり」する形になったことから、肩代わり法と呼ばれています。
財政難にあえぐ協会けんぽの救済法
大手企業の健保組合が負担を「肩代わり」
長引く不況下での給与減に伴い、医療保険の保険料収入は激減しています。中小・零細企業の加入が多い協会けんぽは財政悪化が著しく、新法成立前の試算によると、赤字額は09年度見込みで約6,000憶円に拡大。8.2%(全国平均、労使折半)の保険料率を9.9%にまで引き上げないと、10年度には破たんする見通しでした。政府では、この保険料率の上昇を9.34%に抑えるために、協会けんぽへの国庫補助率を現行の13%から16.4%に増やすことに決定。しかし財政難は政府も同じ、協会けんぽの救済に要する国費の増額分を既存の財源だけで賄うことはできません。そこで目を付けたのが、健保・共済組合や協会けんぽなどが負担している後期高齢者医療制度への支援金です。
新制度では、この後期高齢者医療制度支援金(10年度計3兆5,500億円)の算定方法を変更。従来は健保、共済とも各組合への加入人数に比例した金額を拠出していましたが、一部を給与に応じた額とし、人数にかかわらず給与総額が高ければ負担が増えるしくみに改めました。これにより、健保と共済の支援金はそれぞれ500億円増、350億円増となり、協会けんぽの負担分は逆に850億円軽減されることになりました。この協会けんぽが拠出する支援金も16.4%は国費で賄われますが、新制度では給与総額に応じて支払う分への国庫補助がなくなるため、900億円の国費が浮くことに。これが、協会けんぽの保険料率抑制に充てられるわけです。
新制度の導入により、全体で500億円の負担増となる健保組合も、給与水準の低い3分の1強の組合は負担減となります。しかし健保組合もまた不況にあえいでいます。健康保険組合連合会(健保連)によると、10年度は新制度抜きでも、約9割にあたる1,295組合が赤字になる見込みです。赤字総額は過去最大の6,600億円にのぼり、352組合が保険料のアップを予定しています。すでに大手では、NECが09年4月から6.7%の保険料率を1%引き上げて7.7%にしています。ソニーは0.2%増の6.2%、デンソーは0.8%増の7.0%、カシオ計算機、セブン&アイ・ホールディングスはそれぞれ1%増の7.7%、8.2%に引き上げています。また西濃運輸や京樽のように、保険料率を引き上げても組合を維持することが難しく、解散に追い込まれるケースも相次いでいます。
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