企業研修、採用、評価、人材開発、労務・福利厚生のナレッジコミュニティ

【ヨミ】フレキシキュリティ フレキシキュリティ

フレキシキュリティとは、柔軟性を意味するフレキシビリティ(Flexibility)と安全性を意味するセキュリティ(Security)を組み合わせた合成語で、雇用の柔軟性を担保しながら、同時に手厚い失業保障によって労働者の生活の安定を図る政策のこと。デンマークやオランダで失業率の改善と経済成長に効果を上げたとされることから、雇用政策のブレイクスルーとして注目されています。
(2010/4/5掲載)

フレキシキュリティのケーススタディ

解雇規制の緩和、失業手当の充実、有効な職業訓練
――雇用の流動性と安定性を両立させる3つの条件

労働市場を自由化すれば、雇用調整による経営の効率化が容易になり、環境変化に強い産業構造への転換が進みますが、いったん景況が悪化すると失業者が大幅に増え、深刻な社会不安を引き起こす可能性もあります。逆に労働者保護に偏り過ぎると、経営の硬直化や労働意欲の低下を招き、社会全体の活力を奪いかねません。そこで解雇規制を緩和して、雇用の柔軟性を高める一方、効果的な失業対策で労働者の生活の安定を保障しようというのがフレキシキュリティの考え方です。

雇用の柔軟性と労働者保護を両立させるためには、単に失業手当を充実させるだけではなく、実効性のある職業訓練の実施など、失業者の再就職を強力に支援する体制が欠かせません。それが、フレキシキュリティの要諦です。

成功例といわれるデンマークでは、1994年から雇用規制を緩和。その一方で失業給付の期間を最長で4年間、給付額を前職手取りの6割〜8割(低所得者は9割前後)にまで引き上げました。ただし失業者が給付を受け取るには、職業訓練プログラムへの参加が「義務」となります。職業訓練プログラムの開発や、訓練の場となる雇用支援センターの設立は労使を挙げて進められました。

職業訓練は失業中だけでなく、在職中でも受講でき、受講中の賃金減額分は国と経営者団体が拠出する基金から給付されます。公的支出の額は当然大きく、職業訓練のための支出に限っても、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均(2008年)がGDP比0.17%であるのに対して、デンマークは0.54%。米国は0.05%、日本は0.04%(OECD調べ)に留まっています。こうした公費による多額の人的投資と労使の協力の結果、同国の失業率は1993年の13%超から、2008年には年間平均3.3%にまで低下しました。

しかしこれだけをもって、フレキシキュリティが正しいとはいえないとの見方もあります。リーマンショックに端を発する経済危機以降、各国の雇用情勢は軒並み悪化しましたが、経済評論家の森永卓郎氏によると、解雇規制の強い国ほどやはり失業率の上昇は抑えられているといいます。2009年の年間平均で見ると、解雇が最も容易なアメリカは9.8%で前年に比べて3.5ポイントの悪化、デンマークは6.0%で3.7%も悪化しました。両国よりも解雇規制の厳しい日本は5.1%、前年比1.1ポイントの上昇に留まっています。

記事のオススメ、コメント投稿は会員登録が必要です

あわせて読みたい

ジョブレス・リカバリー
「ジョブレス・リカバリー」(jobless recovery)とは、景気が回復しても雇用の拡大がなかなか伴わない状態のことで、日本語では主に「雇用なき景気回復」と訳されます。一般に景気回復局面では、雇用情勢は景気に半年から一年程度遅れて動くため、その間、一時的にジョブレス・リカバリーに陥ることが知ら...
メンバーシップ型雇用
メンバーシップ型雇用とは、先に人材を確保し、後から仕事を割り当てる雇用のあり方を指します。終身雇用を前提とする日本の企業の多くは、メンバーシップ型雇用といえます。年功序列や終身雇用に見られるメンバーシップ型雇用は、これまで多くの日本の企業が取り入れてきた雇用形態です。これと対比されるのが、職務に応じ...
エンプロイメンタビリティ
「エンプロイメンタビリティ」(employmentability)とは、「企業の雇用能力」を意味する用語です。雇用される側からみて魅力的な企業か、継続的に雇用されたいかといった価値に関する概念で、雇用主としての能力や優秀な人材をひきつける吸引力を表します。単に高報酬を保障できればいいということでは...

関連する記事

外国人を雇用している企業は過半数、「さらに増やす」「今後雇用する」企業も半数近くに
人事担当者に外国人の雇用状況について聞いたところ、現在雇用している企業は過半数で、「さらに増やす」「今後雇用する」企業も半数近くであることがわかった。
2019/08/20掲載人事白書 調査レポート
高年齢者雇用の最新実態--改正高齢法への対応と継続雇用制度の実態を調査
団塊世代の大量退職が始まる2007年を目前にして、「改正高年齢者雇用安定法」が2006年4月から施行されました。改正法は、定年後65歳までの安定した雇用確保を企業に義務付けています。2006年5月から6月にかけて『労政時報』が行った「改正高齢法への対応と高年齢...
2007/04/16掲載人事・労務実態調査
ライトマネジメントコンサルタンツジャパンと厚生労働省の雇用支援事業
ライトマネジメントコンサルタンツジャパンと厚生労働省の雇用支援事業
2005/03/07掲載編集部注目レポート

関連するQ&A

障害者の雇用
障害者を雇用する際の留意点を教えて下さい。 また、助成金などについても併せて教えて下さい。 当社は、小売業です。 現在、雇用率0.6%です。
再雇用後の退職金水準について
統計データがあるかどうか分かりませんが、再雇用後の退職金水準をどの程度にすべきか知りたいと考えています。一旦、退職金は、一旦再雇用時に支給するとして、55歳~64歳迄再雇用の場合、60歳~65歳迄再雇用の場合の2パターンが分かりますと幸いです。
外国人労働者の雇用について
外国人の方を雇い入れる際の注意事項を教えてください。 また、正社員雇用に限らずアルバイトの雇用の際も同様となるのでしょうか?
新たに相談する
相談する(無料)

「人事のQ&A」で相談するには、『日本の人事部』会員への登録が必要です。

新規登録する(無料) 『日本の人事部』会員の方はこちら
業務に関するちょっとした疑問から重要な人事戦略まで、
お気軽にご相談ください。
各分野のプロフェッショナルが親切・丁寧にお答えします。

関連するキーワード

分類:[ 雇用 ]

注目のキーワード解説をメールマガジンでお届け。

「よくわかる人事労務の法改正」ガイドブック無料ダウンロード

50音・英数字で用語を探す

注目コンテンツ

【人事の日制定記念企画】
オピニオンリーダーからのメッセージ

HR領域のオピニオンリーダーの皆さまから全国の人事部門に向けてメッセージを頂戴しました。


人事メディア情報

人事メディア情報

人事・労務関連の代表的なメディアをご紹介いたします。


人事担当者のお悩みにお答えします。<br />
こんな時どうする?~メンタルヘルス相談室

人事担当者のお悩みにお答えします。
こんな時どうする?~メンタルヘルス相談室

「メンタルヘルス対策」は、あらゆる企業にとって重要な人事施策のひとつ。...