高卒採用
高卒採用とは?
高卒採用とは、新卒の高校生を対象とする採用活動です。高卒採用は、高校を経由して採用活動を行う「指定校求人」が一般的であり、独自のルールが定められています。たとえば、応募者が1社にしか応募できない「一人一社制」は代表的なものです。ほかにも厳密な選考スケジュールや、形式が決まった求人票も特徴として挙げられます。
企業は学校を通じてのみ、求職者(生徒)への連絡が可能です。高卒採用を導入する際は、ルールを理解し、スケジュールや流れを把握する必要があります。
高卒採用には手続き上のルールがある
高卒採用には、さまざまなルールがあります。高卒採用で一般的な「指定校求人」では、大卒向け新卒採用では当たり前とされる、企業が求人媒体を選ぶことや、求職者(学生)と直接連絡を行うことはできません。なお、高卒採用には全国に求人を公開する「公開求人」のやり方もありますが、ここでは、指定校求人のルールについて解説します。
- 採用選考のスケジュールが決まっている
- 複数の企業には応募できない(一人一社制)
- 求人票の形式が決まっている
- 選考で使用できる書類が決まっている(全国高等学校統一応募書類)
- 学校を通じて求職者(学生)に連絡を行う(企業からの直接連絡の禁止)
指定校求人では、企業が求人票をハローワークに送付します。求人は、ハローワークが内容の確認をしたうえで高校に送付されます。求人に対して、校内で応募者を募り、複数の応募がある場合は高校で選考が行われる点も特徴です。
高卒採用と新卒採用の違い
大学生向けの新卒採用では、選考スケジュールや使用する求人媒体、面接回数などは基本的に企業に決定権があります。また、求職者が応募する社数にも制限はありません。
しかし、高卒採用の場合は、大学生向け新卒採用のような自由度はありません。選考スケジュールは法令で決められたものに沿って行わなければならず、求人票もハローワーク指定のもののみと決まっています。学生が応募できるのは原則1社の専願制です。他の企業に応募する際は選考結果を待つ必要があります。また、高卒採用では特別な事情がない限り、面接は1回のみです。新卒採用では書類選考で合否をつけることができますが、高卒採用では必ず面接などを含めて選考を行う必要があります。
高卒採用(指定校求人の場合) | 新卒採用 | |
---|---|---|
スケジュール | 法令で決まっている | 自由 |
応募する社数 | 一人一社制 | 制限なし |
求人票・媒体 | ハローワーク指定 | 自由 |
面接回数 | 原則1回のみ | 指定なし |
高卒採用ではスケジュールが決まっている
高卒採用の大きな特徴は、選考スケジュールが決められていることです。大学生向け新卒採用でも、選考開始時期などのスケジュールが告知されますが、あくまで政府要請であり、最終的な決定権は企業にあります。一方、高卒採用の場合は、政府発表のスケジュールに沿って実施しなければなりません。エリアによって異なる場合もありますが、基本的には6月からハローワークへの求人申込が始まり、9月に選考を実施する流れとなっています。
- 6月1日:ハローワークへ高卒求人の申込開始
- 7月1日:求人票の公開開始
- 7月中旬:応募前職場見学の実施 ※夏休み期間中
- 9月5日:応募書類の提出開始 ※沖縄は8月30日
- 9月16日:採用選考・選考結果の通知開始
高卒採用の特徴として、「応募前職場見学」があります。応募前職場見学とは、学生の職場への理解を深めるために企業が任意で実施するものです。注意しなければならないのは、応募前職場見学は選考の場ではない、ということです。応募前見学を実施する場合は、7月の求人票公開から、9月5日の応募スタートまでの間に受け入れを行います。
高卒採用には「一人一社制」がある
高卒採用では、一人一社制という、原則として選考を受けられるのは一企業のみという専願制度がとられています。大卒の新卒採用のように一人が複数社に応募することはできません。選考を受けられる企業数に制限が設けられているのは、学生は学業を優先する必要があることが理由です。高卒採用において学生は、一つの企業に応募し、選考結果を受け取ったのち、改めて別の企業に応募できます。
見直しが進む一人一社制
一人一社制は学生の就業チャンスに制限を設けているとの理由から、近年、都道府県ごとに見直しが進んでいます。都道府県によって詳しい時期や応募可能な社数は異なりますが、一人一社制は9月もしくは10月のみとし、それ以降は複数の企業への応募が可能となっています。また、秋田県、大阪府、和歌山県、沖縄県では9月の選考開始から複数企業への応募を認めており、2025年からは茨城県もこれに続く予定です。
※学生が併願し2社から内定を得た場合、2社目の内定を得てから3日以内に就職先を決定するというルールを設定している都道府県もあります。
高卒採用では求人票の形式が指定されている
高卒採用の求人票は指定のフォーマットに従う必要があります。高卒採用での採用人数実績や、研修の有無、メンター制度の有無など、多くの記載事項があります。こうした項目は、可能な限り埋めることが推奨されています。仕事内容や労働条件など、基本的に明示しなければならない項目は通常の採用と同様です。
高卒採用の求人票のポイント
必要な知識・技能等について
高校生の採用は未経験者の採用が基本です。そのため、仕事で求められる資格や経験については柔軟な対応が求められます。たとえば、普通自動車運転免許が必要でも、誕生日などの事情により入社までに取得ができない求職者もいます。入社後の取得を認めるといった柔軟な対応を図ることで、求職者の就業機会が広がります。
応募前職場見学
高卒採用では、職場理解のために応募前の職場見学の実施が推奨されています。求人票のテンプレートには、有無を記載する欄があります。職場見学は、あくまでも学生が企業理解を深める場です。選考につながらないよう、企業は配慮する必要があります。
受付期間、選考開始日
決められたスケジュールに沿って実施します。
青少年雇用情報欄
【新卒者などの採用者数/離職者数】【平均勤続年数】【研修の有無およびその内容】【自己啓発支援の有無およびその内容】【メンター制度の有無】などの項目が含まれる欄です。可能な限りすべての項目を埋めるよう推奨されています。
採用面接での配慮が必要
公正な選考を実施するためには、就職差別につながらないように、避けなければいけない質問や選考スタイルがあります。高卒採用に限らず、採用選考では求職者の人権を尊重し、適性や能力に基づく基準で判断することが望まれます。応募機会が公平に開かれており、選考基準が明確かつ公正であることが重要です。
- 応募時に戸籍謄本など、本籍・出生地に関することや、家族に関することなど、本人に責任がない事項の情報を提出させる
- エントリーシートに、健康状態や既往歴を記載する欄がある
- 面接時に、生活環境や住宅状況などを尋ねる
- 面接時に親の職業を尋ねる
- 選考で思想・宗教に関することを題材とした作文を書かせる
- 本籍・出生地
- 家族
- 住宅状況
- 生活環境、家庭環境
- 宗教
- 支持政党
- 人生観・生活信条
- 尊敬する人物
- 思想
- 労働組合や学生運動の活動状況
- 購読新聞、雑誌、愛読書
- 身元調査の実施
- 本人の適性・能力に関係のない項目を含んだ応募書類
- 合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
採用基準ではないとしても、適性・能力に関係のない事項を面接や選考で尋ねることは避けるべきです。面接官はアイスブレイクの話題で選んだつもりでも、採用の場にはふさわしくないこともあります。雑談で聞いてしまわないよう、面接官とすり合わせを行うことも重要です。
- 【参考】
- 公正な採用選考の基本|厚生労働省
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