ギグ・ワーカー
ギグ・ワーカーとは?
「ギグ・ワーカー(Gig worker)」とは、雇用関係を結ばずに単発の仕事やプロジェクトを個人で請け負う労働者のこと。「ギグ(Gig)」というのは、ライブハウスで行われる一回限りの即興演奏のこと。転じて、一時的な仕事全般を指すようになりました。昨今、料理宅配サービスやクラウドソーシングなどのデジタルプラットフォームの台頭によって、ギグ・ワーカーという働き方はますます一般的になっています。「柔軟に働くことができる」というメリットがある一方で、社会保障がなく収入が不安定などの不利な点もあり、労働者の権利保護という面では課題を抱えています。
ギグ・ワーカーをどのように扱うか?
求められる「発注者の品格」
副業や週休3日制など、働き方の多様化が進む中、会社という枠組みに捉われずに働く人が増えています。自分のライフスタイルに合わせて、好きなときに好きなだけ働くことができる「ギグ・ワーカー」。従業員として雇用されるのではなく、発注者とインターネット経由でマッチングし、単発の仕事を請け負います。その数は年々増加しており、単体の推計は出ていないものの、ランサーズ株式会社の調査によると、2015年に917万人だったフリーランス人口は、2021年には1,577万人にまで増えています。
フリーランス人口が増加した背景には、テクノロジーの進化があります。発注者とギグ・ワーカーは、スマホアプリなどのデジタルプラットフォーム上でマッチングして仕事を受発注します。スマホ一台で仕事が成立し、オンデマンドで働くことができるという手軽さ・柔軟性が社会に広く浸透した理由の一つ。コロナ禍で、隙間時間にお金を稼ぐニーズが増えたり、企業が正社員を雇う余裕がなくなったりしたことも、ギグ・ワーカー増加の理由と言えるでしょう。
柔軟性が魅力のギグ・ワーカーですが、問題点もあります。従業員としての雇用ではないため、社会保障が十分でなく、搾取構造がうまれやすいのです。例えば、仕事中に事故に遭った場合、企業の従業員なら労災保険が適用されます。しかし、個人事業主であるギグ・ワーカーには適用されず、入院費や対人・対物賠償などは個人が負担しなければなりません。働くことができない期間の補償もないため、経済的に脆弱(ぜいじゃく)になりやすいといったデメリットも。
このような構造的問題を受け、海外ではギグ・ワーカーの労働環境を保護する動きがあります。例えば、米国カリフォルニア州ではいち早く「ギグ法」ができ、不当にギグ・ワーカーに分類されている人を、雇用形態の中に位置付ける政策が成立しました。
日本でも2023年、フリーランス保護新法が成立し、発注側による買いたたきを禁じたり、報酬の支払い期限を設けたりと、フリーランスの取引適正化を促す法律ができました。また2023年10月には、EC大手サイトの配達業務を請け負う個人が、配達中のけがについて労働基準監督署から労災認定を受けました。個人事業主が、企業の従業員とみなされた国内初めての事例です。
ギグ・ワーカーという働き方は、企業にとって都合がいい側面はあるでしょう。しかし、雇用関係にないことを盾に労働環境の整備を怠ることは、結果的に自社の信用の失墜につながります。企業は、ギグ・ワーカーも大切なステークホルダーの一員と捉え、従業員と同等の存在として扱う必要があるでしょう。
用語の基本的な意味、具体的な業務に関する解説や事例などが豊富に掲載されています。掲載用語数は1,400以上、毎月新しい用語を掲載。基礎知識の習得に、課題解決のヒントに、すべてのビジネスパーソンをサポートする人事辞典です。