期待理論
期待理論とは?
「期待理論」とは、モチベーションが生じる過程や度合いについて説明した理論のこと。1964年、米国イエール大学の経営学・心理学教授であるビクター・H・ブルーム氏が、著書『仕事とモチベーション』でモチベーションが生じる過程を数式で表しました。目標や戦略が明確かつ十分で、それによって得られる報酬が魅力的ならモチベーションが生まれる、という理論です。それをレイマン・W・ポーター氏とエドワード・E・ローラー3世氏が改良する形で、再定義した期待理論を発表。努力した結果として得た報酬にどれだけ満足したかが、次の行動を起こすモチベーションに影響すると説きました。
従業員のモチベーションを上げるには?
期待理論のポイントと注意点
「目標を達成したら、〇〇をあげます」
〇〇にどんな言葉が入ると、仕事に気合いが入りますか? 「100万円」「部長というポスト」「希望部署への異動」など、モチベーションが上がるものは人それぞれでしょう。努力した結果、満足のいく報酬を受け取ると、モチベーションは高まるもの。この考え方が期待理論です。
モチベーション理論の先駆けとなったブルームの期待理論では、モチベーションは「期待」「道具性」「誘意性」の掛け合わせで決まると考えられています。
「期待」は、戦略によって目標を実現すれば、どれだけのことを成し遂げられるかの見込みのこと。「道具性」は、目標達成によって得られる成果が、さらに次の目標を達成するのにどれだけ役立つか。例えば、昇進したい人にとっての表彰や、海外で力試しをしたい人にとっての海外勤務できる部署への異動は、道具性が高いと言えます。さらに「誘意性」は、努力した結果に対して得られる報酬の魅力度のこと。目標達成をしたときに得られるインセンティブや昇給率が満足のいくものであるほど、誘意性が高くなります。
ブルームが1964年に期待理論を発表し、1968年にはポーターとローラーが期待理論を再定義しました。彼らの理論の特徴は、報酬とモチベーションが好循環を生み、ループしているという点。ブルームの期待理論をベースに「報酬への満足度」が追加されました。努力した結果に対する報酬に満足した人は、さらに次の仕事に対するモチベーションが上がる。そして高いモチベーションで取り組んだ仕事が良い結果につながる、という好循環をもたらすと説きました。
彼らが確立した期待理論は、職場のさまざまな場面で活用されています。例えば、目標達成後に得られる報酬は、昇給やボーナスといった金銭的報酬だけでなく、承認や称賛と言った心理的報酬も含む。目標達成への道筋が明確で、達成すると何らかの報酬を得られると確信することができれば、積極的な努力につながる。これらはマネジメントを行う上でのヒントとなるでしょう。
ただし、注意点もあります。ブルームが示した数式は掛け算なので、「期待」「道具性」「誘意性」の一つでも「0」になれば、モチベーションアップにはつながりません。「キャリアに箔(はく)はつきそうだが、給料が低すぎる」「給料は高いが、目標がとうてい到達できなさそうだ」というように、ネガティブな要素があっては意味がないのです。
また、どのような報酬に魅力を感じるかは個人の価値観によって異なります。海外思考が高い人にとっては、海外に転勤できる部署への移動は魅力的ですが、そうでない人にとってはマイナスの要素になりえます。すべての従業員に一律の報酬を提示するのではなく、それぞれに合った打ち出しを心がけることが重要です。
用語の基本的な意味、具体的な業務に関する解説や事例などが豊富に掲載されています。掲載用語数は1,400以上、毎月新しい用語を掲載。基礎知識の習得に、課題解決のヒントに、すべてのビジネスパーソンをサポートする人事辞典です。