リスクコミュニケーション
リスクコミュニケーションとは?
「リスクコミュニケーション」とは、あるリスクを適切にマネジメントするために、それに関係する社会の各層が情報交換や対話を行い、多様な考えや情報を共有しあうことをいいます。リスクを持つ組織が一方的に発信するのではなく、さまざまなステークホルダーが集まり意見交換をすることで、相互理解を推進する機会となります。リスクコミュニケーションは平時に行われることが多く、有事の際の緊急性の高い一方的なリスクコミュニケーションは、クライシスコミュニケーションとも呼ばれます。
リスクコミュニケーションを通じて
ステークホルダーとの信頼関係を構築する
新型コロナウイルス感染症の流行によって、リスクコミュニケーションの重要性があらためて注目されていますが、重要性が高まる契機になったのは、2011年3月に発生した東日本大震災でした。技術や知見を持つ企業から行政や社会への情報共有が適切に行われていなかったことや、リスクに関する対話を進めてこなかったことにより、地域社会がそのしわ寄せを受けることになったのです。
企業が事業を行うには、さまざまなリスクが伴います。化学物質を例にとっても、それを利用することによる快適さや便利さなどの有用性(ベネフィット)もあれば、それが持つ危険性や有害性(ハザード)もあり、その二面性を理解して管理をすることが大切です。しかしステークホルダーによって、考え方や事情は異なります。そのすり合わせを行うのがリスクコミュニケーションです。
リスクコミュニケーションでは、リスクに関する情報を正しく知ってもらった上で、リスクに対する見方を共有し、責任の所在を明確にします。これらのプロセスを経て、最終的にはステークホルダーとの信頼構築を目指します。
リスクコミュニケーションを実施する企業や組織にとっては、リスクを関係者に伝えることへの不安がつきまといます。ステークホルダーに正しく理解してもらえるか、対話の結果、事業成長のスピードが遅くならないかなど。しかし前述の通り、互いの思いを伝えあった先に信頼関係が生まれます。逆に行わなかったとしたら、有事の際には信頼が大きく失墜してしまいます。リスクコミュニケーションは各ステークホルダーの利益を守るための活動ではありますが、長い目で見れば、自分たちの組織の利益になる営みなのです。
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