慶弔
慶弔とは?
慶弔とは、喜びを祝うことや悲しみを弔うことを意味します。企業の慶弔制度とは、従業員の慶事・弔事に対して、休暇やお祝い金・見舞金を与えるもので、企業が独自に設定できる法定外福利厚生の一種です。
企業の慶弔制度とは
慶弔制度には、祝い金やお見舞金を従業員に支給する慶弔見舞金と、結婚式や葬式に参列するための休暇である慶弔休暇が含まれます。法律的に義務のない法定外福利厚生であり、原則として制度の内容を企業が自由に定められます。慶弔見舞金には、結婚祝い金や出産祝い金のほか、従業員やその家族が死亡した際に支給される弔慰金、傷病見舞金などの種類があります。慶弔見舞金が支給される条件や、慶弔休暇の内容は企業によって異なります。
慶弔休暇とは
慶弔休暇は、会社が独自に定める法定外休暇です。慶弔休暇の有無や内容は、企業によって異なります。代表的なものに、「結婚休暇」「忌引休暇」があります。
【慶弔休暇の種類】
- 結婚休暇
- 忌引休暇
2017年に行われた労政時報(第3937号)の調査によれば、慶弔休暇を無給とする企業の割合は少なく、94%が慶弔休暇をすべて有給で付与しています。従業員に対する福利厚生の一環として導入していることから、有給で慶弔休暇を付与するのが一般的です。取得日数は、本人の結婚休暇で5日、子どもの結婚で2日が最も多くなっています。忌引休暇の場合は、配偶者・子ども・本人の父母の忌引休暇で5日、本人の兄弟や祖父母の忌引休暇は3日が最多です。
慶弔金とその相場
慶弔見舞金の金額は、企業が自由に設定できます。納得度の高い金額に設定するためには、相場の把握が重要です。ここでは、2017年に行われた労務行政研究所による調査をもとに、慶弔金の相場を紹介します。
慶事における金額
お祝い事で支給される慶弔見舞金には、以下のものがあります。
【慶弔見舞金・慶事の例】
- 結婚祝い金:従業員が結婚した際に支給される
- 出産祝い金:従業員または配偶者が出産した際に支給される
- 子の入園・入学祝い金:従業員の子の進学にともない支給される
調査によれば、結婚祝い金の平均は3万円〜4万円、最高は18万円です。再婚の場合でも、初婚と同じ金額を出すという企業が主流です。従業員の子どもが結婚する場合に出る祝い金を設定している会社では、平均は1.4万円前後となり、本人が結婚するときよりも少なく設定されています。導入している企業も2割と多くはありません。
出産祝い金は、平均で1.9万円です。少子化を踏まえ、第二子、第三子と出産人数が増えるにつれ、祝い金を増額するケースもみられます。近年では、100万円単位の高額な出産祝い金を設定し、従業員の育児支援の充実を図る企業が話題となっています。
弔事における金額
弔事で支給される慶弔見舞金は以下のものがあります。
【慶弔見舞金・弔事の例】
- 弔慰金:従業員またはその家族が死亡した際に支給される
- 傷病見舞金:従業員が傷病を理由に休んだ際に支給される
- 災害見舞金:従業員が災害によって死亡した際に支給される
調査によれば、本人死亡弔慰金は、平均で23万円前後です。従業員の勤続年数や役職により区分して金額を設定している会社が多くみられます。なお、保険に加入している場合の弔慰金は最低5万から最高1,800万円と金額が幅広く、100万円台の会社が最多であり、平均額は約225万円です。
従業員の配偶者が死亡した際の弔慰金は平均5万円、子どもの弔慰金は2.8万円です。けがや病気の際の傷病見舞金は平均1.2万円、災害見舞金は全損失で15万円、半損失で8.4万円です。
慶弔見舞金・休暇に関わる事務
慶弔見舞金や休暇を申請するときの手続きは会社によって異なります。
慶弔見舞金・休暇の内容は、就業規則に明記することが大切です。慶弔見舞金の記載がない場合、経費として計上しづらくなります。第三者に対して明確に説明するためにも、就業規則に記載したほうが後々のトラブルを防げます。
慶弔見舞金や慶弔休暇は、いずれも従業員個人に関わることのため、基本的には従業員が申請を行います。
申請に必要な証明書
慶事・弔事にあわせて、必要な証明書の提出を依頼します。
【提出させる証明書の例】
- 結婚祝い金: 婚姻届のコピーや結婚式の招待状
- 出産祝い金: 出生届や出生証明書のコピー
- 弔慰金: 死亡届や埋葬許可証のコピー
- 傷病見舞金: 診断書のコピー
- 災害見舞金: 罹災証明のコピー
そのほか会社が手配すること
お祝い事の際はお花や電報を送るなど、シーンに合わせて会社が手配する物事を決めておきます。対象となる従業員の役職に合わせて、会社全体名義で手配するのか、代表取締役の名義で手配するのかなど、過去の事例を参考にするとスムーズに手配できます。
- 祝電やお祝いの花
- 弔電や供花の手配
慶弔制度の注意点
対象の範囲を決める
慶弔見舞金の支給の範囲、慶弔休暇を利用できる対象の範囲を決定します。結婚祝い金を本人の結婚のみにするのか、従業員の子の結婚も対象にするのか、再婚も対象になるのかなど、具体的な範囲を定めます。対象の範囲を決める際は、以下がポイントとなります。
- 支給を一律とするか、継続年数や役職で変えるか
- 対象範囲の家族は適切か
- 役員に対する支給額が高額でないか
慶弔見舞金の種類と金額、慶弔休暇の日数を決める
一般的な慶弔見舞金は、結婚祝い金、出産祝い金、死亡弔慰金、傷病見舞金、災害見舞金です。具体的な支給金額や、休暇の日数、有給・無給の取り扱いについて決定します。特に慶事に対する制度を手厚くすることで、福利厚生が充実した企業というイメージづけができます。
慶弔見舞金と税金について確認する
慶弔見舞金は福利厚生として支払われるため、原則として賃金に該当せず、社会保険料の対象にはなりません。とくに慶弔見舞金は恩恵的に支給されるものであり、賃金であったとしても健康保険などの社会保険料や、労働保険料は発生しないとされています。さらに冠婚葬祭にかかる慶弔見舞金は所得税非課税であり、消費税の対象にもなりません。
ただし、社会通念上相当と認められ非課税になるかどうかは、ケースによって判断がわかれますので、必要に応じて税理士や所轄の税務署へ確認するほうが確実です。
- 【参考】
- 給与所得の範囲|国税庁
就業規則に明記する
就業規則に対象や内容を明確に記載することで、従業員に福利厚生制度の内容を周知できます。また、理解を促すことで後々のトラブル防止につながります。
【慶弔休暇の記載例】
第28条 労働者が申請した場合は、次のとおり慶弔休暇を与える。
- 本人が結婚したとき 日
- 妻が出産したとき 日
- 配偶者、子又は父母が死亡したとき 日
- 兄弟姉妹、祖父母、配偶者の父母又は兄弟姉妹が死亡したとき
- 【引用】
- p.44 モデル就業規則|厚生労働省
【慶弔見舞金の記載事項】
慶弔見舞金について就業規則に記載する際は、一般的には、以下の項目を記載する。
- 対象範囲
- 種類と金額
- 手続き、支給方法
同一労働同一賃金に注意
慶弔制度の利用対象者は、就業規則などで企業が独自に定められます。正社員のみと限定することも可能です。ただし、福利厚生は「同一労働同一賃金」に基づいて決める必要がある点に注意します。
パートやアルバイトという肩書でも、正社員と同等の職務についている場合は、待遇に差があると不均衡・不合理な取扱いとみなされます。厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」では、雇用形態の違いによる慶弔休暇の扱いについて、下記のように説明しています。パートやアルバイトなどの非正規社員に対しても、正社員と同一労働同一賃金で働く場合には、慶弔休暇や慶弔金などの福利厚生を適用させなければいけません。
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