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ウィズ/アフターコロナ時代における 地方への人と企業の新たな動き

注目の記事人事制度[ PR ]掲載日:2021/03/22

ウィズ/アフターコロナ時代となり、首都圏と地方との関係が大きく変わりつつある。経済産業省 関東経済産業局の調査では、コロナ禍の中で、首都圏の人材および企業が地方に移転する新たな潮流が確認されている。こうした環境変化をいち早く捉え、人や企業を地方に移転させ、イノベーションを創出する事例も出ている。今回のウェビナーでは、経済産業省 関東経済産業局がコロナ禍の前から推進していた地域企業での都市部人材の活用促進の取り組み(兼業・副業プロジェクト報告)や、人材・企業・地域などの多様な視点からの取り組みを紹介。地域経済活性の現場を知る有志による講演およびパネルディスカッションが行われた。

開会挨拶・事業紹介

中嶋 重光氏(経済産業省 関東経済産業局 地域経済部 部長)

関東経済産業局では、政策を検討する方向性として「地域企業に人材を呼び込む」「企業の地方移転の推進」を掲げている。中嶋氏は同局が実施した「地方移転に関する動向調査」の結果を発表。企業および自治体へのヒアリングの結果を説明した。

「今回の調査では、コロナ禍の中で、首都圏の人材および企業の地方移転の新たな潮流を確認することができました。首都圏の人材および企業が地域で活躍することで、地域企業の稼ぐ力の強化や、新規事業創出に貢献している事例もあります。当局としては地域の自治体、各種支援機関と連携し、こうした動きを政策として後押ししていきたいと考えています」

第1部:コロナ禍での地域における都市部機能の活用動向について

講演 1 人材誘致・企業誘致による地域経済活性化 ~都市部人材活動、企業移転、サテライトオフィス誘致のこれから~

加藤 遼氏 株式会社パソナJOB HUB 事業開発部 兼 ソーシャルイノベーション部 部長

次にパソナJOB HUBの加藤氏が登壇。同社が地域企業と複業人材のマッチング事業に取り組んだ背景について解説した。

「パソナグループの企業理念は『社会の問題点を解決する』です。パソナJOB HUBでは『すべての才能が輝く社会を』をコンセプトに、『WX(ワークスタイル トランス フォーメーション)』として、個人の働き方と組織のあり方の改革を実践し、『SX(サステナブル トランス フォーメーション)』として、持続的な個人・組織・社会の創造に向け、事業を展開しています。その一環として、『旅するようにはたらく』をコンセプトとした『JOB HUB LOCAL』事業で、地域企業と複業人材のマッチングを行っています」

そのプログラムの一つである「JOB HUB WORKATION」では、ワーケーションを行いたい企業と地域をマッチングし、ワーケーションプログラムの企画・運営を行う。地域との協働・共創型ワーケーションであるコ・ワーケーションの推進事例には、「SDGsワーケーション in 釜石・徳島」「ラーニングワーケーション in 南九州・徳島・琴平」「アートワーケーション in 鳥取・塩尻・三原」「HR/DXワーケーション in 南紀白浜」などがある。

パソナグループは事業で地域経済の活性化を図るだけでなく、自らも実践者となるべく、2020年に本部機能を兵庫県の淡路島に移転した。

「2023年までに1200人の従業員が移転する予定です。ここでは外部の企業の方も利用できるワーケーション施設も併設し、新しい働き方を体験できる場も設けていきます」

「真に豊かな生き方・働き方」の実現

同社が淡路島に本社機能の移転を決めた理由は四つ。一つ目は、地方へのリスク分散だ。東京一極集中を是正し、首都圏での自然災害などにおけるリスクを分散させる。二つ目は、住環境と食。淡路島には「御食国(みけつくに)」と呼ばれる豊かな土地があり、従業員の“心の黒字”をつくることに役立つ。三つ目は、「地の利」「マーケット」。神戸・大阪・四国と3拠点からのアクセスが良い。四つ目は、「時の利」となる万博だ。世界から多くの人が来日する、2025年の大阪万博を見据えている。

同社は現在、ワーケーションやサテライトオフィスを誘致する活動を行っている。オフィス環境としては、ワーケーション・ハブが2021年春に完成予定。住居・移動・食事に関しては、直営レストランを8施設運営し、社内インフラとして託児所も完備。そして官民が一体となって企業移転を支援する組織も立ち上げた。

「兵庫県、淡路市、洲本市、南あわじ市とパソナグループ(運営事務局)は連携し、本社機能などの淡路島への移転を検討する企業に対し、拠点の開設・拡充や移転などを支援する『淡路島パイロットHQ(ヘッドクォーター)協議会』を2月3日に設立しました」

企業誘致により、域外企業と地域人材がつながり、域外企業が「地域企業」へシフト。人材誘致により、外部人材と地域企業がつながり、外部人材が「地域人材」へシフトしていく。そうした中では誘致後のフォローアップを見据えた誘致プロセスの設計が重要になる。

「誘致プロセスは『誘致目的の設定→訴求価値の整理→プログラムの企画・運営→誘致後のフォローアップ』といった流れです。地域におけるビジネス創造を見据えた誘致体制(拠点・コーディネーター)の整備がポイントであり、コーディネーターが地域内外の人材と企業のコミュニティー醸成などを行うことが大事です」

加藤氏は「夢は人に帰属する」と語る。人材誘致による地方創生とは、人が集まることでさまざまな夢が集まり、そこに化学反応が起こり、新しい産業が生まれることだ。働く人は地方の現地に行って、山や海を見て、風を感じると共に、現地の課題を目の当たりにすることで課題解決への意識や情熱が生まれてくる。

「五感を使って自然の中で働くことで、クリエイティブな発想が生まれてくる。真のリーダーを育成する場は地方にあります。これからは真に豊かな生き方・働き方を創ることこそが重要。パソナグループではこれからも、個人自律型で豊かな社会の創造に向けた『社会のあり方改革』に挑戦していきたいと考えています」

講演 2 テレワークを活用した人・企業の流れの創出 ~信州ITバレー構想の実現に向けて~

丸山 祐子氏 長野県 産業労働部 創業・サービス産業振興室 室長

長野県は、移住したい都道府県ランキング15 年連続 1 位(宝島社『田舎暮らしの本』調査)。高い技術力を持った製造業が集積している地域でもあり、最近は大手印刷会社がDX開発拠点を設置するなど、クリエイティブ企業の立地も盛んだ。『日経トレンディ』の「2021年ヒット予測ランキング」では、「ワーケーションの聖地 長野でテレワーク」が9位にランクイン。そんな長野県は、産学官連携によりSociety5.0時代を共創するIT人材・IT 産業の集積地「信州」を目指す「信州IT バレー構想」を掲げている。丸山氏が実現に向けた三本柱について語った。

「推進の三本柱は『ITビジネス創出・誘発』『産業DX推進』『人材育成・確保』です。IT人材・ IT産業の集積に向けたエコシステムを形成し、新たな価値創出や技術革新を促進させたいと考えています」

信州ITバレー構造の実現に向けた3本の柱

「人材育成・確保」の中で、人材誘致の取り組みとして位置付けているのが「信州リゾートテレワーク(ワーケーション)」と「おためしナガノ」だ。「信州リゾートテレワーク」は短期滞在を、「おためしナガノ」は長期滞在を支援。観光客でも移住者でもない県外からの新たな人・企業の流れの創出を目指している。

「長野県としては、県内に滞在して仕事をする人・企業を増やすことで、地域や地域の人々と多様に関わる関係人口(企業)を創出したいと考えています。それにより地域経済の活性化、新たなビジネスの創出、地域づくりの担い手の確保、移住・企業誘致の推進といった効果を期待しています」

「おためしナガノ」は、「おためし」で県内に住んで仕事をする機会を提供する。対象者は県外のIT を中心としたクリエイティブ人材・企業だ。支援期間は最大半年間、オフィス利用料や交通費などを一人最大30万円支援する。これまで56 組が参加、うち37 組が現在も拠点(つながり)を維持している。

また、「信州リゾートテレワーク」は、普段の職場や居住地を離れ、信州ならではの魅力に触れながら仕事をする新たなライフスタイルだ。「アクティビティーを活用したチームビルディング」「外庭でのブレスト会議」「テレワークしつつ地域と交流」といったものが例となる。

「非日常空間に滞在して働くことで、普段はないコミュニケーションが生まれ、地域と交流もでき、気分がリフレッシュされる効果も期待できます。こうした働き方は、従業員にとって、クリエイティビティやモチベーションの向上、新たな出会いや成長、豊かなライフスタイルの実現につながる機会となります。企業にとっても、イノベーション創出、人材確保・育成、働き方改革やSDGs に向けた取り組みの推進につながります。企業・従業員・長野県にとって三方よしの取り組みです」

県では、県内12地域をモデル地域に選定し、受入環境整備に要する費用を補助。2020年11月には軽井沢で「ワーケーションEXPO@信州」を開催するなど、都市圏に向けた情報発信・普及啓発にも取り組んでいる。ほか、信州リゾートテレワークを実践する企業などに対し、宿泊費の一部を助成している。

加えて、ITビジネス創出・誘発の取り組みの一つとして、スタートアップ支援事業を展開している。

「起業家や起業家の卵が交流する拠点として「信州スタートアップステーション」を松本市のICT拠点『サザンガク』に設置しました。創業ステージがまだ若い方々に対する支援として、創業支援ノウハウを持つコンサルタントや公認会計士などがビジネスアイデアをブラッシュアップするほか、セミナーやワークショップも開催しています。令和3年度には、長野市にも同様の拠点を設置したいと考えています」

講演 3 起業家の力で、故郷を元気に。

渋谷 修太氏 フラー株式会社 代表取締役会長

フラーは千葉県の柏の葉キャンパスと新潟県に本社オフィスを構える、2020年に創業9年を迎えたIT企業だ。従業員数約100人(契約社員、パートタイム含)、平均年齢は30代前半で、創業者をはじめ、高専卒の社員が多く在籍し活躍している点に特徴がある。代表の渋谷氏がその理由を語る。

「私が高専の出身だからです。取締役を含めた正社員90人のうち約3割が高専卒。エンジニアだけではなくデザイナーや人事など多岐にわたる職種に高専卒の社員が在籍しています。当社は高専と地方拠点を生かした強力な開発体制が特徴です」

事業の中心はアプリやウェブなどデジタルにかかわる支援を展開するデジタルパートナー事業であり、創業以来9年間、モバイル一筋で成長してきた。案件実績には長岡花火公式アプリ、アウトドアブランド「スノーピーク」公式アプリ、NHK子供向けアプリなどがある。また、最近の開発実績では、任天堂の「あつまれ どうぶつの森」の連携アプリが話題となった。そんなフラーは2017年に新潟拠点を開設。地元の新潟で働きたい人材が現れたためだ。

「社員のお父さんが亡くなり、母親を支えるために新潟に戻りたいと言われたのがきっかけでした。新潟支社をつくると、口コミで働きたい人がどんどん入社して今では30人ほどの規模になっています」

拠点をつくったことをきっかけに、地元の経済同友会に参加。すると、新潟に起業家が少ないため、ぜひ支援してほしいという声が上がる。関連の活動では渋谷氏の提案で米国シリコンバレーへの視察旅行も行った。こうした活動が渋谷氏の気持ちに変化をもたらしていく。

「徐々に新潟の役に立ちたいと思うようになりました。昨年はコロナ禍となり、オンラインで商談を行うと、非常に効率がよいことに気づきました。そこで私自身も昨年、新潟にUターンしたのです。今まで起業といえば対面が大事だと考えられ、東京での活動が優先されてきましたが、デジタル化が進んだ現在は地方のアドバンテージが生かされるフェーズになりつつあります」

地方起業の時代がやってきた!

渋谷氏は新潟に戻って力を入れている活動が三つある。一つ目は地元への貢献。二つ目は高専をはじめとする後輩の教育。三つ目は起業家の支援だ。

「昨年、新潟ベンチャー協会を設立しました。行っているのは新潟県内における起業家・ベンチャー企業の創出と、県内既存企業の飛躍のための新規事業促進といった支援です。これをセットで行おうと考えています。県内企業で世代交代を行う企業が増えており、若い経営者を支援したい。県内外のベンチャー経営者、金融機関、大学などと連携して新潟版のエコシステムを構築することを考えています。また、地元で若手起業家向けの合宿を開催。他の企業を紹介したり、創業からまもない厳しい状況下の悩みを聞いてあげたりしています。その他の活動としては、アルビレックス新潟のパートナー、長岡高専の客員教授、そして、ユーチューバーとして新潟の魅力を外に発信しています」

2020年11月にオープンした新潟県ITイノベーション拠点「NINNO(ニーノ)」の開設も支援した。ここにはオフィス専用施設のほか、共用部には幅14メートルの大規模スクリーン、カフェ、会議室、個室ワーキングBOXなどが設置され、入所企業がイノベーティブに活動できる空間となっている。

「私たちも新潟本社を移転しました。ここを拠点に、地域から起業家を生み出し、いろいろな会社によるオープンイノベーションを実現し、共に成長していきたいと思っています」

第2部:兼業・副業プロジェクト報告会

兼業・副業プロジェクトの解説および実施結果報告
株式会社パソナJOB HUB 亀井 諭氏

2部に入り、はじめにパソナJOB HUBの亀井氏が登壇。兼業・副業プロジェクトの解説および実施結果の報告を行った。同社は事業として、地域企業と「複業」人材のマッチングを行っている。「副業」ではなく「複業」としていることには理由がある。

事業概要「複業活動。働き方に彩を」
複活の仕組み「複業活動。働き方に彩を」

「『副業』では、サブ的なポジションの仕事と誤解される危険性があります。そこで『複業』という言葉を使っています。これには『すべてが本業であり、同時並行で走らせるキャリアの一つ』という意味が込められています。当事業の目的は『経営課題を複業人材で解決』『各経営支援機関による企業の自走化』です」

プロジェクトでは「複業活動=複活」と名付けてブランディングを行い、パソナJOB HUBが事務局となり、地域の商工会議所などの地域コーディネーターと連携して活動している。事業の特徴は主に三つある。一つ目は「複業」で関わる意欲のある人材とのマッチングだ。

「あくまでも本業の一つとして仕事に携わる人材と、地域企業をマッチングするということです」

二つ目は地域の経営支援機関と連携したサポートだ。参加企業には「個人と契約をしたことがないから不安」「漠然と依頼したい課題はあるけど、人材に依頼できるかどうかわからない」「どんな人材がいるか見えない」といった不安がある。

「そこで地域側と事務局が連携し、伴走することで、企業の不安の低減を図っています」

三つ目は人材との「共感」を重視したマッチングプロセスだ。通常の人材紹介とは違い、企業と人材を十分に交流させてマッチングを行っている。

「はじめにフィールドワークを行い、企業側が抱えている課題を開示。その課題に共感した人材が提案を行い、互いに議論します。話がまとまれば契約です。この流れをまとめると『(1)企業から課題・ビジョンの提示 (2)人材から課題解決・協働提案 (3)互いに協働内容を協議 (4)契約・業務開始』となります。従来の効率重視のマッチングではなく、あえてビジョンや共感を大事にしたマッチングを重視した設計となっています」

次に亀井氏はこれまでの実際の事業の流れを解説した。

「複活」プロジェクトは次の手順で行われた。「(1)学ぶ:セミナー→(2)体験する:フィールドワーク→(3)実践する:面談・マッチング→(4)仲間になる:コミュニティー」だ。

はじめに企業向けセミナーをオンラインで実施。長野塩尻エリア、静岡エリア、茨城エリアの3地域で行い、各地域10社程度が参加。人材向け説明会には206人が参加した。

「最終的な2020年度の参加企業は29社。創業1年未満~70年、従業員規模は3人~200人、の幅広い企業が参画し、227人の人材がエントリーしてくれました。内訳は企業の勤務者が約6割、フリーランスが3割。出身は都市部と該当地域が主で、現住所は都市部の人材が多数を占めます。実際のフィールドワーク参加者は83人でした」

そしてマッチングに関しては、提案書を出した方が81人、そのうち複数の企業へ提案書を出した方もいたので提案件数の合計は195件という結果だった。1社あたりに平均6.7件の提案があり参加企業29社のうち15社がマッチングに至った。

「マッチングのテーマは『販路開拓・マーケティング』33%、『新規事業』31%、『経営戦略』15%、『業務改善・DX推進』15%、『組織開発・DX推進』13%です。実際の企業と人材およびマッチングテーマの組み合わせでは、図のようなものが生まれました」

マッチングテーマと人材の組み合わせ(一部)「複業活動。働き方に彩を」

「最終的に32件のマッチングが生まれ、今後の活動が大いに期待される結果となっています」

パネルディスカッション:「副業・兼業人材の可能性とは」

次に、亀井氏がファシリテーターを務め、5人によるパネルディスカッションが行われた。

登壇者

村上 孝明氏(静岡商工会議所)
横山 暁一氏(塩尻商工会議所)
鈴木 高祥氏(株式会社カゼグミ(茨城))
島崎 由真氏(一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会)

ファシリテーター

亀井 諭氏(株式会社パソナJOB HUB)

登壇者のご紹介(横山暁一氏、村上孝明氏、鈴木高祥氏、島崎由真氏、亀井諭氏)

Q1.企業に「複活」(複業人材活用)の提案をしたときの企業の反応はどうでしたか。

横山:反応は3パターンありました。「歓迎する」「あまり乗り気でない」「人材は活用したいけれど、うちで大丈夫か、と心配する」です。全体では三つ目の反応が多かったように思います。

村上:1年前に別事業で行った副業人材募集には大変大きな反響がありました。11社が公募を行い、1500件の応募がありました。今年は事業は変わりましたが外部人材活用の取り組み2年目となり、数社は引き続き参加してくれています。成果が出ている企業もあります。実現したいビジョンを持っている経営者はすぐに参加してくれました。一方で「どんな人材が来るかわからないし、どう活用していいかわからない」という企業もありました。この点については、支援機関が事前にどこまで情報を伝えられるかが課題になると思います。

鈴木:企業からは「複業人材がどれくらいいるのか」という声がありました。自社に副業の制度がなく、「複業」という枠組みをどのように社内に伝えるかと苦心している企業もありました。

Q2.企業が複業人材と出会った後、企業の反応はどう変わりましたか。

横山:最初は企業側も緊張していましたが、フィールドワークを通じて複業人材の皆さんからどんどん質問があり、その質問によって経営者も「これからどうしたいか」といった考えが整理されていったように思います。

経営者からは、普段、社内で自社の将来の話をあまりしないため、複業人材の前向きな人たちと未来の話ができたことで「会話がとても楽しかった」という感想が多く聞かれました。中には「地元ではない人でも、これだけ真剣に向き合ってくれるんだね」と言う人もいました。こうして互いに対話を続ける中で、徐々に複業人材と協働する下地ができたように思います。

村上:通常の採用活動では出会えないような人と会えるので、「地域にはこんな人材はなかなかいない」と言う人が多くいました。経営者は社内に対話できる人があまりいないので、経営の知識・経験を持っている方と話をすると気づきが得られるため、満足度が高いようです。マッチングしなかった企業でも、こうした対話のプロセスから次にやるべきことが見えたように思います。コロナ禍で先行きが不透明な時代になっていますが、経営者が自分の考えを確認できる場があることに非常に価値があると感じました。

鈴木:自社の課題に対して外部から指摘されることで、考え方をブラッシュアップできて、感動している経営者の方が多くいらっしゃいました。採用活動の中で相手から提案をもらうことは一般的には少ないので、このような機会が貴重だったようです。やり取りの中で、相手が「こういう生き方をしたい」「地域にこう関わりたい」といった話をされるので、それを聞いて経営者の方々が自身の考えを見直されていた点が印象的でした。

Q3.マッチング後の企業の反応はどうでしたか。

横山:今年は走り出してまだ1、2ヵ月ですが、複業人材が経営の根幹に関わる部分や新規事業開発といった深い部分まで手伝ってくれることを喜んでいる経営者は多いようです。アドバイスするだけではなく、実際に自分の手を動かして、かつ専門性も発揮してくれるので、大変ありがたいという声が多く聞かれました。

村上:マッチング直後なので成果を測るのはまだ難しいのですが、方向性が整理できて役立っている面はあると思います。ただ、課題もあります。マッチング企業の1社で、タスクも明確でマッチングもスムーズだったのですが、スタート後、タスクの先にあるビジョンや未来像において、人材とのすり合わせが十分できておらず、すれ違いが生じた、というケースがありました。さまざまな複業人材がいるため、企業の課題解決にまで踏み込める人と、そこまでは無理だという人もいます。ただ、この試みでは経営課題の解決を掲げているので、人材も単にスキルだけのマッチングではなく、ビジョンへの共感度合いなども考えるべきだと、あらためて気付かされました。

Q4.コロナ渦におけるオンラインでのマッチングの成果はいかがでしたか。

島崎:コロナ禍で在宅勤務が広がったことで、仕事に対する価値観に揺らぎが生じていると感じます。一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の調査でも、働く人の今後の意向として「社会貢献をしたい」「フリーランスになりたい」という人がコロナ前と比較して倍近くに増えています。複業に興味を持つ人も増えているのではないでしょうか。また、昨年は大企業や自治体でも複業人材を募集するところが増えており、こうした環境の変化もあって、オンラインでのマッチングも拡大していると感じます。

Q5.地域主体で複業・兼業人材を活用して企業支援を行うにあたっての課題は何ですか。

村上:課題は二つあります。一つ目は、活用のしやすさをアピールすること。イノベーションに対する意識がある経営者はまだ一部なので、成功事例を広報することが大事です。二つ目は、マッチング後の地域でのフォローです。必要な人材が変わったときに、地域で継続的な支援があるかどうかが重要です。こうした事業の使いやすさと安心感が伝わっていけば、利用企業はもっと増えると思います。

島崎:企業支援を進める上でアドバイスが二つあります。一つ目は、小さく始めて大きく育てること。はじめは、ポイントとなる会議に出てもらって、徐々に参加してもらう回数を増やしていく。二つ目は、社内の正社員と外部の業務委託の人材に、チームとなって動いてもらうこと。お互いに学びが得られて、やる気も生まれます。

横山:マッチング後に企業の課題解決、事業成長へとつなげていく伴走支援の体制を地域側で確立することが重要だと思います。スタートして2年ですが、事業成長に向けて経営者に近いところで支援している例はまだ少ない。より深く関わってもらうためには地域側の支援が必要です。そのうえで事業を継続的、発展的に行うにはどのような形がいいのか、地域側で話し合っていく必要があると思います。

閉会の挨拶

工藤 浩一氏(経済産業省 関東経済産業局 地域経済部 次長)

「本日は多くの方にご参加いただきました。今後は、ご登壇いただいたような人を増やし、動きを地域へと展開して、活性化につなげたい。首都圏の企業や外部人材が地方のイノベーション拠点や「複活」などを通じて、地域の企業や人材と交流し、さまざまな効果が生まれていることをご理解いただけたことでしょう。今後もこうした動きを加速するため、国と地域の皆さまが一体となって取り組むことが重要だと思っています。本日はありがとうございました」

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この記事ジャンル 副業・兼業制度

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