専門家コラム

意見を「共有する」ための質問

ファシリテーターは、会議の場面で「質問する力」が必要です。

今回は、ファシリテーターに求められる「質問力」について考えます。

 

「物言わぬファシリテーター」に価値はない

 

ファシリテーターに必要な質問とは、ずばり「意見を共有するための質問」です。

 

ファシリテーターは会議中に「意見を引き出し・まとめて・合意を得る」役割が期待されていることはこれまでの記事で触れました。

しかし、参加者からあげられる意見は様々で、発言者の話すスキルも異なります。

そして、発言者の心に潜む「思い」まで言葉で十分に表すのは、一度の発言ではなかなか難しいのが実情です。

 

参加者の意見はすぐに伝わらない方が当たり前。ファシリテーターは発言者の意見が他の参加者に共有できるような形まで持っていかなければなりません。

そのために使うのが「質問」です。

情報が少なくてイメージをつかみづらければ考えを引き出すための質問を、逆に話が広がり過ぎてしまった場合は話をまとめて確認するための質問を投げかけます。

このように、発言者のイメージを補強しながら形作り、参加者に共有できるようにしていきます。

 

昨今は「多様性」がキーワードとなる時代。社内外にいる背景や考え方、価値観の違う人たちとコミュニケーションをとることが求められるのですから、これまで以上に「質問」は重要な役割を持ちます。

 

ファシリテーターは「意見の受け止め」が重要です。

しかしそれは、「発言したままの状態を大切にする」という意味ではありません。

わかりにくい、共有しにくい部分についてはきちんと確認し、その上で意見を受け止めることが求められるのです。

 

意見を引き出すための、質問の投げかけ方

 

皆さんは、会議で次のような場面を経験したことはありませんか?

 

ファシリテーター 「何か意見はありませんか?」

参加者 「………………。」

 

参加者から意見を引き出す際、質問の投げかけにはコツがあります。

それは「質問を具体化すること」です。

 

参加者は、ファシリテーターから投げかけられた質問に対して考えを巡らせ、発言します。この時に「考える範囲」が広すぎると、考える糸口をつかむのが難しい状態になります。

何を考えて何を答えていいかわからない、参加者の沈黙にはこのような状態が現れている可能性があります。

 

そこで、ファシリテーターはできるだけ「具体化」した質問を投げかけ、今からどんなことについて意見を出してほしいのかイメージを作ります。

 

例えば、次のような質問です。

 

●数字を入れて表現する 「今から6カ月の期間で、できることは何でしょうか?」

●考える範囲を明確にする 「既存のお客様にむけて、できることは何でしょうか?」

●考えの方向性を示す 「今出たアイデアを組み合わせたら、他にどんなことが考えられますか?」

 

考えるきっかけを与え、そこから話を広げていきます。

時には参加者のイメージを固定しない程度に例を出して、考えやすくしてみるのも効果的です。

 

掘り下げて共有する

 

発言者から出された意見は、まだ「意見の一端」であることがほとんどです。

その時の発言だけでは表現しきれない内容や思いが、氷山の一角のように含まれています。

 

この「意見の一端」を見ただけで次の話題に移ったらどのようなことが起こるでしょうか。

おそらく発言で明らかになっていない部分を聴き手それぞれが勝手なイメージで作り、「表面的には共有できているように見えて実はすれ違っている状態」になる可能性が高いです。

この状態が積っていくと、結論で大きなすれ違いを生むことになりかねません。

 

そこで、意見を共有できる状態にするために、隠れた部分を明確にしていくことが必要となります。

発言をよりイメージしやすいように「掘り下げて具体化」していくアクションです。

この時に役立つのが「5W1H」のフレーム。

確認すべき点に抜けや漏れがないようにしていきながら、意見を共有できる状態にしていきます。

 

質問のやり取りで気をつけたいのは、ファシリテーターと発言者が「一対一」のコミュニケーションを取らないことです。

発言を要約して全体に投げかけたり、発言を板書して確認したりすることで、「ファシリテーターと発言者の共有」ではなく「全体での共有」を作ることを目指します。

 

発言の背景を共有する

 

発言を掘り下げる際に最も重要なポイントが「Why」です。

発言者が何を考え、どんな思いをもって発言しているのかに関わる部分です。

 

「Why」の質問は、「察する文化」を持っていた私たちにとっては少し聞きづらいものであるかもしれません。

しかし、意見をまとめて合意を得るためには、「発言の想い」を共有することが欠かせないのです。

 

特に背景の違う人たちが集まる場所や、意見のすれ違いが起きている場面では、質問を投げかける態度や言葉遣いなどに注意しながら、丁寧に「Why」を共有し、発言者が大切に思っている部分を明確にしていくことが重要です。

 

【今回のポイント】

具体的な質問を投げかけて意見を引き出す

「発言者の思い」を確認しながら発言を掘り下げ、共有できるまで具体化する


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コラム執筆者
金子 怜司
金子 怜司(カネコ サトシ)
株式会社早稲田大学アカデミックソリューション コンサルタント、早稲田大学紛争交渉研究所招聘研究員
複雑で困難な時代に対応する「しなやかな人材・チームづくり」を支援します
早稲田大学アカデミックソリューションは、早稲田大学の関連会社として、組織の課題に合わせたカリキュラム編成と実践力を養う体験型学習を通じて、複雑で困難な時代に対応する「しなやかな人材・チームづくり」を支援します。
得意分野 モチベーション・組織活性化、コーチング・ファシリテーション、チームビルディング、コミュニケーション、ロジカルシンキング・課題解決
対応エリア 全国
所在地 東京都/新宿区西早稲田

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