メンタルダウンから復活!上司の具体的な取り組み3ステップ

先日、以前勤めていた会社の女性部下Aさんと
久しぶりに会うことができ、思い出話に花が咲きました。
当時、Aさんはメンタルダウンで復帰したばかりで、
私自身そういった状態の部下を持つことは初めてのことで
戸惑いもありましたが、彼女が自分らしく力を発揮できるように
精一杯関わろうと尽力したことを懐かしく思い出した次第です。
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■やりがいを持って働いていたという経験
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Aさんは、体調は万全ではないけれど現在の上司が
自分の力を引き出そうと関わってくれることに
感謝をしていることを話してくださりながら
こんな風におっしゃってくださいました。
「これまでの人生の中で、細木さんチームで
働いていた頃が一番やりがいを持って仕事をしていたし、
自分自身が輝いていたなと思います。
会社人生の中でそんな経験ができたことだけでも
ありがたいと今では思っています」
この言葉を聞いて、心から良かったと思いました。
*
Aさんの当時の状況は、投薬治療をしながら
職場に来れるときは来る、という感じで
1か月弱休んで数日出社、そしてまた数週間休む・・
といった不安定な状態であることは否めませんでした。
会える機会が少ないので、Aさんが出社した際には
私はなるべくコミュニケーションを取るよう心がけ、
そのうちAさんが「誰かの役に立てていること」
「会社に貢献できていること」といったことが
やりがいやモチベーションにつながりそうだということが
分かっていきました。
私自身も、自分らしく力を発揮して、チームや社会に
貢献することを大切に考えていたので、Aさんのその気持ちを
仕事の中で達成してもらいたいと更に強く思うように
なっていったことは、とても自然な流れでした。
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■メンタルダウンから復活!具体的な取り組み3ステップ
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私がAさんに対して当時取り組んだことを
これから具体的にご紹介できればと思いますが、
その取り組みの目的は全て
業務を通じた成功体験を積み重ねる
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ということにつながっていたと考えています。
***
【ステップ1:業務を厳選して任せる】
最初は、Aさんには決して無理をさせない前提で、
Aさん自身が「これならできそうだな」と思ってもらえるような
業務を厳選して任せていました。
任せると言ってもフォローは欠かさず、
何か相談をしてきたら一緒に考え、時に対応策の方向性を
導き出すといったことも行っていました。
ちなみに、Aさんは当時係長クラスで、本来であれば、
自ら新しい仕事を見つけたり、チームメンバーの力を
引き出すなど周囲を引っ張っていく立場でした。
しかし、メンタルダウンで投薬治療中ということもあり、
特に最初はかなり手厚い対応をしていました。
今思うと、少々手をかけすぎた、甘やかしてしまった部分も
あったかもしれないと反省する部分もあります。
とはいえ、まず優先すべきは心の健康を取り戻すことであり、
そのためには上司である私が全面的にフォロー体制を築くことが
有効であると当時は判断しました。
結果として、Aさんは「仕事を最後までやり遂げた」という
成功体験を少しずつ積み重ねていくことに
つながっていきました。
【ステップ2:成功体験を認識してもらうための承認】
Aさんが完遂し成功体験となった業務については、
私は具体的に言葉にして褒めたり、チームに対して
どんな貢献となったか等を伝えることを通して
承認することを意識的に繰り返しました。
具体的な声掛けの内容としては、
「しっかり対応してくださり助かりました」
「この取り組みはAさんの持ち味を十分発揮した形となり
本当に素晴らしいと思いました」
「○○については自分で考えて挑戦して成功しましたね!
これはぜひチーム内に展開させてもらいたいです」
このように、なるべくその場で感じた自分の気持ちを
ストレートにお伝えするようにしていました。
【ステップ3:徐々に仕事の幅を広げる】
Aさんの中で成功体験が積み重なって、自信が持てるようになると
自ら「もっと仕事回してもらっても大丈夫です」
「もう少し上位の仕事に取り組みたいと思っています」
などと言ってくださるようになりました。
そこで私は、これまで厳選してAさんへお渡ししていた
業務内容から少しずつ仕事の幅を広げるのと同時に、
Aさんの仕事振りや成果をさりげなく周囲へアピールし始めました。
その後ほどなくして、他部署や人事部から
「Aさん一時期体調悪そうだったけど、最近すごくできるようになったよね」
「Aさんを次の管理職候補にしたいと考えているんだけど、細木さんどう思う?」
といった声が私の元に届くようになっていきました。
Aさんに周囲から得られた評価をフィードバックすると
「私も細木さんのようなリーダーになれたら
もっとやりがいを持って仕事ができそうです」
と、晴れ晴れとした表情でおっしゃってくださったのでした。
この頃のAさんは、投薬治療から抜けて、
会社も休むことなく、とても前向きな姿勢で
仕事に取り組んでいました。
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■部下の成長や将来性を、部下より信じる
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ここまでご紹介した3ステップは
いかがでしたでしょうか。
このメルマガを読まれている方の中には、
メンタルダウンをしてしまった部下に対して、
同じような取り組みをされている方は
きっと多くいらっしゃるのではないかと思います。
私も今回Aさんとの再会をきっかけに当時の取り組みを
振り返り、今改めて感じていることは、
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Aさんが自ら「もっと上位の仕事がしたい」と感じ、
それをメッセージとして発信してくれた
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これがAさんが管理職候補者になるほど復活を遂げた
大きな転換点だった、ということです。
現在、技術系企業に特化したダイバーシティ経営の推進支援で
様々な企業様と関わらせていただいておりますが、多くの場合
ステップ1、ステップ2の取り組みはすでに対応されているものの、
ステップ3の手前でとどまっているという印象が多くあります。
しかし、ステップ1で、無理のない範囲で業務を厳選して
渡すことが続くと、ともすれば「部下の将来についても期待しない」
という感覚に陥ってしまうことも現場の実態としてあるのも事実です。
だからこそ、【部下の成長や将来性を、部下より信じる】
という上司の姿勢や在り方が大切ではないかと
私はAさんとの関りを振り返り改めて実感しています。
部下の未来を信じて関わることが、部下本人も自分の未来や
可能性をもう一度信じてやってみようという気持ちを呼び起こし、
それが自分自身の力を引き出すことにつながっていくのではないかと
私は思っています。
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■自分らしいマネジメントスタイルを確立するコツ
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私が大企業の管理職として10年間経験してきたことを
独自メソッドとして体系化したリーダー育成プログラムでも
重要ポイントの1つとしてお伝えしているのが
「部下一人ひとりの特性を見極めた上で
相手の力を引き出す関りを心がける」
ということです。
もちろん、自分自身にも特性があるので、
その特性を強みとして発揮しながら、
自分らしいやり方で、部下やチームメンバーの力を
引き出せるようになることが、リーダーとして
最もパフォーマンス発揮できている状態かと思います。
その最もパフォーマンスが高い状態で、
部下やチームメンバーの特性を見極め・力を引き出し、
チーム成果へとつなげていけるようになる、すなわち
「自分らしいマネジメントスタイル」を確立するためには、
やはり現場実践で試行錯誤しながら成功体験を積み重ねて
いくことが欠かせない取り組みであると、私自身の経験からも
痛感しています。
自分らしいマネジメントスタイルの確立は
一朝一夕では成しえませんし、ましてや、本を読むだけ、
座学だけ、といった取り組みだけでは
到達しづらいのではないでしょうか。
特に、これから人材を育てる立場になる次期リーダー・次世代管理職
といった社員の育成担当をされる際には、現場実践を多く取り込み、
成功体験を積み重ねていけるような施策についてご検討いただきたいと
思います。
その育成施策の中で実践することで得られた成功や失敗が、
育成対象者の糧となり、自分らしいマネジメントスタイル確立へと
繋がっていくと私は信じています。
このコラムを書いたプロフェッショナル
細木聡子(ホソキアキコ)
株式会社リノパートナーズ代表取締役/技術系ダイバーシティ経営コンサルタント/(公財)21世紀職業財団客員講師/中小企業診断士
元NTT女性管理職10年、約500名のSE部門における人事育成担当3年の豊富な現場経験を持つ。これまで延べ7,700人以上の技術系企業の女性管理職育成に携わる。技術系企業のジェンダーギャップ解消を突破口としたダイバーシティ経営推進を支援。

細木聡子(ホソキアキコ)
株式会社リノパートナーズ代表取締役/技術系ダイバーシティ経営コンサルタント/(公財)21世紀職業財団客員講師/中小企業診断士
元NTT女性管理職10年、約500名のSE部門における人事育成担当3年の豊富な現場経験を持つ。これまで延べ7,700人以上の技術系企業の女性管理職育成に携わる。技術系企業のジェンダーギャップ解消を突破口としたダイバーシティ経営推進を支援。
元NTT女性管理職10年、約500名のSE部門における人事育成担当3年の豊富な現場経験を持つ。これまで延べ7,700人以上の技術系企業の女性管理職育成に携わる。技術系企業のジェンダーギャップ解消を突破口としたダイバーシティ経営推進を支援。
得意分野 | 経営戦略・経営管理、モチベーション・組織活性化、キャリア開発、リーダーシップ、マネジメント |
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対応エリア | 全国 |
所在地 | 千代田区 |
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