企業研修、採用、評価、人材開発、労務・福利厚生のナレッジコミュニティ

【ヨミ】デリバラブル デリバラブル

「デリバラブル」(deliverable)とは、英語のdeliver(=届ける、もたらす)+able(=できる)の組み合わせが語源で、直訳すると「提供できる、もたらすことができる」という意味です。人材マネジメントなどの領域において、個人や組織が誰かに何かを提供して役に立つことを、あるいは提供する価値そのものを「デリバラブル」と表現します。仕事のあり方や存在意義について考える上で、「何をしているか」という行動の内容ではなく、「誰に、何をもたらしているか」「どのように役に立っているか」――提供価値や果たす役割の内容を問う「デリバラブル」の視点はきわめて重要です。
(2016/6/24掲載)
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

デリバラブルのケーススタディ

仕事や組織のあり方を定義する新しい視点
「誰にどんな価値を提供できるか」に注目

これからの人材マネジメント(HRM)はどのような方向に向かうのか、そのけん引役を担う人事部はどうあるべきか――その問いに答えるための一つの視点として、「デリバラブル」という考え方が注目されています。従来のHRMが、人材採用や育成、評価、処遇といった個別の活動を重視していたのに対し、「デリバラブル」志向のHRMは、個々の活動よりも、HRM全体として果たすべき役割や提供すべき価値は何かという観点から、HRMやそれを推進する人事部門のあり方を構想するのが特徴です。

「デリバラブル」の考え方を理解するために対置されるのが、「ドゥアブル」(doable)という言葉です。これはdo(=する)+able(=できる)の組み合わせで、「やろうと思えば(その結果、何がもたらされるかはさておき)、実際に行為としてできる」ことを表します。東京大学准教授の中原淳さんは、このドゥアブルとの対比を通じて、デリバラブルの考え方を次のように分かりやすく説明しています。

「あなたの仕事は何ですか」と問われたとき、たとえば「開発研究です」「調査をやっています」と答えるのがドゥアブル。仕事を、自分に「できること」として捉えているからです。これに対して、デリバラブルの視点から先の質問に答えるとすると、「顧客の問題解決につながる開発研究をしています」「現場の役に立つような調査を実施しています」というふうになります。「何ができるか」という行為の内容ではなく、その行為の結果、「誰に、何をもたらすことができるのか」がデリバラブル。仕事を通じて何らかの価値をもたらす“宛先”と、その提供価値の内容が問われるわけです。

戦略と成果を結びつけるHRMのあり方を考える目的のために、デリバラブルの概念を初めて提起したのは、著書『MBAの人材戦略』で知られるミシガン大学スティーブン・M・ロス・スクール・オブ・ビジネスのデイビッド・ウルリッチ教授でした。ウルリッチ教授は、人事部門があるおかげで、ライン・マネジャーや顧客、取引先などにどのようなプラスがあるかという観点から、つまり「ドゥアブル」よりも「デリバラブル」の発想によって、人事部門の機能は再定義されなければならないと述べています。それが、有名な“人事部の役割の4分類”――伝統的な業務としての「管理エキスパート」(人事制度に基づいて精密に人材を管理する)と「従業員チャンピオン」(従業員代表としてその声を経営に届け、従業員への支援を行う)、戦略的な仕事としての「戦略パートナー」(経営戦略達成に向けて人事・組織面からサポートする)と「変革エージェント」(組織・風土改革を進める)という四つの機能を示したフレームです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

あわせて読みたい

戦略人事
「戦略人事」とは、企業経営において、経営戦略と人材マネジメントを連携・連動させることで競争優位を目指そうとする考え方、およびそれを実現するための人事部門の機能や役割などを包括的に示す用語です。今までも人事部門には、事務処理や労務管理などの定型的なオペレーション業務だけでなく、人的リソースの適正配置や...
組織市民行動
「組織市民行動」とは、企業や団体の従業員が自分の職務の範囲外の仕事をする「役割外行動」の一種で、英語ではOCB(Organizational Citizenship Behavior)と呼ばれます。 この概念を提唱した米・インディアナ大学のデニス・オーガン教授らによると、組織市民行動は「従業員の行動...
EVP
EVPとは、Employee Value Propositionの頭文字をとった略語で、直訳すると「従業員価値提案」。つまり、企業が従業員に提供できる価値のことを指します。従来の「従業員は会社にどのような利益をもたらすか」という視点ではなく、「企業は従業員に何を提供できるか」という視点に立つのが、E...

関連する記事

ビジネスパーソン800人調査「仕事力」があると思う企業、有名人は――?
ビジネスパーソンが「仕事力がある」と思う企業のトップはトヨタ自動車。次いで2位ユニクロ、3位パナソニック、4位ソニー、5位ソフトバンクという結果となりました。
2010/12/13掲載人事・労務実態調査
説明できる? 「あの人の方が給料が高い」理由
「同じ仕事なのに賃金が低いのはどうして?」 勤続が長く仕事の隅々まで理解したベテランパートよりも、何も知らない・できない 新人社員の方が賃金が高い、というのはよく聞く話です。 パート・アルバイトで働く人は、正社員との賃金格差についてどのような 不満と納得感を持...
2019/02/26掲載新卒・パート/アルバイト調査
中村和彦さん: 組織に関する問題を「人」「関係性」に働きかけることで解決 いま日本企業に必要な“組織開発”の理論と手法とは(後編)
組織開発をどのように進めていけばいいのか、また、その際に人事部はどう関わっていけばいいのかなどについて、組織開発の実践に取り組んでいる研究者の南山大学教授の中村和彦さんに具体的な話をうかがっていきます。
2015/09/11掲載キーパーソンが語る“人と組織”

関連するQ&A

請負で仕事をしてもらっている一人親方を短期雇用する
一人親方で、普段当社の仕事を、請負で仕事をしてもらったり 1日¥25000で仕事をしてもらったりしています、 この人は,他社のからも請け負って仕事をしています。 この人と、週2日、20時間の労務契約を結んで、社会保険に入れることはできるでしょうか、又その時に請負で仕事を頼めるでしょうか、よろしくお願...
新たに相談する
相談する(無料)

「人事のQ&A」で相談するには、『日本の人事部』会員への登録が必要です。

新規登録する(無料) 『日本の人事部』会員の方はこちら
業務に関するちょっとした疑問から重要な人事戦略まで、
お気軽にご相談ください。
各分野のプロフェッショナルが親切・丁寧にお答えします。

関連するキーワード

分類:[ 戦略的人事 ]
テレワーク特集

会員として登録すると、多くの便利なサービスを利用することができます。

ジョブ・カード制度 総合サイト タレントパレット

50音・英数字で用語を探す

新着用語 一覧

注目コンテンツ


テレワーク特集

「テレワーク」のメリット・デメリットを整理するとともに、導入プロセスや環境整備に必要となるシステム・ツール、ソリューションをご紹介します。


【人事の日制定記念企画】
オピニオンリーダーからのメッセージ

HR領域のオピニオンリーダーの皆さまから全国の人事部門に向けてメッセージを頂戴しました。


人事メディア情報

人事メディア情報

人事・労務関連の代表的なメディアをご紹介いたします。


「グロービス学び放題」導入で公募研修の受講者が増加<br />
“自発的に学ぶ”企業文化を醸成

「グロービス学び放題」導入で公募研修の受講者が増加
“自発的に学ぶ”企業文化を醸成

急速に変化する市場環境の中で競争力を維持・向上させていくためには、人材...


会社の新しい挑戦を支えるために<br />
人事戦略のよりどころとなる総合的な人材データベースを構築

会社の新しい挑戦を支えるために
人事戦略のよりどころとなる総合的な人材データベースを構築

第一三共株式会社は2025年ビジョン「がんに強みを持つ先進的グルーバル...