エシカル
エシカルとは?
「エシカル」(ethical)とは、英語で「倫理的」「道徳上」という意味の形容詞。近年、英語圏では、個人や企業の倫理的活動を「エシカル○○」と表現することが多く、トレーサビリティやサステナビリティを徹底する産業やものづくりのあり方といった意味合いが強まっています。「エシカル消費」「エシカル投資」「エシカルビジネス」などの用語がその代表例。社会的課題や環境問題の解決を事業で実現しようとする「エシカル」な企業には、その活動や理念に共感する優秀な若者が集まりやすく、人材面・組織面の優位性が期待できるといわれます。
サプライ・チェーンに潜む非倫理性リスク
社会性と事業性を両立し人材確保で優位に
「エシカル」という言葉が最初に広まったのは、ブレア労働党政権下のイギリスだと言われています。アフリカの飢餓問題に対し、「エシカル政策」という取り組みが行われたのを機に、同国内で使われるようになりました。この新しい考え方にいち早く反応したのがファッション界。フェア・トレードやオーガニック、リサイクル、伝統的な手仕事なども含め、効率だけを追求する大量生産に走らず、ものづくりの原点に戻ろうとする動きから商品化されたファッションを「エシカルファッション」と呼ぶようになりました。
CSRレポートを発表したり、倫理的な経営理念を掲げたりするだけでは、「エシカル」な企業とはいえません。CSR戦略をビジネスモデル化し、社会性と事業性を正しく両立させることがエシカルビジネスの要諦です。また、企業活動においてエシカルを標榜する以上、自社だけでなく、サプライ・チェーンのすみずみまで目を光らせる必要があるでしょう。たとえば製造業なら、取り扱っているすべての素材や部品について、調達先の大元までトレースすることができなければなりません。なぜならサプライ・チェーンには、アンフェア・トレードや労働搾取、違法調達など、非倫理性のリスクがいくつも埋め込まれている可能性があるからです。サプライ・チェーンが海外まで広がっているケースではさらに注意が必要です。ある国では非倫理的な事柄が、別の国ではそう受け止められないという矛盾も数多くあります。新興国の生産委託先などで児童労働や過酷労働が行われていたとしたら、その事実が発覚したとき、「当社は知らなかった」では済まされません。
「エシカル」を追究する企業は、このように、一般企業の何倍もCSRに配慮する必要があります。しかしそれを実行することで、一般企業が望んでも得られないような優位性を得ることもできるのです。その最たるものが、人材確保における優位性でしょう。東日本大震災以降、日本の若い世代は、仕事に社会貢献や倫理性といった価値観を求めるようになりました。いまほど彼らの視線が、社会的な課題に向けられている時代はありません。エシカルビジネスを志向する企業には、その精神に共鳴した有為の人材が吸い寄せられるように集まってくる、といわれるゆえんです。知名度では大企業に劣る中堅・中小企業にこそ、今後、エシカルな企業としての躍進が期待されます。
用語の基本的な意味、具体的な業務に関する解説や事例などが豊富に掲載されています。掲載用語数は1,400以上、毎月新しい用語を掲載。基礎知識の習得に、課題解決のヒントに、すべてのビジネスパーソンをサポートする人事辞典です。