バリキャリ・ゆるキャリ
バリキャリ・ゆるキャリとは?
「バリキャリ」とは、“バリバリ働くキャリアウーマン”を略した言葉で、仕事こそ自己実現の手段と考え、私生活の充実よりも職場での成功やキャリアアップを優先する女性の生き方、価値観を表します。これに対し「ゆるキャリ」とは、決して仕事第一ではなく、家庭生活を大切にし、自分の趣味や交友も楽しみながらマイペースで働くこと。本来は、そういうゆるやかなキャリアの女性を肯定的にとらえる表現として、エッセイストの葉石かおり氏が提唱した言葉ですが、一方で“家事・育児を言い訳にして低パフォーマンスに甘んじる、そこそこの働き方”という批判的な意味合いで使われることもあります。
出産を機に“ほどほど”の働き方へシフトする女性も少なくない
企業はキャリア支援で戦力化
厳しい就職戦線を高学歴で勝ち抜き、総合職として入社。残業もいとわず、男性と肩を並べてバリバリ働き、着実にキャリアを築き上げていく――。1985年の男女雇用機会均等法施行を機に、日本の企業社会には、そんな「バリキャリ」の女性たちが急速に増えましたが、育休などの制度が整っていなかった頃の彼女たちは、その多くが、出産を機にキャリアを諦めるか、バリキャリであり続けるために子どもをもつことを諦めるかの二者択一を迫られました。育児・介護休業法改正などを経て、2000年代に制度自体は整いましたが、出産した女性のうちワーキングマザーの割合は、いまだ4割以下と少ないまま。女性正社員の約半数が、職場でのプレッシャーや“保活”の不調といった要因から、第一子の出産を機に仕事を辞めざるをえず、また辞めはしないまでも、管理職への昇進は目指さず、子育てに比重を移した“ほどほど”の働き方――「ゆるキャリ」にシフトする女性も少なくありません。
さらに最近は、新卒採用の現場でも、あえて総合職ではなく、一般職や職種・勤務地域限定職を志向したり、仕事と子育ての両立支援を重視したりする女子学生が増えているといいます。結婚して出産しても、無理なく仕事を続けられるかどうかが、仕事選び・会社選びの基準になっているのです。企業としても、こうした「ゆるキャリ」志向の女性への対応は一筋縄ではいきません。少子化に歯止めがかからない中、いまどき仕事オンリーのバリキャリを目指せとは言えないけれど、制度を利用するだけして、ゆるキャリで十分と楽な立場や仕事に安住し、向上心を失われては困ります。働くからには戦力になって――女性活用に熱心な企業であれば、なおさらでしょう。
そこで出産後の女性社員に対し、仕事と育児の両立支援だけでなく、キャリア支援にも力を入れる動きが広がってきました。NTT東日本では、先輩の女性管理職が4~5人でチームを組んで各地の職場へ出向く「きらきらサポーターズカフェ」が効果を上げています。女性管理職がこれまでの苦労や悩み、失敗談も隠さずに話し、バリキャリだけでない多様な働き方があると伝えることで、後輩の活性化につなげています。NTTデータでは、2年前に社内アンケートで「管理職になりたいか」を聞いたところ、20代女性の5割がノーと答えました。この結果を受けて、女性管理職約100人のキャリアの軌跡をホームページで紹介、本音で意見交換できるリーダー育成セミナーを実施するなどの取り組みを進めています。
もっとも、女性活躍推進の美名の下に、“産めよ・育てよ+働けよ”のプレッシャーが女性たちを追い詰め、疲弊させているのも確かでしょう。「ほどほどに働きたい」志向の背景には、長時間労働の是正や男性の家事・育児参加も進まないまま、仕事と家庭双方の責任を負わされている現実があります。「ゆるキャリ」発案者の葉石かおり氏は、言葉の本来の意味を「ゆるキャリは、ただのやる気のない社員ではない。仕事でのアウトプットとプライベートを通じたインプットのバランスがとれている人」と強調します(日本経済新聞電子版2013年6月27日付)。
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