イグジット・マネジメント
イグジット・マネジメントとは?
「イグジット・マネジメント」(Exit Management)とは“組織の出口(exit)管理”を意味します。組織の健全な新陳代謝を促すために、雇用の入口にあたる採用の一方で、出口に相当する退職などの個人との関係解消についても戦略的に計画・管理する人材マネジメントのことです。社内外の流動化を高め、スムーズかつ建設的な関係解消を容易にするイグジット・マネジメントは、激しい環境変化への適応を強いられる時代に必要不可欠な経営戦略として注目されています。
組織の新陳代謝のためによりよい関係解消を
エンプロイアビリティを育てて流動性を喚起
終身雇用を前提としてきた日本の企業社会では、組織の代謝は定年により一律かつ自然発生的に生じるもの、というのが従来の常識でした。それゆえに、定年退職以外の形での労働契約の解消については、どうしても解雇につながるネガティブなイメージがつきまといがちです。その方策も退職勧奨や希望退職者募集といった、やはりネガティブで、急場しのぎの出口対策しか持ち合わせていなかったのが実情でしょう。つまり日本ではまだ「イグジット・マネジメント」が未成熟な状態にあるわけです。
イグジット・マネジメントの目的は、経営環境の激変に対応するために、組織の健全な新陳代謝を促すことにあります。一般に組織をたえず活性化させるためには、採用活動に注力し、有能・有望な新しい人材を取り込むのが定石と考えられていますが、そうした雇用の入口の管理(エントリー・マネジメント)だけでは十分とはいえません。企業も個人も、そして双方に求められる社会や市場のニーズも時間とともにたえず変化するからです。組織に属する個人の役割が変われば、個人が会社や仕事に対して抱く感情や求める価値も変わっていく――例えエントリー・マネジメントが奏功し、雇用の入口で“個人と組織の相思相愛関係”が結ばれたとしても、それが永続するケースはむしろ稀でしょう。入社当初は意欲に燃えていた新人がいつの間にか精彩を失っていった、パフォーマンスの低い人材が組織内に滞留し改革の抵抗勢力となってしまった、というような事態にも陥りがちです。
そこで必要なのが、個人と組織とのよりよい関係解消を管理する「イグジット・マネジメント」です。組織から人を送り出すためだけでなく、組織に新しい人材をたえず受け入れるためにも必要な考え方で、関係解消を容易にする柔軟な人事システムを構築することによって、エントリー・マネジメントとの相乗効果も期待されます。
さらにいえば、イグジット・マネジメントの要諦は、組織が個人に対して最大限の人材開発・キャリア開発を行い、エンプロイアビリティ(雇用されうる能力)を養成することに尽きます。社外価値の高い人材を社内で育てれば、組織の内と外との障壁が自然と低くなり、流動性の高い“辞めやすい環境”が生まれます。人と組織の関係を時間経過の中で考えると、イグジット・マネジメントは決して出口だけを対象とする施策ではなく、むしろそのずっと前の段階から、極論すれば、採用という組織の入口をくぐった瞬間から取り組むべきテーマだといえるかもしれません。
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