人事の2010年問題
人事の2010年問題とは?
2010年には団塊世代の大量退職が完了する一方で、授業時間や学習内容が少ない、いわゆる「ゆとり教育」を中学時代から受けた“ゆとり第一世代”がはじめて新卒社員として入社します。彼らの基礎的な能力への不信感から、世代交代が組織の劣化につながりかねないとの指摘があり、これを「人事の2010年問題」と呼びます。
“生きる力”不足のゆとり世代が入社
批判や排除より受け入れ、育てる視点を
2010年度の大卒新入社員はほとんどが1987年度生まれ。彼らの中学在学中に完全週休二日制や絶対評価が導入され、さらに「総合的な学習の時間」が新設されました。当時の文部科学省は「自ら学び考える本当の学力――“生きる力”を育てる」と唱えて、新しい学習指導要領を導入しました。“生きる力”は基礎学力だけでなく、意欲やコミュニケーション能力などを総合した力と定義されましたが、ゆとり教育を推し進めた結果、若年層の“生きる力”は逆に低下したといわれています。高校からゆとり教育を受けた08年、09年入社組を含め、ゆとり世代社員に何かとネガティブな評価がつきまとう所以です。
2009年に日本能率協会マネジメントセンターが、企業の人事担当者573人を対象に実施した調査(複数回答)によると、若手社員の問題点として53%が「読み書きや考える力など基本能力の低下」を挙げています。さらに「主体性不足」(51%)、「コミュニケーション能力不足」(46%)と続きました。ある自動車関連メーカーでは、技術系の新人の基礎学力を検証するために毎年「算数テスト」を行っていますが、09年の成績は100点満点で平均点が50点を下回ったといいます。
10年春卒業予定の大学生の就職内定率は09年12月1日時点で73.1%、調査を始めて以降、最低であることが厚生労働省と文科省の調査でわかりました。これは、不況でただでさえ厳しい就職戦線に、「2010年問題」が追い打ちをかけた結果と考えられます。というのも、大卒者の求人倍率は1.62倍(リクルートワークス研究所調べ)。極端に低くはありません。企業の人材育成などを手がける「シェイク」(東京)の吉田実・代表取締役社長は「いまの企業は学生の基礎学力や生きる力に不信感を抱いており、チェックが厳しい」と指摘します(読売新聞/2009年1月6日付)。
しかし、ゆとり世代を批判し、“厳選採用”に徹するばかりでは、要員計画の実行に支障をきたしかねません。排除から受容へ、選別から育成へ――「2010年問題」を採用方針の見直しの好機ととらえるべきでしょう。現に、「内定者には英語能力テストで一定水準をクリアするように指導」(キヤノンマーケティングジャパン)したり、「入社半年前から18ヵ月連続の長期研修を実施」(サントリーフーズ)したり、手厚い新人教育で対応する企業も増えています。
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