育休切り
育休切りとは?
妊娠・出産や産休、育児休業(以下、育休)などの取得を理由に、企業が社員に退職を強要したり、降格や異動を命じたりする不当な取り扱いを「育休切り」といいます。2008年秋のリーマンショック以降、経営環境の急速な悪化に伴って、人件費削減のための「育休切り」が横行しているといわれます。
「育休取得で解雇」は法令違反
知識不足の管理職層に周知徹底を
「産休を申請したら解雇を言い渡された」「育休を終えて、復職を申し出たら業績悪化をタテに拒否された」――こうした「育休切り」に関する相談が、全国の労働局などで急増しています。09年3月の厚生労働省のまとめによると、相談件数は同年2月までの11ヵ月間ですでに前年度1年分よりも25%以上多い1,107件に達し、過去最高を記録。厳しい雇用情勢が、仕事と子育ての両立を脅かしている現実が浮き彫りになりました。
「育休切り」という言葉は08年末に話題になった「派遣切り」をもじったものですが、両者の法的な意味合いは大きく異なります。男女雇用機会均等法や育児・介護休業法は、育休などの取得を理由にした解雇を禁じています。つまりいくら経営に窮してのこととはいえ、「育休切り」は明らかな違法行為なのです。にもかかわらず、なぜあとを絶たないのでしょう。実は単に企業が、「法令違反であることを知らなかった」というケースが少なくないのです。
厚生労働省職業家庭両立課の元木賀子さんは、事業主だけでなく、現場の所属長の法令知識不足を指摘します。一般に大企業は中小零細企業に比べて、育休制度の整備は進んでいるものの、組織規模の大きさゆえにコンプライアンスの浸透が難しい。元木さんによると、一部の中間管理職層には、産休切りについて「働けないのだから切ってもいいのでは」というような理解不足の人もいるといいます。
09年7月には、育児・介護休業法の改正が公布されました。改正法では、仕事と家庭の両立をより図りやすくするために、3歳未満の子どもを育てる社員への短時間勤務制度(1日6時間)を企業に義務づけています。これにより、社員は育休をとった後も、働く時間を短縮して子育ての時間を確保できるようになりました。育休の取得率が1%台と低迷する男性のための育休促進策も盛り込まれています。従来は、妻が専業主婦なら、労使協定によって育休をとれないようにもできましたが、改正法はこれを廃止。すべての働く父親が育休をとれるように改めました。申請に応じて残業を原則免除する制度の導入も、企業に義務づけています。
さらに企業が「育休切り」などの違反を犯し、厚労省の勧告にも従わない場合には、社名を公表するなどの制裁も科されることに。もう「知らなかった」では済まされせん。
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