中期経営計画
中期経営計画とは?
中期経営計画とは、企業が3~5年程度の期間を見据え、中長期的な目標と戦略を明示する計画書のこと。企業の成長や事業の方向性を明確にし、社内外のステークホルダーに共有するための重要なツールです。策定そのものは法令で義務づけられているわけではありませんが、特に上場企業では、投資家や従業員に対する企業の姿勢を示す重要な手段として広く活用されています。

なぜ中期経営計画を立てるのか
中期経営計画は法令で義務づけられているわけではありません。また、欧米の企業においては、中期経営計画を策定し公表する企業はそれほど多くありません。
それでは、なぜ企業は中期経営計画を立てるのでしょうか。その理由は、大きく社外向けと社内向けの二つの視点から考えられます。
投資家への説明
中期経営計画は、企業が目指すべき姿に対して具体的な目標を定めたものです。投資家やステークホルダーにとっては、企業の将来を見通すうえで重要な情報源となります。証券取引所の「適時開示情報サービス」に掲載されることもあり、企業の透明性を高める要素にもなります。
中期経営計画を公表することで、投資家の評価が高まり、金融機関からの信頼も得やすくなります。結果として、資金調達や融資の際に有利に働くこともあるでしょう。また、有価証券上場規定やコーポレートガバナンスの観点からも、中期経営計画の策定と実行は株主へのコミットメントの一つと見なされています。
トヨタ自動車や楽天グループ、野村ホールディングスなど有名企業の中には、中期経営計画を公表していないところもあります。これは、企業ごとの経営戦略や方針によるものであり、中期経営計画の策定が義務ではないことを示しています。
10年以上の長期計画のほうが重要であると考える企業もあります。また、中期経営計画を廃止した味の素のように、細かい数値を現場に押し付けることで、現場が疲弊してしまうと考えている企業もあります。
社内へのメッセージ
中期経営計画は、社内向けにも大きな意味を持ちます。従業員は自社の方針を理解することで、自ら考えて行動することができます。また、中期経営計画が明示されていると、企業の方針と現場の目標・行動のすり合わせができます。
また、中期経営計画があることで、企業のビジョンや戦略が社内に浸透しやすくなります。従業員のモチベーション向上にもつながるため、組織の一体感を醸成する効果も期待できます。
中期経営計画によく記載されている項目
-
経営ビジョン:
企業が中長期的に目指す姿や使命(ミッション)を明記します。 -
売上高・利益目標:
3~5年後の売上高や営業利益など、定量的な目標値を明示します。
例:「2028年度までに売上高500億円、営業利益率10%を達成」 -
成長戦略:
新市場参入や既存事業の拡大など、具体的な成長の方向性を示します。事業拡大の方向性を明確にし、投資家や社内に成長の可能性をアピールできます。 -
重点施策:
製品開発、技術革新、人材育成など、具体的な取り組みを挙げます。
例:
新製品やサービスの開発
DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進
コスト削減プラン -
財務戦略:
資本構成や投資計画に関する詳細を記載します。安定した財務基盤を維持しながら成長する方針を明確化します。
例:
自己資本比率や負債の管理
設備投資計画やM&Aの方針
株主還元策(配当や自社株買い)
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サステナビリティ目標:
環境への配慮や社会的責任に関する方針を記載します。近年は、持続可能な成長をアピールすることが企業価値の向上に寄与しています。
例:
CO2排出削減、再生可能エネルギー導入
SDGsやESG経営の推進
社会貢献活動の展開 -
人材戦略:
リスキリングや女性活躍推進など、従業員のスキル向上や働き方改革に関する計画を記載します。
例:
採用計画:必要な人材の確保
従業員エンゲージメントの向上施策
ダイバーシティ推進 -
進捗管理方法:
中期経営計画の進捗をどのように管理し、必要に応じて修正するのかを明確にします。計画の実行力を高めるため、KGI(Key Goal Indicator、重要目標達成指標)やKPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)を活用します。
中期経営計画は人事においても重要
中期経営計画は、人事戦略にも大きな影響を及ぼします。カゴメと塩野義製薬の事例を通じて、その重要性を紹介します。
カゴメ
カゴメの中期経営計画では、2025年に向けた「ありたい姿」のKGIとKPIを設定。そこから企業として何をするべきかを、最終的なアクションに落とし込みました。
その一つである「挑戦する風土醸成」は、人事分野の施策に影響を及ぼすポイントです。多様性をイノベーション創出につなげるという目標を明確に言語化しています。
また、経営戦略実行のポイントにDXを挙げており、その推進のためにデジタルスキルを持つ人材の確保・育成に注力することがわかります。
- 【参考】
- 中期経営計画|カゴメ株式会社
塩野義製薬
塩野義製薬の中期経営計画には、ヘルスケア領域の新たなプラットフォームを構築し、ヘルスケアプロバイダーとして、新たな価値を社会へ提供するという目標が掲げられています。そのために、変化を恐れず、多様性を受容し、既成概念を超えて「Transform」するという点が、人事分野の指針となっています。
注目されるのは、グローバル展開に向けた戦略と投資・財務戦略の推進に注力している点で、コーポレート機能のグローバル化に反映されています。また、「人的資本マネジメント」の中核として、人材力、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)、従業員エンゲージメントの強化を挙げています。
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