公平理論(エクイティ理論)
公平理論(エクイティ理論)とは?
「公平理論」はモチベーション理論の一つで、「投入量(Input)」に対して得られる「報酬(Outcome)」に他者と比べて不公平を感じたとき、その程度が大きいほど、不公平感を解消して公平に近づくような行動をとるという考え方です。J・ステイシー・アダムスらによって提唱され、「エクイティ理論」とも呼ばれます。不公平があった場合、熱心に仕事をしなくなる、退職するなどの手段で不公平を是正しようとすることがあります。「自他の投入量と報酬のバランスをどのように認知するか」がモチベーションに影響するため、公平理論は評価システムや組織文化などの設計に役立てることができます。
職場で不公平を感じたとき、
人はどのような行動をとる?
「あの部長、全然仕事していないのに、どうして給料を2倍ももらっているの?」
こんなセリフを、社員から聞いたことはないでしょうか。実態の真偽はさておき、この感情は公平理論で説明することができます。自分は毎日遅くまで残業しているのに、部長は人に指示するだけで、作業を手伝いもせずに定時で帰ってしまう。それなのに、2倍も給料をもらっているのは納得がいかない――。
この社員は、自分の労働時間に対する給与と、部長の労働時間に対する給与に納得できず、不公平感を募らせているのでしょう。ただし、ここで注意が必要なのは「投入量(Input)」には、労働時間以外にも種類があるということ。投入する対象としてわかりやすい時間の他にも、それまでに得た能力や経験、仕事の質を高めるための努力、コミュニケーションなどが「投入量」にあたります。
一方、「報酬(Outcome)」が指すのも給与だけではありません。雇用の安定性、福利厚生、能力開発の機会、同僚からの感謝や賞賛、仕事への誇りややりがいなども報酬に含まれます。
先ほどの例では、社員は「労働時間」と「給与」だけに焦点を当てて不公平感を抱いていましたが、本来は部長の能力や経験も「投入量」に含まれます。さらに、給与だけを受け取っているわけではなく、安定した雇用や福利厚生も考慮に入れるべきなのです。
とはいえ、公平理論は投入量と報酬の捉え方が本人の主観によるもので、客観性に欠くという指摘もあります。実際は理にかなった給与システムになっていても、本人が不公平感を募らせていけば、モチベーションは下がってしまうのです。
不公平感を募らせると、それを是正するために次のような行動に至る可能性があります。まずは、「投入量」を減らすこと。労働時間を減らす、努力しなくなるなど、熱心に仕事をしなくなることで公平性を保とうとします。さらに進むと、会社を辞めることも選択肢の一つになります。
是正に向かうポジティブな行動としては、自分や他者の「投入量」と「報酬」の認識を変えることが挙げられます。先ほどの例で言えば、社員が部長の労働時間以外の「投入量」に気づき、自分が得ている給与以外の「報酬」も認識することがそれにあたります。
人は、公平な扱いを受けることを望みます。給与、福利厚生、組織文化などの「報酬」に関する制度や仕組みを設計する際は、その前提をもとに検討する必要があるのです。
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