行動インサイト
行動インサイトとは?
「行動インサイト」とは、行動経済学の技法の一つで、行動科学や社会科学などの実証的な研究結果を基に、人がどのような選択を行うかについて洞察すること。人間の行動を観察することで心理的な傾向を分析し、それを理論的に体系化するアプローチです。2017年にノーベル経済学賞を受賞した「ナッジ」も行動インサイトの一つです。
空前の行動インサイトブーム
日常にあふれかえる行動経済学的手法
行動インサイトは、ここ10年ほどで行政や企業での活用が進んでいます。例えば、レストランで何を注文するか迷ったとき、メニューに記載された「おすすめ」マークに背中を押された経験はないでしょうか。これは「ナッジ(nudge)」という行動経済学の手法。日本語では「ひじで軽く突く」と訳され、強制することなくちょっとしたきっかけを与えることで消費者に行動を促します。
うなぎ屋で松竹梅というラインナップがある場合、一番注文されやすいのは真ん中の「竹」だそうですが、これは行動経済学で「極端回避性」と呼ばれる手法です。価格帯が複数あると、人は安いものよりは高いもののほうが高品質だろうと考えます。一方、最も高いものに対しては贅沢すぎる、失敗したときに痛手が大きいとも考えます。その結果、選択肢が三つあった場合は真ん中のメニューを選びやすくなるのです。
行動インサイトの活用は個人の自由を奪わず、かつコストがかからないために爆発的な支持を得ていますが、課題もあります。場合によっては期待した効果が得られないばかりか、逆効果になる可能性もあるからです。新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を促すメッセージについて、ナッジの活用が接種意向を高めるかを調査した研究では、高齢者には有効だったものの、若年層には効果を発揮しなかったそうです。
人材マネジメントに行動インサイトを用いる場合にも、ナッジ一辺倒のような施策ではなく、従業員データを用いて施策を個別化させたほうが効果を発揮します。類型化された意思決定パターンに基づく施策にも限界があるからです。注目を集める行動インサイトですが、テクノロジーと掛け合わせることによって、一層精度の高い取り組みになる可能性を秘めています。
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