黒字リストラ
黒字リストラとは?
「黒字リストラ」とは、好業績であっても将来的なリスクを見越して、組織をリストラクチャリング(再構築)することをいいます。いわゆる“リストラ”は業績不振とともに行われる人員削減ですが、黒字リストラは立て直しのための人員整理というより、人員の新陳代謝を目的として行われます。年功序列をもとにした賃金体系により、多くの日本企業がミドルシニア層の人件費にコストを割いています。これを若い世代に再分配することで、健全な組織風土を醸成させることが狙いの一つです。ただし、年齢が若ければ安泰ということではありません。実力主義の風潮を強める一手と言えるでしょう。
増える黒字リストラ。年功序列から実力主義へ
終身雇用制度はかつて、日本が世界に誇る従業員のエンゲージメントを高めるための仕組みでした。しかし、それも過去のこと。2019年4月には、日本経済団体連合会(経団連)の中西宏明会長が「終身雇用制の見直し」を言及し、時代の変化がより鮮明になりました。この2019年は、過去に例を見ないほどの「黒字リストラ」が行われた年でもあります。
東京商工リサーチの調査によると、2019年1~11月に早期・希望退職者を募集した上場企業はのべ36社。対象人数は1万1351人。過去20年で社数、人数ともに最少だった2018年(1~12月)と比べると、社数は12社から36社で3倍増、人数も4126人から1万1351人と3倍近い増加となっています。日本経済新聞は、早期・希望退職者を募った上場企業35社のうち、57%にあたる20社の通期最終損益が黒字だったと報じています。
製造業や繊維小売など、主力商品の不振により事業や人員の見直しを迫られた企業もあれば、製薬業界や飲料メーカーなど、業績が堅調な大手企業でも、将来的なリスクに鑑みた「先行型」のリストラが増加しました。
黒字リストラをポジティブに捉えると、年功序列から実力主義への構造改革の一手と見ることができます。人材の選択と集中を行うことによって、指示待ち人材ではなく主体的に動ける自律型人材を増やしていくという考えです。
一方、黒字リストラを日本経済の先細りを示すものと捉える専門家もいます。黒字リストラは簡単に利益を上げるための施策と取ることもできるからです。コストのかかる従業員を手放すことで、事業開発をしなくても簡単に利益を押し上げることができます。ただし、それは一時的なカンフル剤に過ぎず、中長期的に収益を上げ続けることができる仕組みではありません。目先の経営効果を期待した黒字リストラを懸念する見方もあるようです。
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