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『日本の人事部』HRクラブ 開催レポート

【第21回テーマ】

個々の強みを最大限に活かし、社員誰もがいきいきと働ける職場へ
~サッポロビール人事部の「社員と対話し、社員同士の対話を促す」取り組みとは~

2013年1月25日(金)に、第21回『日本の人事部』HRクラブを開催いたしました。今回のゲストは、サッポロビール株式会社 人事総務部 人事グループリーダー兼ダイバーシティ推進グループリーダー 福原真弓氏。前半の講演では、同社の人事制度STARSの概要、組織風土上の課題や、「社員との対話」に関する取り組みなどについてご説明いただき、その後、参加者から福原氏への質問を受け付けました。後半は、四人ずつのチームに分かれてディスカッションを行いました。今回も活発な意見交換が行われた「HRクラブ」。本レポートでは、当日の模様をダイジェスト形式でご紹介いたします。

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【第21回 開催概要】

■ テーマ
個々の強みを最大限に活かし、社員誰もがいきいきと働ける職場へ
~サッポロビール人事部の「社員と対話し、社員同士の対話を促す」取り組みとは~
■ 開催日時
2013年1月25日(金) 18:30~20:30
■ ゲストスピーカー
サッポロビール株式会社 人事総務部 人事グループリーダー兼ダイバーシティ推進グループリーダー 福原真弓氏

<福原真弓氏(ふくはら・まゆみ) プロフィール>
1988年サッポロビール株式会社入社。経営企画部、都市開発本部をへて、北海道本社統括事業部にて工場跡地再開発業務。恵比寿ガーデンプレイスの開業に合わせ、関連会社に出向、施設内のワイン専門店の立ち上げ、運営に携わる。2006年サッポロビール社復職、本社ワイン洋酒部にて輸入ワインのマーケティング担当。2009年人事総務部へ異動、ダイバーシティ推進グループリーダー。2011年 人事グループリーダーを兼任。ダイバーシティ推進のほか、採用、異動、配置、考課等を統括。

組織風土を変える、チェンジエージェントとしての人事

講演はまず、サッポログループの会社概要、人事制度、組織風土などに関する説明からスタートしました。同グループは、2011年3月にポッカコーポレーションを子会社化し、2013年1月にポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社を設立。ポッカ社の統合により、サッポログループとして新たな船出をきったこのタイミングで、グループ人財戦略の基本理念―越境せよ―が発表されたそうです。少し強めの言葉で表現されたこの理念は、社内でも大きなインパクトがあったとのこと。サッポロ伝統の“開拓者”の魂を受け継ぎ、“越境”の気概を持ってチャレンジングに仕事に臨むことが、いま全社員に求められていると福原氏はいいます。

次に、同社の「人事制度STARS」についてお話しいただきました。2007年に導入した本制度では、役割要件制度の導入や、評価制度・賃金制度の改定、キャリア形成支援の充実などを実施。「社員と会社はお互いがなくてはならない最高のパートナーとなる」を基本ポリシーとして掲げ、その相互関係を前提に、社員は自分の仕事に誇りを持ち主体的にチャレンジし、会社は社員を「会社の宝=人財」と位置付け、成長につながる機会を提供しているそうです。

組織風土上の課題こうした制度を構築する上で参考としているのが、2年に1度実施される従業員の意識調査。そこから、組織風土上の課題が見えてきたといいます。福原氏によると、「エンゲージメント」の構成要素を見た場合、「会社に居続けたい思い(STAY)」は高いが、努力・貢献意欲(STRIVE)は日本企業の平均を下回っている、という結果が出たそうです。STRIVEを向上させるためには、「社員の声」を聴く必要があると強く実感した同社人事部は、「人事自体が組織風土のチェンジエージェントとして、聴き、動かしていく」という思いのもと、社員の声を“直接”聴くための取り組みを推進していったそうです。


サッポロビールの「社員と対話し、社員同士の対話を促す」取り組みとは

「社員の声を直接聴くための取り組み」として、同社では、「キャリア開発シート」と「異動ヒアリング」を重視。まず、年に1回、社員が中長期のキャリアプランをキャリア開発シートに記載。その内容を基に、人事担当者は全国の事業所に赴き、対象となる社員と面談(人事ヒアリング)を行うそうです。その後、異動の内示を行う際には、人事が必ずシートにその異動の意図に関しコメントを記入するというこだわりがあるとのこと。異動の希望がかなわなかった社員へのフォローも、必要と判断した場合には個別に行っているとのことでした。

その他に、事業場特有の風土がなぜできたのか、どういう取り組みが風土作りに影響を及ぼしたのかなどを把握するために、「従業員意識ヒアリング」を実施。合計で500人以上にヒアリングを実施する年もあるとのこと。こうした取り組みで、社員と直接対話することにより社員個々の思いや強みを直接把握することに努めているとのことです。

続いて、「社員に語らせる取り組み」についてもお話いただきました。同社では、経営と社員の対話を促進するために、ダイバーシティ推進の一環として、四つのプロジェクト(新入社員育成部会、コミュニケーション部会、キャリア開発部会、制度部会)を設置。テーマに基づき、プロジェクトごとに経営層へ直接提言を行う機会を設けたとのことです。

HRクラブ Photoまた、社員同士の対話の促進策として、育児期の社員やキャリア入社社員のネットワーク形成支援のほか、女性社員によるワークショップ(ワールドカフェ形式)や、役職者によるディスカッションを実施。役職者からは、女性社員の活躍をサポートする上で「同じ立場の者同士の意見交換は大変参考になる」「またこうした場を作ってほしい」という感想や要望が寄せられたそうです。社員同士の対話を密にすることで、気付きが生まれる――社員の意識を変え、行動を起こさせるきっかけを作りたい、と福原氏はいいます。

講演の最後は、「信頼される人事部となるために」について。人事自らが現場に足を運び、社員と積極的にコミュニケーションをとることや、社員に“ゆらぎ”の場を提供していくことなどが、重要とのこと。そして、同社人事部では、「三つの『みえる』(成果が見える!想いが見える!仕事が見える!)と、一つの『みせる』(人で魅せる!)」を心掛けているという、福原さんの言葉が大変印象的でした。

参加者同士で情報を共有―「社員の強みを活かすための施策、課題」とは

HRクラブ Photo続く第2部では、四人ずつのチームに分かれて、「社員が個々の強みを活かしていきいきと働くために、どのような取り組みをしているか」「そうした取り組みの中で、どんな課題があると感じているか」といったテーマで、ディスカッションを実施。今回は、途中でメンバーをシャッフルしたことで、他の企業の人事担当者の方と話す機会が増え、悩みや課題などをより多くシェアでき、参加された皆さまの満足度は大変高かったようです。

ディスカッション後は、チームの代表者にディスカッションの感想について発表していただきました。「社員の発言力を高めるためには、人事としてサポート体制を強化していかなければならないと思った」「企業規模も業種も異なるが、悩みや課題の根本は同じだと感じた」といった意見が挙がりました。

最後に、福原氏から参加者の方へ「いかに社員のやる気スイッチを入れていくか、そこが人事の役割であり、また人事の仕事の面白いところ。もがき続ける日本企業の人事部の実情を共有したことで、なんらかのヒントを皆さまが得ることができたのなら幸いです」というあたたかいメッセージがあり、今回の「HRクラブ」は終了しました。

以下、参加者の方々からは、下記のようなコメントをいただいています。

【参加者の声】

≪講演の感想≫

  • 一つひとつの取り組みに、非常に多くの労力をかけ、高い意識で施策に取り組んでいる姿に共感しました。
    (MS&ADシステムズ株式会社/濱田裕子様)
  • 「対話」をしに現場に足を運ぶことの大事さにあらためて気づきました。
    (小雀建設株式会社/増田明博様)
  • 弊社でも「対話」がキーワードになっています。サッポロビールさんのお取り組みを参考に、風土改革を完遂したいと思います。
    (電機/人材開発・キャリアデザイン担当)
  • 人事は「場」を作り黒子になる……忘れていたことを思い出せました。
    (その他業種/人事企画担当)
  • 社員のヒアリングは当社でも少しずつ実施していきたいと思いました。
    (その他業種/人事・労務・人材開発担当)
  • 社員との「対話」を積極的に進めていきたいと強く感じました。
    (化学/人事企画・制度構築、人材開発・キャリアデザイン担当)
  • 人事の人数が少なくても、全国をまわって社員の声をきいていらっしゃる姿に感動しました。「越境」精神にとても共感しました。
    (旅行・ホテル/人事・労務・人材開発・総務・採用担当)

≪ディスカッションの感想≫

  • 互いの企業特徴、課題のシェアリングの機会となり、また、自分の所属する企業を他社に説明することも頭を整理するきっかけになりました。今回のテーマを話すには、時間が短いかもしれません。
    (株式会社フィリップスエレクトロニクスジャパン/中西康恵様)
  • さまざまな課題について、皆さまと考えたり、意見交換したりと、大変充実した時間でした。金曜の夜でしたが、参加して良かったです。
    (株式会社ベル・メディカルソリューションズ/徳永康子様)
  • 組織が大きくなるほど、人事が現場に入るのが難しくなっています。どのような施策がいいのか、手さぐりしているのは他社も同じだと感じました。
    (サンデン株式会社/大和田えり子様)
  • HRご担当者の悩みや、施策の具体的なお話などをいろいろとうかがえて、大変参考になりました。
    (カーディフ生命保険会社/杉本稚代様)
  • さまざまな業種、人事経験の長短ある方など、多様な角度から話をうかがえて良かった。個人的にいろいろなアドバイスをいただけたのも収穫です。
    (旅行・ホテル/人材開発・キャリアデザイン担当)
  • 各社の悩みや課題について、共通の部分が多く参考になりました。
    (フードサービス/人事企画・制度構築、採用・雇用担当)

【第22回『日本の人事部』HRクラブ 開催のご案内】

第22回は、2013年3月15日(金)18:30から、ゲストに株式会社高島屋 人事部 人事政策担当次長 中川 荘一郎氏 をお迎えして開催する予定です。テーマは『「高齢者の雇用、活躍促進、戦力化」に取り組むために~ベテランを戦力化する高島屋の再雇用制度を事例に~』。参加ご希望の方は、下記から開催概要をご確認の上、お申込みください。皆さまのご参加をお待ちしております!