中小企業の経営者のための人事戦略入門【第4回】
本コラムは【第1回】で述べたように、秋山がみのり経営研究所ホームページに発表した記事を転載するものです。
「中小企業の経営者のための人事戦略入門」
【第4回】経営戦略を実現するための人事制度のメカニズム
経営者が経営理念を持ちそれを実現しようとするとき、形はさまざまですが、長期的な事業計画とか経営戦略を作る事になります。当然これが実現に向けて動き出すためには社員一人一人がその内容を理解し、その達成に向けて動機付けられていなければなりません。しかし現在多くの会社においてはその事業計画や経営戦略が売上目標や利益目標などの数値偏重になってしまっています。それらが各社員に伝わる段階ではノルマ管理のための数値目標化し、社員を動機付けるどころか過度のプレッシャーで、かえって社員を疲弊させてしまっている可能性が高いのです。
事業計画・経営戦略では数字も大切ですが、それ以上に会社の理念を長期的に実現するための組織編制と人材育成が、人事の視点からは特に重要です。
評価のための目標管理の考え方は最近多くの会社に定着してきていますが、評価の段階になると目標の難易度や様々な評価のテクニックが持ち出され、評価に納得感を出す工夫がされているケースが多く見受けられます。しかし目標の難易度と言うのは上司が勝手に判断すべき性格のものではないし、評価するときに特別なテクニックが無ければ評価できないような目標は目標とは言えません。目標管理の原点は、そのような主観的配慮を排除するために目標を設定することなのです。
そのような目標が設定されるためには、経営戦略を策定するとき組織編制と長期的な人材育成の方針が明確にされている必要があります。組織構造だけで無く、そこに配置される一人一人がどのような役割を持ち、それを果たすためにどのような責任・権限を有するのか、他の組織との関係も含め定義されている必要があります。さらに言えばそこに求められる人材はどのような要件を要するのか、また長期的に期待される姿ではそのような人材がどの程度の規模で必要なのかが描かれなければ、経営戦略は実行されえないし、経営理念は実現されません。
人事制度は大きく分けて3種類あります。一つは評価制度,二つ目がキャリアプラン制度,三つ目は報酬制度です。これらは経営戦略に基づき設計され、相互に整合的である必要があります。その整合性を支えているのが、経営理念であり、経営戦略なのです。
評価制度は経営戦略を年度別にブレークダウンした年度の事業計画から、目標を落とし込み、その達成度を評価する仕組みです。目標が本来あるべき目標となるためには、社員全員が自分自身の役割を明確に理解している必要があります。つまり目標が毎年毎年降って湧いたように与えられるのでは無く、経営理念に基づいた社員の役割がその前に理解されている状態が大切なのです。難易度と言うような曖昧なものではなく、組織編制をする段階で会社としてそれぞれの役割の責任・権限を明確にすべきなのです。その責任・権限の中で、年度ごとに会社の進む方向が見えれば、達成すべき目標は自ずから明らかになります。またその目標の達成・未達成は議論しなければ分からないようなものではなくなるのです。
また理念実現のために必要な人材が明示されれば、会社におけるキャリアが描ける土台ができた事になります。社員が長期的にこの会社に居るとどのようなキャリアを描けるのか、会社の理念実現と直結した形で示すことが可能となります。組織の階層あるいは専門分野別、機能別など様々な切り口から、役割が描かれ、それぞれの役割に求められる知識・スキルが特定され、社員はそれを目指し研鑽に努める事になります。
最後の報酬制度はこれら二つを支える基本的な制度です。この制度の対象範囲は既に触れましたが、金銭的報酬・非金銭的報酬など極めて広範にわたりますが、中心となる概念は前の二つの制度と同じく役割です。評価制度で触れた難易度も結果的には報酬制度に整合的に位置づけられます。
次回以降まず中心の概念となる役割とは何かを説明し、さらにそれぞれの制度の中身の説明をしていきたいと考えています。
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秋山 健一郎(アキヤマ ケンイチロウ) 株式会社みのり経営研究所 代表取締役
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