アイデアを導く掃除の仕方 │ 掃除は思考の棚卸し
新しい年を迎えました。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
昨年末、オフィスの大掃除を行いました。
普段は目の前の業務に追われて見過ごしてしまうような部分にまで手を伸ばし、机の中や棚の奥に眠っていた様々な物を整理しました。
明らかに要らない物や、中には、大切に保管しておかなければならない資料もありました。
さらに、懐かしい昔の写真や書類が出てきて、若い世代の社員たちが思わず「大爆笑」する場面も。
職場全体が和やかな空気に包まれ、楽しい雰囲気の中で進んだ大掃除は、ただの片付けに留まりませんでした。
書類を眺めながら一瞬立ち止まり、「これ、何かに使えませんか?」とか「ああ、こんなアイデアがあったんですよ」といった会話が次々と生まれました。
その話を周囲が耳を傾け、新たな改善案を出し合い、笑いながら具体的な内容にまで発展させるのです。
大掃除から生まれたアイデアは、年明け早々に実際のプロジェクトとして動き出すほど、明確で有用なものばかりでした。
掃除は、視覚、聴覚、情動を刺激し、アイデアが出やすい脳のコンディションを作り出すと言われています。
まさに、その瞬間を目の当たりにした大掃除でした。
今回のコラムでは、この経験を通じて、「楽しい掃除」が持つ可能性について、心理学や行動科学、チームビルディング心理学、そしてコーチング心理学の観点から考えてみたいと思います。
「楽しい清掃」の実践は、職場環境が改善され、チームの連携が強化されます。
また、リラックスした状態で、新しい発想や気付きが得られるようになります。
「気付き」がなければ掃除じゃない!
棚の中に眠る「宝箱」
棚の奥に隠れていたファイルや古い書類を見つけた瞬間、それはまるでタイムカプセルを開けるような感覚でした。
10年前の企画書や、過去のイベント写真を手にした若手社員たちは、その内容に驚きながらも笑顔で盛り上がりました。
「昔はこんなアイデアがあったんですね!」
「この写真、坂田さん?若い頃はこんな感じだったんですね!」
「これって、今取り組んでいる課題解決のヒントになりませんか?」
その和やかな雰囲気の中で、誰かが言いました。
「あれ、この企画書、今のプロジェクトに使えないかな?」
「こんなアイデアをベースにしたら、もっと良い案が出るかも!」
ただの「古い資料」だったものが、新しい価値を生む「種」となり、オフィス全体にアイデアの連鎖をもたらしました。
掃除は「思考の棚卸し」
掃除は、物理的な片付けを超えた「思考の棚卸し」でもあります。
過去のアイデアや情熱が込められた資料に触れることで、現在の課題に対する新しい視点が生まれるのです。
こうした現象を、心理学や行動科学の観点から掘り下げてみましょう。
1. 視覚的刺激と気づき
普段と異なるものを目にすると、脳が刺激され、発想が活性化します。
古い写真や書類が新たな気付きを引き起こしたのは、視覚的な刺激が脳の働きを高めた結果によるものです。
2. 体を動かすことで生まれる活力
掃除という身体的な活動は、血流を促進し、脳への酸素供給を増やします。
これが、アイデアを生み出す基盤となる活力をもたらしました。
3. 感情の共有が生む心理的安全性
チームで大掃除を行う中で、笑いや感動が自然と共有されました。
このプロセスが心理的安全性を高め、自由に意見を出し合える雰囲気を作り出しました。
4. 行動科学の観点
行動科学では、「環境が行動に影響を与える」という原則があります。
整理整頓された環境は、集中力を高め、ストレスを軽減します。
大掃除がもたらした変化は、環境の力を活用した良い例です。
5. チームビルディング心理学
協同で行う大掃除は、共通の目標を持つことでメンバー間の絆を深め、チーム全体の士気を高めます。この効果が、掃除中に生まれたアイデアの質を高める原動力となりました。
新5S思考術 ~清掃を「未来を創る活動」に~
5S活動(整理・清掃・整頓・清潔・躾)は、職場環境の改善を目的とした基本的な手法ですが、私が提唱する「新5S思考術」では、これを創造性と成長を促す活動として再定義しています。
それぞれの要素を詳しく見ていきましょう。
1.整理(要る物と要らない物を分ける)
必要な物と不要な物を明確にし、不要な物は思い切って捨てます。
残した物は、よく使う物を近くに、あまり使わない物を遠くに配置することで、効率性が向上します。
2.清掃(テーマを持つ清掃)
単なる清掃ではなく、「今年の棚卸し」や「未来へのヒント探し」といったテーマを設定し、作業を進めます。
この過程で得られた気付きやアイデアを記録し、共有することで、新たな価値を生み出します。
3.整頓(効率的なレイアウトの構築)
作業の効率を1秒でも短縮することを目指し、物の配置や道具の取り出し方を最適化します。
4.清潔(ルールの設定と維持)
整頓された状態を維持するため、置き場所や方法を明確にし、全員が守れるルールを作ります。
5.躾(ルールを守りさらなる改善へ)
定めたルールを守りつつ、新たな課題や改善案を日々見つけ出す文化を醸成します。
ポイントは、「清掃」です。
テーマを与えることで、何かしら観察したり、考えるきっかけを与えることができるのです。
心理学の視点を活かした清掃の効果
コーチング心理学
「これって何かに使えませんか?」といった問いかけが、コーチング心理学の核心である「気付きを促すスキル」を自然に発揮しました。
NLP(神経言語プログラミング)
NLPでは、笑いやリラックスした状態を「リソースフルな状態」と呼びます。
この状態では、人は柔軟性と創造性を発揮しやすく、大掃除中に生まれた多くのアイデアは、この状態がもたらした結果といえます。
行動科学
整理整頓された環境が人々の行動を改善し、ストレスを軽減しながら新しい可能性を引き出すという行動科学の原則が、まさにこの大掃除で発揮されました。
チームビルディング心理学
協同作業がもたらす連帯感と心理的安全性が、メンバー全員の積極的なアイデアの共有に繋がりました。
清掃を超えて広がる未来
掃除は単なる片付けの域を超え、職場やチームの未来を創造する活動です。
新しい年を迎えた今、「楽しい清掃」を取り入れることで、職場だけでなく個人の成長にも繋がる機会を作りましょう。
あなたの職場にも、きっと新しいアイデアや可能性が眠っています。
それを一緒に発見し、未来への一歩を踏み出してみませんか?
アイデアを導く掃除のやり方
新5S思考術の実践
心理学的視点からの掃除の効果
「気付き」がなければ掃除じゃない!
掃除はただの作業ではなく、発見と成長の場です。
日常に取り入れることで、職場全体が活気づき、共通の目標を達成する喜びを共有することができます。
この大掃除で得た知見を、新しいプロジェクトや日々の活動に活かしていくことで、より良い未来が待っています。
今年一年を清々しい気持ちでスタートさせましょう。
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坂田 和則(サカタ カズノリ) マネジメントコンサルティング2部 部長 改善ファシリテーター・マスタートレーナー
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