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専門家コラム

「人が育つ現場」をどう復活させるのか

若手が育ちにくい、ミドルの負担が大きい、ベテランのやる気が上がらない……。企業の人材育成における課題は、組織改革ですべて解決ということはありえません。「人が育つ現場」を復活させる手立てはあるのでしょうか。
 

人材育成の中心はOJT

企業における人材育成の中心がOJT(On the Job Training)であることに異論を唱える人は少ないでしょう。米国のコンサルティング会社・ロミンガー社が、「人が育つ上でどんな出来事が有益であったか」を調査したところ、経験70%、薫陶20%、研修10%といった結果が導き出されました。(※1)これら3つのうち、経験と薫陶がOJTの構成要素であるとするならば、人材育成の90%はOJTを通じてなされるという解釈が成り立つのです。
 

OJTの担い手は先輩社員や直属上司

では、企業の現場でOJTがどのように実践されているかといえば、若い人を指導する役割が、先輩社員や直属上司(チームリーダー、主任、係長)といったミドル層に委ねられているケースが多いのです。若いうちから指導経験を積むことが、将来のリーダーシップ発揮につながるという側面もありますが、ミドル層の方がたは第一線現場で最大の成果を上げることが求められており、それに加えてOJTの全責任を負わせるのは少々酷ではないでしょうか。
 

ミドル層とベテランの役割分担

では、組織の中でOJTは誰が担えばいいのか? その問いに対する答えを見つけるために、OJTを二つの機能――実務遂行力を高めるためのスキルや知識を付与する機能と、その会社の伝統や社員としてのあり方を継承する機能――に分けて考えてみましょう。そして、ミドル層にはスキル・知識教育に限定したOJTを担わせ、継承教育に関するOJTは、経験豊富なベテラン社員が担うというように、明確な役割分担を行なうのです。

このことにより、ミドル層の負担が軽減されるとともに、ベテランの経験や知恵が次世代に継承され、人材育成の精度が高まることでしょう。またベテランも、育成機能を担うことで自身の存在意義を再確認することができ、やりがいとやる気を維持することができるでしょう。
 

フラット型組織の功罪

バブル崩壊以降、多くの企業が組織の見直しを図り、「スピーディな意思決定」や「トップと現場の距離の短縮化」を目的としてフラット型組織への変革に踏み切りました。

A社(社員数4万人)では数年前に、「グループ制」が導入され、組織のフラット化が図られました。この改革によって、一つのグループは一人の「グループマネジャー」がマネジメント責任を負い、それ以外の人々は全員肩書きのない、「メンバー」としてそれぞれの職務に専念することになりました。その結果、当初のねらい通りマネジメントの効率が上がり生産性が上昇したのですが、その一方で組織の人材育成機能が著しく低下し、若い人々が育たなくなるという予期せぬ事態に陥ったそうです。
 

人材育成の意識を育みやすいピラミッド型組織

以前のピラミッド型組織では、意思決定に時間がかかるなど多くの弊害があったものの、部長は部のメンバーを、課長は課のメンバーを、係長・主任は自分より若い部下・後輩を育てるという意識がありました。また、若いメンバーも早く主任になるためにがんばろう、主任になったら係長を目指し、そしてさらには課長・部長を目指そうというように、努力する目標が細かくマイルストーンとして設定されていたので、各人のキャリア設計が描きやすかったという側面がありました。
 

ベテランが人材育成の役割を担うチームリーダー制度

確かに、従来のピラミッド型組織のままでは変化の激しい時代を生き抜いていくことは困難でしょう。しかしピラミッド型組織には、「育てる側」にも「育てられる側」にも、人材育成への関心が高い、良き風土が醸成されやすかったことも事実です。

前述のA社では、グループ制を維持しつつも、人材育成の役割を担った「チームリーダー」という新たな職位を創設し現場のベテラン社員を任命して、もう一度ピラミッド型組織の時代の「人が育つ現場」を復活させようと挑戦し始めています。
 

 人材育成に対する「意識」の重要性

この事例が示すように、どんな組織にも一長一短があり、完璧なものなどないのです。特に人材育成に関しては、こんな組織を作れば勝手に人が育つということはありえません。ある経営者は、「人も組織も生き物であるから、常に『育てる意識』を持って正面から真向かっていかないとすぐに腐ってしまう」と述べ、人材育成に対する「意識」の重要性を指摘しています。

変化の激しい経営環境のもと、今後も各企業でさまざまな組織改変が起こるでしょう。しかし、組織構造がどんなに変わっても、人を育てることへの意識と情熱をもち続ける社員をどれだけ輩出し続けることができるか。難しい命題ではありますが、このことの成否が今後の企業の盛衰を左右するといっても過言ではないでしょう。


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コラム執筆者
的場正晃
的場正晃(マトバマサアキ)
PHP研究所 研修企画部長
使命感を共有し、全員が活躍できる組織へ
松下幸之助の経営観・人間観をベースにした研修プログラムにより、強い個と組織づくりを同時に実現します。
得意分野 モチベーション・組織活性化、キャリア開発、リーダーシップ、マネジメント、コーチング・ファシリテーション
対応エリア 全国
所在地 京都市南区

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