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パーパス・MVVをベースにした企業文化の形成

パーパス・MVVをベースにした企業文化の形成/人事ポートフォリオの策定と数値としての目標設定


パーパス・MVVをベースにした企業文化の形成

パーパスとは、自社の固有技術と市場(マーケット)との接点であり、社会に対する自社の存在意義を表しています。

パーパスを考える上でポイントは2つあります。1点目は、自社のノウハウや技術がいくら優れていても、市場や顧客が求めていなければ、存在意義とは言えないこと。言い換えると、市場や顧客のニーズがあっても、それを満たす固有技術がなければ存在意義とは言えません。

2点目は、社会に対する価値発揮が求められていることです。コロナ禍においてニューノーマルが常態化する中、ライフスタイルの変容やゲームチェンジャーとなるライバル企業の出現、市場そのものが消滅する分野も出ています。そうした中、企業は時代に合わせてパーパスを再定義すべき時期を迎えています。

パーパスの再定義が必要とされる背景は2つあります。1つは、ESGやSDGs、環境対応といった企業の社会的責任への要請が高まっていること。もう1つは、社内の価値観の統一です。

人材の多様性が高まる中、個々のベクトルをそろえて組織・チーム力を発揮するにはパーパスが必要ですし、採用面でもパーパスを発信することで価値観に共感する人材が集まりやすくなります。そのようにパーパスに共感する人材が増えると企業理念の実現に向けた推進力が高まっていきます。

次に、パーパスをデザインするポイントは3つあります。

1つ目は、パーパス・MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を通し、企業理念を戦略まで落とし込むこと。パーパスを策定しても企業の行動基準や個人の行動基準に落とし込まれていなければ社内に浸透しません。

パーパスやミッションを通して、経営理念をビジョン、バリュー、さらには個人のバリューまで一気通貫で展開すると、社内のベクトルがそろって全社員が同じ目標に向かって進む組織になります。

2つ目は、エンゲージメントの高い自律・自走する組織づくり。パーパス経営の実現によって価値観を共有した組織は、自律・自走できるエンゲージメントの高い組織になります。

3つ目は、パーパス・MVVの共有に向けた社内への浸透と社外への発信。トップメッセージとして社内にパーパスを発信し、パーパス経営の推進度を測る明確な数値基準(KPI:重要業績評価指標)を設定しながらフィードバックや改善案を展開していく。また、ステークホルダーとの理解と共感も重要です。価値観の共有はインナーブランディング、アウターブランディングの向上につながります。

事例企業を紹介します。ユニ・チャームにおいては、「ユニ・チャームウェイ」としてパーパス・MVV を展開しています。MVV にこれまでの企業文化の根底にあった社是や社員行動原則、企業行動原則、3つの DNA などを反映・連動させている点で、パーパス経営の優れたモデル事例といえます。


人事ポートフォリオの策定と数値としての目標設定

人的資本経営とは、人材を資本と捉え、その価値を最大限に引き出して中長期的な企業価値向上につなげる経営を指します。価値の最大化で重要なのは、経営戦略と適合する組織・人事戦略です。

具体的には人材ポートフォリオの構築やイノベーション・付加価値を生み出す人材の確保と育成、組織デザインなどが挙げられますが、経営戦略と連動した組織や人事戦略を実現するには、具体的な数値目標となる人事KPI(重要業績評価指標)の設計が欠かせません。

人事KPI設計の基本コンセプトとして、国際規格である「ISO30414」や「人材版伊藤レポート」「コーポレートガバナンス・コード」は押さえておくべきでしょう。

ISO30414は多様性やエンゲージメントを含む11領域58項目で構成されています。人材版伊藤レポートは日本企業に即した内容になっており、(1)経営戦略と人事戦略の連動、(2)目指すべきビジネスモデルや経営戦略と現状の人材や人事戦略とのギャップの定量把握、(3)企業文化への定着という3つの視点が得られます。

また、2021年6月にコーポレートガバナンス・コードが改訂され、上場企業に対して人的資本開示が義務化されました。今後は非上場であっても求められるポイントになると予想されます。

次に、人事KPI設計のポイントを3つ挙げておきます。

1つ目は、「エンゲージメント」。人的資本経営を推進する上で必ず押さえるべき指標であり、仕事エンゲージメント、組織エンゲージメント、カルチャーの3つの要素があります。

2つ目は、「組織・ジョブ変革」。組織変革KPIには総人件費や中長期人員計画といった人事戦略の実現を目指す指標などがあります。ジョブ変革KPIではプロフェッショナル人材数や中途採用比率など人材ビジョン実現に向けた目標数値を設計します。また、DE&I(ダイバーシティー・エクイティー&インクルージョン) KPIは多様な人材が集まる組織において不可欠な指標といえます。

3つ目は「採用・育成と後継者育成」。採用・育成では中長期人員計画に基づく採用計画達成率や1人当たり採用コスト、プロフェッショナル人材、戦略リーダー人材の獲得数や育成投資などが挙げられます。また、後継者育成では等級別プール人材の充足度や重要ポジションの後継者準備率などがあります。

※本コラムは竹内が、タナベコンサルティングの経営者・人事部門のためのHR情報サイト、TCG reviewにて連載している記事を転載したものです。


【コンサルタント紹介】
株式会社タナベコンサルティング
取締役 HRコンサルティング事業部担当
竹内 建一郎

大手メーカーにて、設計・開発業務を中心とする商品開発に携わり、その後、当社へ入社。企業再建から成長戦略策定まで、200社以上のコンサルティングに携わり、企業の成長発展に向け多くの実績を挙げている。経営的視点による中期~長期ビジョン実現に向けた幅広いコンサルティングを展開。企業再建から、成長戦略策定まで、戦略を現場に落とし込む実践的なコンサルティングで高い評価を得ている。

主な実績
・中堅建設業・製造業(上場企業)/中期ビジョン策定
・製造業(鉄鋼業)/人事制度再構築コンサルティング
・中堅建設業・製造業(上場企業)/ジュニアボードコンサルティング
・中堅・大手・上場企業/次世代経営幹部研修

  • 経営戦略・経営管理
  • モチベーション・組織活性化
  • 人材採用
  • 人事考課・目標管理
  • キャリア開発

創業60年以上 約200業種 15,000社のコンサルティング実績
企業を救い、元気にする。皆様に提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

強い組織を実現する最適な人づくりを。
企業において最も大切な人的資源。どのように育て、どのように活性化させていくべきなのか。
企業の特色や風土、文化に合わせ、組織における人材育成、人材活躍に関わる課題をトータルで解決します。

タナベコンサルティング HRコンサルティング事業部(タナベコンサルティング コンサルティングジギョウブ) コンサルタント

タナベコンサルティング HRコンサルティング事業部
対応エリア 全国
所在地 大阪市淀川区

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