人材戦略通し企業価値創造(第95期 人事部長クラブ4月例会)
日本生産性本部は2023年4月28日、第95期「人事部長クラブ」の4月例会を都内で開催(オンライン併用)した。当日は「人材戦略を通して持続的な企業価値を創造する~三井化学グループの人的資本経営の実践と開示戦略」をテーマに辻拓己・三井化学グローバル人材部タレントマネジメント&GPAグループリーダーが講演した。
三井化学では、2016年度に長期経営計画「VISION2025」の策定とともに、事業支援戦略の一環として、人材戦略を初めて策定し、人材戦略上の強化の方向性を明確化した。2021年度に策定した「VISION2030」と連動した人材戦略では、1.多様性に富む経営者候補の戦略的獲得・育成・リテンション、
2.〝ありたい事業ポートフォリオ〟に連動した人材ポートフォリオのデザイン、
3.自主・自律・協働の体現を通したエンゲージメントの向上等
を課題として掲げ、グループ・グローバルにおける変革推進を強化している。
これら3つの課題に対する具体的な取り組みについて、 辻氏は、1については、「経営者候補多様化率(経営者候補における女性・外国籍・中途採用比率)」と「後継者候補準備率」を開示し、「多様性確保」及び「経営者候補パイプライン」の実効性を「見える化」していると述べた。CXO・本部長を含む後継者計画を策定する体系の中心に「キータレントマネジメント」を位置付け、グループ・グローバル共通の仕組みとして運用していることや、将来の三井化学本体における事業部長レベルになり得る人材を「キータレント」として選抜し、その中から、全社人材育成委員会において、「経営者候補(本部長レベル)」を選抜して、候補ごとに個別育成計画の策定や、アセスメント、育成機会の創出、戦略的配置などを実行していることも説明した。
2については、事業ポートフォリオ変革に必要な、多様な価値観・バックグラウンドを持つ人材の採用力(エンプロイヤーブランディング)及び当該人材が活躍し得る企業風土の要否について説明するため、外部採用・幹部ポジション登用率と離職率を開示していることや、企業変革に必要な、ファンダメンタルなスキルであるデジタルリテラシー向上を実現するため、データサイエンティストの外部採用だけでは無く、レベル分けした「DX人材要件」に基づき、学習プログラムの全社展開を進めていることなどを紹介した。
3については、「エンゲージメント要因スコア」として、グループ内において、共通して高い数値であった「権限委譲・自律性」を、自社の強みとして特定し、当該スコアの維持・向上につながる取り組みを行っていることや、高い目標にチャレンジした社員が適正に報われるために、評価・報酬制度の改定等に取り組んできたことなどにふれた。
今年の2月にはグループ統合型人材プラットフォームの構築を完了させた。各社ばらばらだったグループ内の組織・人材情報・人事業務プロセスをグループ一元管理することで、人的資本に関する優先課題の特定と、それに基づく投資配分をより戦略的に進めることができる。 氏は、「全グループ従業員(約2万人)が、一つの組織図となっていることが大きな特徴だ。グループ内で職務と従業員のマッチング機会創出にもなる。また、人と人とのコミュニケーションの生産性も高くなり、人材戦略全体の底上げ効果が期待できる」と指摘した。
今後の課題としては、「人材ポートフォリオの質に関する解像度」(成長戦略に基づくリスキリング領域の特定)、「挑戦を促進・モニタリングする仕組みづくり」、「対話(エンゲージメント)へのさらなる投資」(多様な社員一人ひとりとの対話を前提とした包摂的タレントマネジメント)の3つを挙げた。
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経営コンサルティングの対象となる経営組織の特質・現状をトータルに調査・分析することにより、問題点を抽出・整理し、激変する経営環境に対応できる経営革新の方策を提示し、これを実現するために最適のマネジメント手法の導入・定着を図ります。
日本生産性本部(ニホンセイサンセイホンブ) コンサルティング部
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