人事変革を成功させる五位一体のフレームワーク (後編)
「新しい人事制度を導入しました!」 「グローバルで人事システムを導入しました!」 「キャリア自律推進のために99個施策をはじめました!!」など、人事領域でさまざまな取り組み事例をうかがうのですが、本来ねらっていたとおりの効果が得られているかを質問すると、達成できたことのかわりに「ミチナカバ」という言葉が返ってくることが少なくありません。
言葉通り道半ばであれば問題ないかもしれないですが、 (制度を導入するなどの) 変革を終えたはずなのに効果創出の兆しが見えないとなると問題です。「ミチナカバ」ではなく、変革に失敗していることに気づいていない/気づきたくないだけなのかもしれません。本コラムでは、人事変革を成功させるための五位一体のフレームワークというものを紹介します。
(本稿は後編です。)
■ITシステム
ITシステムは経営基盤とは切り離せないものとなりました。業務を効率的にまわすためにも、重要な意思決定のためのデータを管理したり分析したりするためにも、ITシステムなしには実現できません。
かつてはITシステムは変革の下流にあるものと考えられていました。上流で制度やプロセスの設計をして、その設計にあったものを下流でITシステムとして構築するという考え方です。自社独自の給与計算ルールをシステムで対応するという場合はこのような考え方が向いているかもしれません。しかし、昨今は人事領域のITシステム製品自体が製品思想や「こう活用してほしい」というベストプラクティスプロセスをもっていることが多くなっており、早い段階からシステムの活用を検討いただく方が効果を得やすくなっています。ITシステムの思想に合わせるために人事制度を見直すという例もあります。
人事部門においては、「制度:上流、ITシステム;下流」と暗黙の序列がついていることがあり、従事している方の等級にも差をつけている場合があります。まずは、制度とITシステムに序列をつけず、どちらも同じく重要なことと認識いただくことが重要です。
■データ
ITシステムとデータはひとくくりにされることがあるのですが、分けて考えることが重要です。ITシステムを使うということはデータ入力・データ管理・データ出力などが行われることでもあるので、ひとくくりにしたくなるのもわからなくはないですが、ITシステム導入するだけではデータを有効活用することはできません。
例えば、人事管理・給与計算の業務処理にシステムを活用していると、入退社や報酬額のようなデータは正しく管理されているかもしれませんが、給与計算で使用しないデータは、データが古い、不正確、欠落している、そもそも取得していないなどの理由で、使えるデータが非常に限られている場合があります。
人材データベースでグループ・グローバルの人材データを一元管理しているという場合においても、各地・各社のデータの定義や品質がばらばらであれば、一か所に集めたところで横ぐしで活用することは困難です。ごみ溜めのようなデータベースに毎月こつこつデータを集めている例を見ると悲しくなります。
また、データを活用するためには、だれがどのような目的でどう使うかなど、できる限り具体的なシナリオをもつことがのぞましいです。「なんとなくあったらいいかも」という思いつきアイディアは実際に使われないことが多いです。具体的なシナリオがあれば、そのためにはどのようなデータが必要でどのような定義にするか、グループでどこまで標準化すべきか、など価値のあるデータづくりができます。
■人 (意識・行動)
変革の仕組みが整っても社員が動いてくれなければ意味がありません。また、変革の意義を理解していなければ、仮に動いたとしても"やらされ感"があったり、何のためにしているかよくわからない、という残念な事態になりかねません。この意識改革については、以下5つのポイントをおさえていただくことが重要です。
1. トップの理解
- トップが理解したうえで、トップメッセージを発信
- 機能軸ラインで一貫性を確保する
2. 巻き込み
- ビジネスラインを巻き込み、自分事として参画させる
- 誰もが変革を語れるようにする
3. ギャップの見なし方
- ギャップは変わるべき部分に気づけたと捉える
- 不具合は改善すればよい
4. 例外
- 例外は最終手段とする
- 力関係や不幸話に負けずに貫く
5. 慣れ
- “慣れ”の力を利用して、新しい”あたり前”をつくる
- サービスレベルでなく、サービス満足度を重視
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以上、「北極星・戦略」と、「組織」「プロセス・制度」「システム」「データ」「人(意識・行動)」の5つの要素で変革を進める、五位一体の変革のフレームワークの紹介をさせていただきました。いかがでしたでしょうか。みなさまの人事変革の参考となれば幸いです。
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人事変革のエキスパート
コンサルファーム、事業会社を経た経験・視点から、現職SAP社の強みであるHRテクノロジーをはじめ、人事戦略、HRオペレーティングモデル、HRトランスフォーメーションなどの助言が可能です。
籔本 レオ(ヤブモト レオ) HRバリューアドバイザリーディレクター
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