ダブルメジャー
ダブルメジャーとは?
「ダブルメジャー」(double major)とは、大学で複数の異なる専攻分野を同時に主専攻(メジャー)として学ぶこと、および、そうした学び方を可能にする教育制度を言います。日本語では「二重専攻」「複数専攻」などと呼ばれます。異なる領域にまたがって深い知見を身につけることにより、広い視野や柔軟な発想を養うという観点から、欧米の大学教育ではごく一般的なシステムですが、日本での導入はまだ一部に限られています。ちなみに、複数の大学・学部で別個の学問分野を学び、それぞれの学位を取得することを「ダブルディグリー」(double degree)といいます。これに対し、「ダブルメジャー」の本来の定義は、一つの学部で複数の異なる専攻分野を履修することにあり、必ずしも複数の学位が得られるわけではありません。
異分野に通じたイノベーション人材を輩出
欧米では当たり前のシステムだが、日本では……
27歳の若さで、理論物理学者から楽天の最年少執行役員へと転身した北川拓也さんは、灘中学・灘高校から国内の大学を経由せず、ハーバード大学に現役で進学。数学と物理学という二つの異なる学問分野を専攻し、最優等の成績で卒業しました。いわゆる「ダブルメジャー」の経歴の持ち主です。
分野をまたいで、複数の異なる学問を同時に主専攻として修める「ダブルメジャー」や、主専攻のほかに「マイナー」と呼ばれる副専攻の科目も取って体系的に学ぶ「メジャー・マイナー」(副専攻制度)は、欧米の大学ではごく当たり前のシステムです。しかし硬直した日本の教育制度の下では、最近まで「ダブルメジャー」はおろか、マイナーを認める大学さえほとんど見当たらない状況が続いていました。
2年前には、研究人材の多様化に乗り出したNECが、博士号を有する研究者の割合を従来比1割増の40%に増やすにあたり、とくに外国人と「ダブルメジャー」の履修者を意識的に採用する、と発表して注目を集めました(日刊工業新聞2015年7月28日付)。これは、「ダブルメジャー」を修めた研究人材を国内で確保しようとすると、対象がほぼ外国人に限られてしまうからで、そうした採用環境は現在もあまり変わっていません。
イノベーション研究の始祖として知られる経済学者のシュンペーターは、「馬車を何台つなげても汽車にはならない」という有名な比喩を用い、「イノベーションは“新結合”。新しい結びつきから生まれる非連続な変化である」と論じています。異分野をまたぐ深い知見を身につけることで、それらが通常では得られない化学反応を引き起こし、革新的な発想の源泉になるのであれば、「ダブルメジャー」に象徴される多様性・柔軟性に富む教育システムのメリットは計り知れません。アメリカが“イノベーション先進国”であり続けるゆえんといってもいいでしょう。
国内の大学においても、国際基督教大学や立命館大学、上智大学、桜美林大学など、少しずつですが、「ダブルメジャー」に類する制度の導入事例が増えてきました。企業の人材戦略を考える上でも、今後の動向に注視すべきテーマでしょう。
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