コンフリクト・マネジメント
コンフリクト・マネジメントとは?
コンフリクト(conflict)とは、「意見や利害の衝突、葛藤、対立」といった概念を意味する言葉。組織運営においてネガティブに評価されがちなこうした状況を、組織の活性化や成長の機会と捉え、積極的に受け入れて問題解決を図ろうとする考え方を「コンフリクト・マネジメント(conflict management)」と呼びます。コンフリクトを戦略的に活用することで、組織内のコミュニケーションや人間関係が強固になったり、異なる意見を集約する過程で新しいアイデアが生まれたりするなど、組織にとって多くのメリットが期待できます。
「ゼロ・サム」から「Win-Win」へ
衝突や対立を活用して組織を強くする方法
年齢・性別の差異はもちろん、勤務形態や就労経験の異なるメンバーが同じ職場で働くようになり、働く文化の多様化が進む一方で、個々のビジネス課題は高度化・複雑化し、組織全体の利害の最適化や合意形成が難しくなっています。激しい競争を勝ち抜くため、企業が大胆な改革に向かおうとすれば、そうした動きを脅威とみなし、組織内で抵抗する動きも出てくるでしょう。そうした環境変化をうけて、現場では日々、さまざまな対立や葛藤が生じています。コンフリクトの状況下で、自らの怒りの感情をうまくコントロールできない人も増えています。2001年に個別労働紛争解決制度がスタートして以来、利用件数が増え続けているというデータの背景には、多くの組織が、トラブルの火種になるようなコンフリクトを抱えながら、それを主体的に解決できない現状があるのかもしれません。
しかし、コンフリクトに正しく対処する術を備えていれば、意見の衝突や感情的な対立を恐れる必要はなくなり、むしろそこに多くのメリットを見出すことができます。たとえば、抵抗が生じることはその改革が企業にとって重要である証として、組織を動機づけることになります。対立する当事者同士が本音を率直にぶつけあうことで相互理解を深めたり、風通しのいい職場の雰囲気を醸成したり、議論の幅を広げ意思決定の質を高めたりするきっかけにもなるでしょう。
上司や部下との衝突であれ、他部門との軋轢であれ、人がコンフリクトに直面したときにとる態度は次の五つに分類されます。
A : 競争 ―― 自己主張・非協力。パワーや権威で圧倒し、相手に自分の意見を強制する
B : 受容 ―― 非自己主張・協力。自分の利益や要求より相手のそれを優先して解決する
C : 妥協 ―― 双方が要求水準を下げて、自分の利益・主張の部分的な実現を目指す
D : 回避 ―― 非自己主張・非協力。対立する状況そのものを回避し、解決を先送りする
E : 協調 ―― 自己主張・協力。対立点を明確にしつつ、お互いの利益を尊重する建設的な議論で解決する
コンフリクト・マネジメントにおけるコンフリクトの解消とは、対立する双方の関係をいわゆる「ゼロ・サム」(一方が勝てば必ず他方が負ける関係)の状態から、双方が勝つ「Win-Win」の状態へ移行させることにほかなりません。相手と争うのではなく、対立を安易に避けるのでもなく、上記の五つのスタンスのうち、Eの「協調」のアプローチをもって問題解決にあたるべきなのです。コンフリクトを戦略的・効果的にあつかえることは、健全で強固な組織の必要条件といってもいいでしょう。
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