なぜなぜ分析
なぜなぜ分析とは?
「なぜなぜ分析」とは、「なぜ?」という問いを論理的に積み重ねることによって問題やトラブルが発生した原因を掘り下げ、有効な対策を導き出す分析スキルのことです。もともとTQM(総合的品質管理)の一環として自動車産業などの生産現場で実践されていましたが、近年は顧客の声からニーズを探るカスタマーセンターや業務改革を手がけるシステム関連など、製造部門以外の分野や業種にも急速に浸透しています。
改善・改革活動から顧客の苦情対応まで
「なぜ」を論理的に重ねて問題を深堀り
製品の不良や故障、クレームなどのトラブルに対して、「なぜそれが発生したのか」「なぜミスに気がつかなかったのか」といった問いを繰り返すことで、問題の真の原因を個人の能力や行動に帰すのではなく、システムの中に探し求め、作業プロセスや作業環境の改善につなげるのが、なぜなぜ分析の特徴です。トヨタグループの生産現場では以前から「なぜなぜ5回」と呼んで、ほぼ同様の手法に取り組んでいました。「なぜ?を5回繰り返して問題を掘り下げれば、根本原因に突き当たる」というもので、製造業では広く知られた考え方です。
菓子メーカーのカルビーはこのトヨタ流改善活動にヒントを得て、お客様相談室の電話対応の質を高めることに成功しました。VOC(顧客の声)に潜む要望や改良のヒントを引き出すために、顧客がどんな動機や理由で問い合わせの電話をかけてくるのかを、なぜなぜ分析で掘り下げていったのです。たとえばアレルギー物質の有無を問い合わせてくるのはなぜか。「商品を食べてしまったから」「食べていないが、不安を感じたから」などの理由が考えられます。後者だとすると、なぜ食べていないのに不安を感じたのか。これには「パッケージのアレルギー物質の記載に気づかなかったから」「気づいてはいたが、内容を理解できなかったから」といった事情が想定されます。
同社の相談室では、こうして問題を掘り下げ、原因を特定するための質問文例も作成して、電話対応に活かしました。その結果、問い合わせの多くは、ある地域限定販売のスナック菓子の個別包装品を旅行のお土産として手渡された人たちからで、「個別包装にアレルギー物質の情報が記載されていなかった」という重要な事実が明らかになったのです。
新日鉱ホールディングスの事業会社である日鉱金属の生産現場も、なぜなぜ分析による問題掘り下げの強化に取り組んでいます。茨城県日立市の白銀工場では、2005年から従業員に対してなぜなぜ分析の“通信教育”を実施。職場全体で改善のスピードが上がるなど、着実に成果が出始めています。
しかし、なぜなぜ分析で正しく問題を掘り下げる作業は、簡単ではありません。ある程度の経験やトレーニングが必要で、時間もかかります。カルビーや日鉱金属でなぜなぜ分析を指導したコンサルタントの小倉仁志氏によると、初心者がいきなり「なぜ」を繰り返そうとしても、なかなか的確な「なぜ」を出せず、論理の飛躍や筋の通らない掘り下げ方になってしまう人がほとんどだといいます。
たとえば「花びんが割れた」理由を、「窓が開いていたから」とするのは論理の飛躍。文章の前後を逆にすると、「窓が開いていたから花びんが割れた」となり、筋が通っていないのがわかると小倉氏は指摘します。「テーブルから花びんが落ちたから」と掘り下げられるようになればOK。こうして論理に注意しながら「なぜ」を積み重ねていくのがなぜなぜ分析であり、ただ思いつくままに「なぜ」を挙げればいいというものではありません。
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