ワーク・エンゲイジメント
ワーク・エンゲイジメントとは?
「ワーク・エンゲイジメント」とは、従業員の心の健康度を示す概念のひとつで、仕事に対して「熱意」(仕事に誇りややりがいを感じている)、「没頭」(仕事に夢中になり集中して取り組んでいる)、「活力」(仕事に積極的に取り組んでいる)の三つが揃って充実している心理状態を指します。ワーク・エンゲイジメントの実現は、組織におけるメンタルヘルス対策が目指すべき新しいテーマとして注目されています。
人も組織も健康に――メンタルヘルスの新指標
活力ある生産性の高い職場づくりを目指して
企業のメンタルヘルス対策は事業者の社会的責任であり、活力ある職場づくりの第一歩です。すべての組織において、全従業員を対象に、心の健康が確保されなければなりません。一方で少子高齢化に伴い、労働者人口の減少が進むなか、企業にはより多様な労働力の活用と、労働力の“質”の向上も求められています。企業のメンタルヘルス対策は、不調者を対象とした医療や福祉、福利厚生という視点だけでなく、従業員の健康度の増進による生産性の高い職場づくりを目指す視点も求められるようになってきているのです。メンタルヘルスを含めた従業員の“こころ”の問題への対応は、いまや企業の命運を左右する重要な経営課題のひとつといえます。こうしたなか、“人も組織も健康にする”メンタルヘルスの新しいコンセプトとして注目されているのが、「ワーク・エンゲイジメント」です。
ワーク・エンゲイジメントは、オランダ・ユトレヒト大学のショーフェリ(Wilmar B.Schaufeli)教授によって、「バーンアウト」(燃え尽き症候群)の対概念として提唱されました。バーンアウトすると、疲弊し、仕事への熱意が枯渇するのに対して、ワーク・エンゲイジメントの高い従業員は、意欲と活力にあふれ、仕事に積極的に取り組むという特徴を示します。一見、「ワーカホリック」の状態と似ているようですが、両者には仕事に対する考え方や動機の点で大きな違いがあります。ワーク・エンゲイジメントの高い人が仕事に前向きなのは、その仕事が「好きだから」「楽しいから」。一方、ワーカホリックの人は「忙しく働いていないと不安だから」、仕事にのめり込まざるを得ないのです。
これまでの研究で、従業員のワーク・エンゲイジメントが一人ひとりのパフォーマンスを高め、組織の活性化や生産性向上に大きく寄与することが明らかになりました。飲食チェーン店やホテル、レストランなどにおいては、従業員のワーク・エンゲイジメントが高い店舗、施設ほど売上げが伸び、顧客の満足度や再利用の意向も高まるという調査結果が得られています。このようにワーク・エンゲイジメントは、単にメンタルヘルスが良好というだけでなく、仕事への活力や積極性、満足感などを反映する尺度ですから、それを向上させるためには産業保健と人事労務が協調してあたらなければなりません。
ワーク・エンゲイジメントの測定には、前出のショーフェリ(Wilmar B.Schaufeli)教授らが考案した「ユトレヒト ワーク・エンゲイジメント尺度」が用いられます。活力・熱意・没頭の三つの要因に関する17項目の質問から成る調査票で、日本語版も東京大学大学院医学系研究科・医学部 精神保健学分野の島津明人准教授らによって開発されています。
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