代替休暇制度
代替休暇制度とは?
2010年度から施行された改正労働基準法では、1ヵ月60時間を超える時間外労働に対する法定割増賃金率を現行の25%以上から上乗せして、50%以上に引き上げました。「代替休暇制度」とは、この上乗せ部分(25%)の割増賃金の支払いに代えて、有給の休暇を付与するしくみです。同制度を導入するためには、代替休暇の時間数の算定方法や休暇取得の単位、休暇取得日の決定方法などについて労使協定を締結する必要があります。
残業60時間超分は「お金」か「休み」か
時間単位の年次有給休暇と合算も可能
事業主の割増負担を重くした今回の労基法改正の趣旨は、企業に経済的プレッシャーをかけて、残業時間の削減、長時間勤務の改善を促すことにあります。しかし職種や業種によっては、単純に残業を減らせないケースもあります。厳しい経済情勢の下での残業代の支払い負担増大は、企業経営に致命的なダメージを与えかねません。残業代を有給休暇に振り替えることでコスト削減を図り、同時に従業員の有給休暇取得も促すのが「代替休暇制度」のねらいです。
時間外労働に対する一律25%増の割増賃金の支払いは、1947年の労基法制定時点から定着している使用者の法的義務です。したがって今回の法改正の焦点となる「月60時間を超える時間外労働」に対しても、現行の“1.25”の部分については金銭で支給しなければなりません。代替休暇の付与が許されるのは、1.25を1.5に引き上げるために上乗せされる“0.25”の部分。この上乗せ分をお金で受け取るか、休暇に代替するか、選択の権利は原則として従業員にあります。
代替休暇付与の対象となるのは上乗せ分の“0.25”の部分なので、月60時間を超える時間外労働が4時間のときに、上乗せ分の賃金が1時間分の休暇に代替される計算です。つまり、1日の所定労働時間が8時間の場合、1日分の代替休暇を取得するためには、月92時間の時間外労働(60時間を32時間オーバー)が必要ということになりますが、これは過労死認定基準に達するレベル。しかし法令では、まとまった休息の機会を確保する観点から、代替休暇の取得単位を「1日または半日」と定めています。
では、どうすればいいのでしょうか。今回の法改正では「時間単位での年次有給休暇の取得」が別途導入されました。代替休暇はこれと合算することもできるため、両制度を併せて活用すれば、半日または1日単位の休暇が取得しやすくなるのです。
しかし、トヨタ自動車労働組合では、「年次有給休暇に合算できるとはいえ、時間単位で取得する代替休暇は職場になじまない。工場などの生産ラインは休みがとれる部署とそうでない部署が出てきて、かえって不公平になる」として、代替休暇制度の導入を見送っています。会社側との協議を経て、50%の割増賃金を受け取ることで決着。トヨタ労組は「残業代というのは、働いた分きちんと賃金でもらうもの」との見解を示しています。
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