ラーニング・オーガニゼーション
ラーニング・オーガニゼーションとは?
日本語では「学習する組織」あるいは「学習型組織」といいます。所属するメンバーに自主的な学習を促し、その相互作用=“学び合い”を通じて、既存の組織文化や戦略の枠に縛られない新しい考え方や問題解決の手法をたえず生成。持続的に自己改革していく機能を備えた企業、団体などの組織を指します。従来の権威主義的な「管理する組織」の限界を克服するための、新しいチームワークのあり方を示す概念です。
変化に対応するための「学習する組織」
ルーツは80年代の強い日本企業にあり
昨今、経営環境の複雑化、ビジネスサイクルの短縮化によって、知識・技術の更新スピードが増し、組織あるいは社員個々が保有するスキルやノウハウの陳腐化が早まっています。企業の現場では、上司が部下に、培った仕事の経験知をそのまま指導・伝授できる時代は終わったともいわれます。かつて成功した考え方や経営手法では、日々新しく発生する問題を発見し、解決することはできません。仕事の効率を上げるために上司が部下を一方的に“管理”する、従来の「階層型組織」の限界といえるでしょう。
めまぐるしい変化に対応するために、「個々のメンバーの成長とともに組織も学習し、進化していく」のが、ラーニング・オーガニゼーションの特徴です。1990年以降に登場したマネジメント手法の多くは、大なり小なり、このラーニング・オーガニゼーションの思想をふまえて構築されています。
基本的概念を最初に提唱したのは、マサチューセッツ工科大学のピーター・M・センゲ教授(Peter Michael Senge)。1990年に『The Fifth Discipline』(邦題:『最強組織の法則』徳間書店)を出版したことで、世界中に広まりました。センゲ氏自身の定義によると、ラーニング・オーガニゼーションは「人々が継続的にその能力を広げ、望むものを創造したり、新しい考え方やより普遍的な考え方を育てたり、人々が互いに学びあうような場」「人々が強い意欲を持ち、コミュニケーションの方法を学びながらシステマティックなアプローチによって共通のビジョンの実現を目指すチーム組織」であり、その実現手段として、次の5つの構成技術(ディシプリン)の実践が求められます。
- システム思考(systems thinking): ビジネスにおける構造的相互作用を把握する力
- 自己マスタリー(personal mastery): メンバー一人ひとりが自己を高める意志を持つ
- メンタル・モデルの克服(mental models): 凝り固まったものの考え方を克服する
- 共有ビジョン(shared vision): 個人と組織のビジョンに整合性を持たせる
- チーム学習(team learning): 対話を行うスキルと場を養う
発表直後から欧米で大きな注目を集め、現在も研究と実践が世界規模で進められているラーニング・オーガニゼーションですが、日本での導入はそれほど多くありません。かつて日本には、QCサークルをはじめとする小集団活動のような、いわば自然発生的な「学習する組織」があり、日本企業の成長の基盤となっていました。明確に意識することはなくても、日本企業にはもともと「学ぶ文化」の土壌があったのです。いまなおそれが色濃く残っているために、あえてラーニング・オーガニゼーションというテーマを掲げて、組織変革に取り組む意義を感じられないのかもしれません。
80年代、欧米では、いかにして“国際競争力を持つ強い組織”をつくるかを追求する組織学習論が脚光を浴びていました。当時、世界市場を席巻していた日本企業の強み――とりわけ先述のQCサークルに代表される自己変革型の組織マネジメントに学び、それをアレンジして取り込むことが、じつは組織学習論の大きな狙いでした。90年に登場したラーニング・オーガニゼーションこそ、その最大の成果にほかなりません。
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