クオータ制
クオータ制とは?
クオータ(quota)とは、「割り当て、分配、分け前」の意味。もともとは政治における男女間格差を是正するための暫定的な方策で、議員・閣僚などの一定枠を両ジェンダーに割り当てる制度を指します。発祥地のノルウェーでは、一般企業に対してもこれを法制化。取締役会など経営中枢への女性進出に大きな効果を上げています。
女性にトップマネジメントへの道を開く
男性の家事・育児への参加と“表裏一体”
ノルウェーは、先進国において女性の社会進出が最も顕著な国の一つです。1978年に制定された同国の男女平等法は「公的機関が4名以上の構成員を置く委員会、執行委員会、審議会、評議員会などを任命または選任するときは、それぞれの性が構成員の40%以上選出されなければならない。4人以下の構成員を置く委員会においては、両性が選出されなければならない」(数値は88年に改正)と定めています。
さらに2003年に制定された会社法によって、政府系企業は04年から、一般上場企業は08年から、取締役会の構成員の少なくとも4割を、男性・女性それぞれに割り当てることが義務付けられました。このクオータ制には罰則規定が設けられていて、企業が守れない場合には、会社法が規定する他の条項違反と同じく、株式会社登録の取り消しという厳しい制裁が科されます。
2000年時点では、同国の上場企業における女性取締役の比率はわずか6.4%。それが、08年には45%近くにまで急増しました。この変革の原動力が、会社法に定められたクオータ制の導入だったことはいうまでもありません。組織の意思決定機関に参加する女性を増やそうという同国の取り組みは官から民へ、そして社会全体へと確実に広がり、世界的にも注目を集めています。
09年10月、ダイバーシティマネジメントに関するセミナーに招かれて来日したノルウェー経営者連盟シニア・エグゼクティブのカーリ・ミンゲ氏は、「社会が人口の50%を占める男性にのみ指導的立場を与えるなら、その社会は残り半分の人口の才能を無駄にしている、人間の持てる潜在能力を活用していないことになります。それは、ビジネスコミュニティーにとって、競争力を失っていくということです。才能のある人は、それに適した立場に就くべきです」と指摘しました。
ノルウェーはまた「女性の指導的立場への進出と男性の家事・育児への参画は表裏一体である」として、1993年から、育児休暇の一定期間を父親にも割り当てる「パパ・クオータ制」を導入しています。父親が割り当てられた分の育休をこなさないと、全体の育休期間が短くなったり、育休中の手当がカットされたり、権利が消滅してしまったりする制度です。同制度が導入されるまで同国の男性の育休取得率は数パーセント程度でしたが、現在では90%にも達し、出生率の増加という効果も上がっています。95年には隣国スウェーデンにも広がりました。スウェーデンの場合は、父親・母親にそれぞれ一定期間の育休を割り当て、双方に取得を義務付ける「パパ・ママ・クオータ制」をとっています。
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