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【ヨミ】サンキュウ

産休

産休とは?

産休制度は、出産前後に取得できる産前産後休業制度のことで、労働基準法で定められています。
 
出産する従業員の産前休業は、出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合は14週間前)から出産日まで、産後休暇は出産日の翌日からの8週間後まで取得できます。出生時育児休業(産後パパ育休)の場合は、子の出生後8週間以内に4週間まで取得できます。
 
産休の給付金や手当として出産育児一時金と出産手当金があり、社会保険料は労使共に支払いが免除されます。
 
企業人事の業務では、従業員が産休に入る前や出産後のタイミングで、産前産後休業取得者申出書・健康保険被扶養者異動届・給与所得者の扶養控除(異動)申告書の提出や代替要員の確保といったさまざまな手続きが必要です。

掲載日:2023/01/16

産休制度の概要

産休制度は、出産前に取得できる産前休業と、出産後に取得できる産後休業の2種類を定めた制度です。産休制度について定めた法律や、産休の対象者、休むことができる時期などの詳細を解説します。

産休について定めている法律

産休について定めている法律は労働基準法第65条です。労働基準法では、産前休業・産後休業の期間を明確に定めています。

(産前産後)
第六十五条 使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
(2) 使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。
(3) 使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。

このほかに育児・介護休業法第9条の2では、男性が出産前後に取得できる「出生時育児休業(産後パパ育休)」について定めています。

さらに、労働基準法第19条では、産前産後期間中とその後の30日間に解雇することを禁止しています。男女雇用機会均等法第9条では、妊娠、出産・産休などを理由に解雇や不利益な取り扱いをしてはならないとしているほか、育児・介護休業法第10条では、育休取得を理由とした解雇や不利益な扱いを禁じています。

産休制度の詳細。いつ、誰がどのくらい休める?

産休制度(産前、産後休業)の対象者や休むことができる期間などについて説明します。

産休の対象者

法律上は、産休の取得条件に雇用形態や就業期間は関係ありません。産休の対象者は、妊娠中の従業員すべてです。有期のパートやアルバイトなど雇用形態にかかわらず、妊娠していれば誰でも産休を取得する権利があります。

産休の期間(産前休業・産後休業・産後パパ育休)

産前休業の期間は、出産予定日の6週間前から出産日までです。ただし、多胎妊娠(双子以上の胎児がいる場合)は、請求すれば14週間前から認められます。妊娠34週目(多胎妊娠の場合は妊娠26週目)から産休を取得できることになります。産前休業は任意のため、取得する場合は従業員から申し出る必要があります。

労基法65条では出産日の翌日からの8週間で、法律上労働者に就業させることを禁止しています。ただし、従業員本人より申し出があり、医師が問題ないと認めた場合に限り、産後6週間後に職場へ復帰できます。

産後パパ育休は、子の出生後8週間以内に4週間まで取得できます。事前の申し出により2回まで分割することが可能ですが、分割取得の場合、事前申し出の際に2回分をまとめて申請しなければなりません。また、労使協定を締結しているケースに限り、従業員が個別に合意した範囲で、産後パパ育休中に働くことができます。

出産予定日より早くまたは遅く出産した場合

出産予定日より早く出産した場合、産前休業は前倒しの日数分短くなります。産後休業の開始日も早まりますが、産後休業を取得できる期間は変わりません。

出産予定日より遅れて出産した場合、産前休業は遅れた日数分長くなり、産後休業の開始日も遅れた日数分後ろ倒しになります。

産後パパ育休は子の出生後から取得可能となるため、実際の出生日に合わせて取得を開始できる日が決まります。

育児休業の概要と産休との違い

育児休業制度は、原則1歳未満の子を養育する労働者が、会社に申し出ることにより休業できる制度で、育児・介護休業法で定められています。育児休業は、申し出により子が1歳6ヵ月まで延長ができ、さらに、満2歳になるまでの再延長も可能です。育休と産休には、さまざまな点で違いがあります。

育休 産休
取得対象者 ・子の1歳の誕生日以降も勤続の意思がある
・子が1歳6ヵ月(2歳までの延長をする場合には
2歳)になる前日までに、雇用契約満了や雇用契約が
更新されないことが確実ではない
・妊娠中の従業員すべて
取得期間 ・原則子が満1歳になるまで
・保育園に入れないなどの特殊な事情がある場合は
子が1歳6ヵ月、さらに満2歳になるまで延長可能
・出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合は14週間前)
から出産日翌日より8週間(医師が認めた場合は
出産後6週間で就業可能)
取得回数 ・子が満1歳になるまで分割して2回まで取得可能
・特殊な事情がある場合は子が1歳半になるまでに
1回、満2歳になるまでに1回再取得可能
・産前休業および産後休業は連続して1回で取得
給付金の申請先 雇用保険(育児休業給付金) 勤務先の健康保険(出産手当金・出産育児一時金)
給付金の受給条件 ・一般被保険者または高年齢被保険者
・職場復帰前提の育児休業取得
・休業開始前の2年間で、賃金支払基礎日数が
11日以上ある月が12ヵ月以上ある(12ヵ月以上
ない場合は賃金支払の基礎となる労働時間数
80時間以上の完全月を1ヵ月として
カウントする措置あり)
・育児休業期間中1ヵ月ごとに、休業開始前の
1ヵ月あたりの賃金の8割以上の賃金が
支払われていない
・就業日数が支給単位期間ごとに10日(これを
超える場合は就業している時間が80時間)以下
・休業中に給料の支払いがない(給与の支払いが
あっても出産手当金より少ない場合は、
差額支給あり)
給付金の内容 給付額:休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67 %
(支給日数が181日以降は50%)

給付対象日数:育児休業取得期間(原則子が1歳に
なるまで、最大で子が2歳になるまで)
給付額(1日当たり):支給開始日以前12ヵ月間の
各標準報酬月額を平均した額÷30日×(2/3)

給付対象日数:出産日(出産が予定日より後になった
場合は、出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は
98日)から出産日の翌日以降56日までの範囲内
(出産が遅れた場合、出産予定日から出産日までの
日数分も給付される)

育休は、産休と比べて取得対象者や給付金の受給条件が産休より細かく決められています。また、分割取得や延長・再延長が認められている点も産休とは異なります。

産休の給付金や手当(従業員の給料補償)の額はどう計算する?

産休取得に伴う主な給付金は、出産育児一時金と出産手当金です。これらの給付金や、産休の手当や企業側の給料補償がどのように定められているのかを解説します。

出産育児一時金

出産育児一時金は、健康保険の被保険者およびその被扶養者が出産した際、子ども一人につき42万円を受け取ることができる制度です。ただし、産科医療補償制度に未加入の医療機関などで出産した場合は、40.8万円に減額されます。また、多胎妊娠で子どもが二人以上生まれた場合の金額は、上記の金額×人数分です。

たとえば、産科医療補償制度に未加入の医療機関で双子を出産した場合、出産育児一時金の受給額は以下の通りとなります。

40.8万円×2人=81.6万円

出産育児一時金を受け取る条件は、以下の通りです。

  • 被保険者または被扶養者が妊娠4ヵ月(85日)以上で出産(早産、死産、流産、人工妊娠中絶を含む)
  • 被保険者が、退職などによる資格喪失の日の前日まで被保険者期間が継続して1年以上あり、資格喪失日から6ヵ月以内に出産
  • 配偶者が出産育児一時金を受け取っていない(二重取りはできない)

二つ目の条件において、被保険者が夫で被扶養者が出産する場合は、出産育児一時金の受給対象外となるので注意が必要です。

出産手当金(産休の手当)

出産手当金は、出産により産休を取得した場合に、健康保険より支給される給付金です。一般的に「産休の手当」と表現する場合、出産手当金のことを指します。出産手当金の受給条件は以下の通りです。

  • 産休を取得している被保険者
  • 産休期間中給料の支払いがないか、支払いはあったが出産手当金より少額

産休期間中、その日受給できる出産手当金よりも多く給料が支払われていれば、その日は出産手当金の給付対象になりません。その日受給できる出産手当金よりも支払われた給料が少ない場合、その差額を受け取ることができます。出産手当金の1日当たりの給付金額は、以下の計算式で算出します。

出産手当金の1日当たりの給付金額の計算式

【出産手当金支給開始日以前に、健康保険の加入期間が12ヵ月以上ある場合】
標準報酬月の平均額=出産手当金支給開始日以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額

【出産手当金支給開始日以前に健康保険の加入期間が12ヵ月未満の場合】
標準報酬月の平均額=以下(1)(2)どちらか低い方の額
 (1)支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
 (2)当該年度の前年度9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額

上記で算出した標準報酬月の平均額÷30日×(2/3)=1日当たりの給付金額

出産手当金の受給期間は、出産日(出産が遅れた場合は出産予定日)より前の42日目(多胎妊娠の場合は98日目)から、出産日の翌日以降56日目までの間で会社を休んだ期間です。出産日が予定日より早まった場合と遅くなった場合の、出産手当金の計算例を以下に示します。

出産手当金の計算例

・以下の条件で計算
【出産予定日:12/9】
【産休取得:出産予定日42日前】
【標準報酬月の平均額:30万円】

・1日当たりの給付金額
30万円÷30日×(2/3)=6,667円
※30日で割った時点で10円単位で四捨五入し、2/3を乗じた時点で小数点第1位を四捨五入

・出産日:12/2の場合
産前休業日数35日+産後休業56日=91日分
91日分×6,667円=606,697円
※産前休業は出産日以前42日となりますが、10/29から休業したものとして計算

・出産日:12/28の場合
産前休業日数42日+出産予定日から遅くなった日数19日+産後休業56日=117日分
117日分×6,667円=780,039円

産休前に時短勤務をした場合の出産手当金受給額

産休前に時短勤務をして給与額が減少する場合、出産手当金の受給額も少なくなります。フルタイムの標準報酬月額が30万円、時短勤務の標準報酬月額が20万円と仮定し、産休に入る5ヵ月前から時短勤務にした場合の受給額の変化を計算すると、以下の通りです。

産休前に時短勤務をした場合の出産手当金の計算例

・以下の条件で計算
【出産予定日:12/9】
【産休取得:出産予定日42日前】
【フルタイムの標準報酬月額:30万円】
【時短勤務の標準報酬月額:20万円】

(30万円×7ヵ月+20万円×5ヵ月)÷12=標準報酬月額の平均額258,333円(小数点以下四捨五入なし)

・1日当たりの給付金額
258,333円÷30日×(2/3)=5,740円
※30日で割った時点で、10円単位で四捨五入し、2/3を乗じた時点で小数点第1位を四捨五入

・出産日:12/2の場合
91日分×5,740円=522,340円
※産前休業は出産日以前42日となりますが、10/29から休業したものとして計算

・出産日:12/28の場合
117日分×5,740円=671,580円

時短勤務の期間が長くなる分、出産手当金の受給額も少なくなります。

社会保険料の取り扱い

社会保険料(健康保険・厚生年金保険の保険料)は、産休・育休どちらも労使共に支払いが免除されます。免除を受けるには、会社から日本年金機構(事務センターまたは年金事務所)へ指定の書類を提出しなければなりません。免除期間中も保険料を支払ったものとして処理されるため、従業員が将来的に受け取ることができる厚生年金保険の金額は減額されません。

保険料の免除期間は、産休・育休の開始月から、終了予定日の翌日の属する月の前月(産休・育休終了予定日が月の末日の場合は産休・育休終了月)までとなります。育休の場合、開始月の取り扱いについて、同月の末日が育休期間中であることが要件でした。しかし法改正により、同月中に14日以上育休を取得した場合も免除されるようになりました。

企業側の給料補償

産休中における企業側の給料補償は、法律では特に定められていません。そのため、基本的に企業は就業規則で、産休や育休中の給料補償をどうするのかを定めています。産休や育休の期間中は給与を支払わず、従業員は健康保険の出産手当金や雇用保険の育児休業給付金を活用するのが一般的です。

企業人事がすべき産休の手続き

企業人事がすべき産休の手続きは以下の通りです。

  • 産前産後休業取得者申出書の提出
  • 健康保険被扶養者異動届の提出
  • 給与所得者の扶養控除(異動)申告書の提出
  • 代替要員の確保

産前産後休業取得者申出書は、産休を取得する従業員がいれば必ず提出します。健康保険被扶養者異動届の提出と給与所得者の扶養控除(異動)申告書の変更は、生まれた子が従業員の扶養になる場合のみ必要です。また、現場の状況に応じて、代替要員の確保も必要になる場合があります。中小企業であれば、代替要員の確保に両立支援等助成金(業務代替支援)を利用できます。

産前産後休業取得者申出書の提出

産休を取得する従業員がいる場合、まずは産前産後休業取得者申出書を日本年金機構に提出します。提出するタイミングは、産休中または産休終了日から起算して1ヵ月以内です。被保険者から妊娠の申し出があったときに本書類のフォーマットを渡し、産休に入るまでに提出を受けるようにするとスムーズです。フォーマットは、日本年金機構のサイトで入手できます。

出産予定日以外に従業員が出産した場合は、産前産後休業取得者変更(終了)届を日本年金機構に提出します。フォーマットは、産前産後休業取得者申出書と同様に、日本年金機構のサイトから入手します。

健康保険被扶養者異動届の提出

従業員が出産して、生まれた子を健康保険の被扶養者とする場合、日本年金機構へ健康保険被扶養者異動届を提出しなければなりません。生まれた子は、原則として夫婦のうち収入の多い方が扶養します。ただし、健康保険組合に加入している場合、組合によって判断が異なる場合もあります。事前に健康保険組合に条件を問い合わせ、従業員に説明します。

健康保険被扶養者異動届を提出する場合、被保険者との続柄がわかる書類として、被扶養者の戸籍謄本または戸籍抄本を添付しなければなりません。フォーマットを日本年金機構のサイトから入手して従業員に記入してもらった上で、非課税証明書など収入が確認できる書類も提出するよう、該当する従業員に連絡します。

給与所得者の扶養控除(異動)申告書の提出

従業員が出産して、生まれた子を従業員自身が扶養する場合、給与所得者の扶養控除(異動)申告書の提出が必要です。生まれた子を従業員自身が扶養するかどうかは、従業員の家庭事情などにより異なるため、事前に確認しておくと良いでしょう。本書類は、年末調整の時期に年1回全従業員が提出するため、産休中の従業員だけ特別に対応する必要はありません。従業員の書類提出後に、生まれた子が扶養に入っているかを確認します。

代替要員の確保

産休や育休取得で人員が減り、職場の負担が大きくなると見込まれる場合は、代替要員を確保します。産休を取得する従業員の上長と相談し、適切な時期に人員を補充できるようにします。

厚生労働省では、仕事と家庭を両立できる職場環境作りを進める事業主を支援する目的で、両立支援等助成金を設けています。助成内容は毎年変更されるため、厚生労働省のサイトで最新内容を確認し、可能なら助成を受けるための手続きを進めます。

産休にまつわる企業の取り組み

企業の中には、産休に関連して独自の取り組みを進めているところもあります。メルカリ、ポーラ・オルビスホールディングス、ソフトバンクの3社の取り組み例を紹介します。

メルカリ 産休・育休中の給与を会社が100%

フリマアプリを運営するメルカリでは、2016年に産休・育休中を合わせて約8ヵ月分の給与を、会社が100%保障するという制度を設けました。女性社員の場合は、産前10週間に加えて産後約6ヵ月間の給与を100%、男性社員の場合は産後8週間の給与を100%補償します。

実際に制度を利用した女性社員からは「大きなお腹で通勤が大変だったため、早めに産休に入れて助かった」といったコメントもあり、好評であることがうかがえます。

ポーラ・オルビスホールディングス 相談にのる育産休担当が人事部に

ポーラ・オルビスホールディングスは、グループの育児休業復職率が88.3%(2021年実績)になったと発表しています。職場復帰サポート手当や育児サービス利用補助など本人への直接的な支援のほか、上長面談マニュアル整備など全社がバックアップ体制をとる仕組みを設けています。人事には出産育児を経験した女性が「育産休担当」となり、育産休に入るときや保育園に入るときの手順など、幅広く社員の相談に乗り、フォローする体制を整えています。

ソフトバンク 配偶者出産休暇

第1子5万円から第5子500万円までの出産祝金を支給するなど、仕事と育児・介護の両立支援を手厚く行っているソフトバンクでは、配偶者出産休暇を制定しています。配偶者の出産予定日1週間前から出産後1ヵ月以内に、5日間の特別有給休暇を取得することが可能です。5日間は、連続取得・分割取得の両方可能で、半日単位で取得できる柔軟性もあります。

まとめ

産休制度は、妊娠中の従業員が、産前6週間前から産後8週間後まで取得できる休業制度です。本制度は労働基準法で定められており、就業中の従業員なら誰でも取得する権利があります。

従業員が産休に入る前や出産後のタイミングで、企業は産前産後休業取得者申出書を提出するだけではなく、代替要員の確保に努める必要もあります。適切なタイミングでスムーズに手続きを進められるよう、産休制度の概要や手続き内容を把握することが大切です。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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