マッチョイズム
マッチョイズムとは?
「マッチョイズム」とは、男らしさを重んじる思想のこと。スペイン語で、家庭や職場などで男性が優遇されていることを示す男性優位主義のことを「マチスモ」と言いますが、これに英語の「イズム(主義)」を合わせ、マッチョイズムという和製単語ができました。マッチョイズムはジェンダー研究の中でさまざまな説明がなされていますが、職場においては「弱みを見せない」「仕事が最優先」「競争をいとわず、勝つことにこだわる」といった要素が男性らしさの規範と考えられています。多様性や女性活躍推進が求められる社会の中で、マッチョイズムの課題や弊害が指摘されるようになってきました。
レースから降りられない人々
マッチョイズムに適応する特権とコスト
近年、「男性の生きづらさ」について語られるようになってきました。1985年の男女雇用機会均等法に始まり、育児休業法、パートタイム労働法、女性活躍推進法など、これまでは女性労働者が社会進出をするときに不利益を被ることがないよう、社会の制度整備が進んできました。しかし近年は、男性もまた男性優位主義社会の中で苦しんでいることが指摘されるようになってきています。
これまで日本社会は「男性は仕事、女性は家庭」といった性別分業の意識が強く、“男性”を中心に社会がデザインされてきました。企業の中ではフルタイム勤務の正社員で、残業も転勤もいとわない「仕事中心」の価値観を持つ人材が好まれ、それが出世コースに乗るための条件でもありました。男性は一家の大黒柱であることが期待され、昇進・昇給といった面でも女性より優遇されるなどのメリットがありました。
しかし、こうした状況にはコストも伴います。2022年の日本の平均寿命は、男性が81.47年、女性が87.57年と、男性のほうが約6年短くなっています。マッチョイズムに適合するために行った過重労働や希薄な人間関係が影響していることも考えられるでしょう。男性の自殺者が女性と比較して約2倍と高いことも、男性が負っているコストの高さがうかがえます。
多様性や個別配慮が求められる現在は、性別分業意識が若年層ほど薄くなり、育休世代を中心に男性の家事・育児への参画意識は高まっています。それでも、育児休暇や時短勤務といった制度を男性が利用することに否定的な態度を示す人がいまだに多く存在し、パタニティ・ハラスメントがたびたび問題になっています。マッチョイズムが美徳という時代からの転換にはもう少し時間がかかりそうです。
参考:令和3年簡易生命表の概況|厚生労働省
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