サンクコスト効果
サンクコスト効果とは?
「サンクコスト効果」とは、すでに発生していて取り消すことができない事柄のコストに気を取られ、合理的な判断ができなくなる心理傾向のこと。埋没費用効果やコンコルド効果、サンクコストバイアスともいいます。投資を継続することが損失をさらに拡大することになっても、それまでに費やした労力やお金、時間などを惜しんで引き返せなくなる、言わば「もったいない」という感情に縛られている状態です。経営者や事業責任者は、すでに回収不可能なサンクコストが意思決定に影響しないよう、冷静な判断が求められます。
「もったいないから」と続けるのは
かえってもったいない結果を生む
サンクコスト効果は、日常生活でもビジネスシーンでも陥りやすいもの。それまでに費やした時間やお金が多ければ多いほど、方向転換をするのに思い切った決断が必要になります。
例えば、猛勉強の末に司法試験に合格し、晴れて弁護士になったとします。しかし、弁護士事務所で働き始めてみると、自分が思い描いていたような仕事ではなかったら、どうなるでしょう。弁護士への情熱はだんだん薄れていき、全く別の仕事に興味を持つようになるかもしれません。
このとき、「今は今、未来は未来」と考えることができたら、仕事を辞めて新しい領域にチャレンジするでしょう。しかし、現実での決断はそう簡単なものではありません。学校や試験対策に費やしたお金、時間、それから自分の努力。それらを思うと「せっかくここまで来られたのに、もったいない」という思考になり、なかなか次に向かって行動することができない。これはまさにサンクコスト効果の影響を受けた結果です。
企業のプロジェクトや事業においても同様のことがいえます。多額の投資をして新規事業に着手したものの、数年経っても芽は出ず、不採算事業に陥ることもあるでしょう。そうした場合はできるだけ早く撤退を決めることが、損失を拡大させない手立てとなるはずです。しかし、これまでの投資額や新規事業メンバーの頑張りを思うと、なかなか決断できません。もう少し投資すれば何とかなるはずだと事業を続けているうちに、サンクコストをさらに増やしてしまうのです。
サンクコスト効果に陥らないためには、何ができるでしょうか。まずは、ゼロベース思考。過去にとらわれず、白紙の状態で考えることです。回収不可能なコストを割り切ることで、損失を最小限に抑えることができます。
第三者の意見を聞くことも有効です。利害関係の渦中にいると冷静な判断が難しくなる場合は、当事者でない人の声を聞くのもよいでしょう。サンクコストにとらわれることで、これまでもさまざまなチャンスを逃してきたかもしれません。過去は変えられないと割り切り、新たな一歩を踏み出すことが重要です。
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