ツイートする

『日本の人事部』HRクラブ 開催レポート

【第4回テーマ】

「キャリア開発支援に基本をおいた人材育成策
~キャリア開発支援による個人と組織の活性化」

2010年10月22日に、『日本の人事部』HRクラブ第4回が開催されました。

今回のゲストは、森永製菓株式会社 人事総務部 技監の曲尾 実(まがりお みのる)氏。森永製菓のキャリア開発支援に関する事例について紹介する講演や、参加者同士のディスカッション、参加者から曲尾氏への質疑応答などが行われました。このレポートでは、当日の様子を一部ご紹介いたします。

photophotophoto

【第4回 開催概要】

■テーマ
「キャリア開発支援に基本をおいた人材育成策 ~キャリア開発支援による個人と組織の活性化」

■開催日時
2010年10月22日(金)18:30~20:30

■ゲストスピーカー
森永製菓株式会社 人事総務部 技監 曲尾 実氏

プロフィール:1973年森永製菓入社、経理部、食品営業部、マーケティング部、九州支店、情報システム部、 菓子食品営業部などの業務を担当し、2005年から人材開発部で人材開発(研修)担当。 2008年2月業務推進本部人材開発センター長、 2010年4月森永ビジネスパートナー株式会社 シェアドサービス事業部 給与研修グループ長を経て、現職。GCDF-Japanキャリアカウンセラー / MBTI認定ユーザー / 産業カウンセラー

さまざまな形式で社員のキャリア開発を支援

まず、第1部の曲尾氏の講演では、「会社概要」「人事制度とキャリア開発支援制度の概要」「個人の成長と組織の活性化――成り行きでない仕事人生から始まる」と、大きく3つのテーマに分け、森永製菓の取り組みをご紹介いただきました。

同社の人事制度の基本方針は、会社と従業員とが緊張感のある対等な関係にあり、それぞれが「働きがいのある会社」「自律できる強い個人」として、Win-Winの関係を築いているということ。自律型人材の育成を目的に、教育・研修制度が充実していますが、特にキャリア開発支援は、人材開発制度の基盤となっています。

photo同社が「キャリア開発支援研修」を開始したのは、2006年のこと。毎年4月1日に、28歳、35歳、42歳、50歳に到達している社員は全員、必修で研修を受講するそうです。1グループは3~4名で構成され、最大6グループ24名で実施。社内講師をファシリテーターに迎え、2日間の研修を実施しています。自分自身の現状を理解した上で、具体的な将来像を描き、今後のキャリア開発を考える――。参加者同士で、インタビューやフィードバックを行うのですが、同い年が集まるので話題が合い、それぞれががんばっている姿を見ることで刺激を受けモチベーションもアップするなど、効果的な研修を実現しているそうです。

同社ではそのほかにも、ジョブ・ローテーションや上司とのキャリア開発面談など、さまざまな形式で社員のキャリア開発を支援。また、「エンゼル・チャレンジ・スクール(ACS)」という社内スクールでは、例えば「プロフェッショナル講座」という名称で幅広いテーマを扱う「自己選択型」の研修を毎週実施。自主的に参加する社員の意欲は高く、想像以上の効果を上げているそうです。

また、2007年からは「キャリア相談室」をスタート。現在は社内カウンセラー3名で対応しています。外部カウンセラーにも相談できる制度を導入しているほか、キャリア開発ミニワークショップを開催するなど、積極的に社員の相談を聞く機会を設定。入社1年目~3年目の社員には、キャリア相談が必須となっているそうです。

キャリア開発研修で何を伝えているのか

同社ではキャリア開発研修を、「森永製菓での自己実現――日本型エンプロイアビリティ」と位置づけています。まずは、森永製菓という企業のなかで活躍できる能力をつけていくということ。曲尾氏の「人間はいくつになっても成長できます。また、全ての経験は貴重なものであり、無駄なキャリアというものはありません。キャリアとは、社員が自らの責任で切り開いていくべきなのです」という言葉は大変印象的でした。

photo同社では、キャリア開発に関して、「will」「must」「can」の3つを大事にしています。まず、will(やりたいこと=自分の興味・関心・価値観)。日々の仕事に追われていると、考えなくなりがちですが、「自分はそもそも何をやりたいのか」を考えることは重要です。次に、must(やるべきこと=周囲の期待、社会人の役割)。やりたいことだけをやっているようでは、組織でその役割を果たしているとはいえず、自分の役割を認識していなければなりません。最後に、can(やれること=自分の能力)。自分がやりたいこと、やるべきことが、やれるかどうか。能力面で自分には何が必要とされていて、何をするべきなのかを知っていなければ会社から一方的に研修や自己啓発を押し付けても本気にならないということでしょう。

講演のなかでは、曲尾氏の次のような言葉が大変印象的でした。「キャリア開発は、組織から見ればモチベーションアップのための施策であり、実施することで、社員一人ひとりのモチベーションは必ず上がります。しかし、目標がなければモチベーションは上がりません。社員が熱心に取り組める体制を、作っていくべきなのです」

トップがキャリア開発の重要性を認識することが重要

続く第2部では、3~4人ごとのチームに分かれ、1部の講演を基に、振り返りを実施。参加者から曲尾氏に向け、活発に質問が寄せられました。

photoその後は、毎回恒例のディスカッションを実施。今回のテーマは「今後の自社のキャリア開発支援をどう考えるか」。15分に及ぶディスカッションの終了後、グループごとに話し合った内容を発表し、参加者全員で共有しました。キャリア開発を実現できている企業は少なく、「若い人材は、キャリアビジョンを描こうとしない」などの声も。特に、「経営陣がキャリア開発に前向きではない」「実施しようという意思はあるが、一方で、優秀な社員から辞めてしまうのではないかと役員に懸念され、説明に苦労している」など、トップに向けてキャリア開発の重要性を説明する時点で止まってしまっているケースが多いようです。

最後は、参加者からの質問や悩みに対して、曲尾氏からアドバイスをいただきました。参加者の方々と同様、曲尾氏もこれらの問題に直面しましたが、さまざまに工夫しながらキャリア開発の重要性について説明し、人事担当役員の応援もあり、最後には実施の承認を得られたそうです。参加者にとっては、具体的な方法を聞くことができ、今後のキャリア開発支援の実現に向けて大きな参考になったものと思われます。

熱い講演・ディスカッションが展開された、今回のHRクラブ。2時間という時間は、あっという間に過ぎてしまいました。しかし、「もっと曲尾氏からお話をうかがいたい」「もっと質問がしたい」という声は多く、終了後は居酒屋にて懇親会を開催。引き続き、キャリア開発に関する熱いディスカッションが行われました。

参加者の声

参加者アンケートから抜粋

≪曲尾氏の講演の感想≫

  • どの様な過程で社内に導入していかれたのか、気になっていましたが、ボトムUPで導入されたとのこと、大変感動しました。当社でも導入できるよう、努力していきたいと思います。ありがとうございました。
  • 導入時の苦労から具体的にご教授いただき、大変参考になりました。
  • 実際に行っていることをお話しいただいたので、具体的でわかりやすく、参考になる部分が大変多かった。ありがとうございます。
  • 経験に裏打ちされた事例をうかがえて、日頃考えていることが整理できました。
  • 力のこもったお話をありがとうございました。

≪ディスカッションの感想≫

  • 企業ごとの課題を知ることで、自社の課題が認識できました。
  • 業界の異なる会社の方のお話を聞けて、大変参考になりました。
  • いろいろな取り組みを聞くことができ、参考になりました。自社でどう展開させていけばいいか、考えていきたいと思います。