中小企業の経営者のための人事戦略入門【第2回】
本コラムは【第1回】で述べたように、秋山がみのり経営研究所ホームページに発表した記事を転載するものです。
「中小企業の経営者のための人事戦略入門」
【第2回】人事制度とは何でしょうか?
前回F社の成果主義人事制度の記事に触れました。最近「成果主義」という言葉が新聞・雑誌等で頻繁に見られます。しかしどちらかというと否定的な論調が多いのが気になります。ちなみに月刊誌Voiceは2004年12月号で成果主義の特集を行っています。「成果主義が失敗する理由」(日下公人、堀紘一)、「人事部に評価は下せない」(城繁幸)、「日本型年功制度を復活せよ」(高橋伸夫)、「問題は会社への不信感」(柴田昌治)などなど。
会社の経営が成果、あるいは業績と置き換えてもいいと思いますが、組織としての成果・業績を基に運営されるのは当然過ぎるほど当然なことだと思います。
それがこと人事ということになると何故こんな否定的な議論になるのか不思議です。
そこにはヒトの評価に対する特別な見方が存在することに気付きます。そしてこれが人事全体を覆う秘密主義的な行動の源泉になっているようです。評価する側の後ろめたさのような感情と評価される側の拒絶反応。前回触れたように評価がヒトをふるい落とすために行われるという大会社に特徴的な思想が底に流れていて、これが客観的な議論をしにくくしているように思えます。
企業の経営にとって社員は、他のいかなる資産よりも重要な、富を生み出す源泉です。評価により序列をつけ、ましてや排除するような存在ではありません。経営者から見れば早く戦力になって欲しい存在です。評価はその力を伸ばす一つの手法に過ぎません。その結果としての給与・賞与など金銭的な報酬もそれを支える一つの手段です。その手法である評価そのものが、経営的な視点を離れ技術論として論じられることが問題なのだと思います。
評価を始め人事制度を考える上では、ヒトを育てるという姿勢が一番重要だと思います。育てるための制度は研修部の仕事というのが大会社の人事部の一般的な姿勢です。良い仕組みであれば、経営者自身がそれを取り入れ率先垂範すれば良い。しかし往々にして新しい人事制度は役員以上除外というケースが多いのです。これでは社員が疑心暗鬼になり、やはりヒトをふるい落とすための制度だと思われても仕方がありません。
役員を含め組織の中で働く社員を動機付け戦力化するのが人事制度なのです。社長の立場に立てば、特に中小企業はそうですが、一番育って欲しいと思っているのは直下の執行役員ではないでしょうか?その役員をどう戦力化するのかは、社員以上に緊急の課題である場合が多いのです。では何をしたら会社の業績に最大限貢献してくれるような役員になって貰えるのか?そのための手法・手段にはどんなものがあるのか?この辺が人事制度を考える上での出発点です。
そのときあなたが社長であればどう考えますか?給料の額あるいはその決め方が全てだなどとは考えないでしょう。多分社長はじっくりと会社の進む方向を議論し、役員としての期待を理解してもらい、権限を与えじっとその役員の行動を眺め、相談に乗り、間違えば指摘し、うまく行けば褒め、成功を分かち合い、儲ければ分け合う…そんなことが給料の額そのものより遥かに大切なのではないでしょうか?役員の側もそのプロセスに一番意味があり、最終的な金額は自分が直接関与した業績によって決まることぐらいは百も承知しているのですから。
ヒトを育てるための人事制度とは、給与や賞与など金銭的なものだけでなく、ヒトを動機付ける要素を全て報酬として考える点にあります。その視点から見ると人事制度は大きく分けて下記三つのカテゴリーがあります。
1) 金銭以外の報酬:仕事の中身、研修・学習機会、上司・同僚・部下など一緒に働く人達、企業風土、就労環境、賞賛など
2) 金銭換算可能報酬:法定福利、法定外福利、報奨制度、退職金年金制度、昇進・昇格機会など
3) 金銭的報酬:基本給、賞与、諸手当、インセンティブ、昇給など
ヒトがある会社を選択し、働き続ける動機は金銭以外の報酬に重きを置く傾向が強いのです。これはいろいろな調査結果にも現れています。人事制度を考える出発点はこれらの要素を総合的にかつ整合的に考えることです。どれか一つの制度が全てを決めるのではありません。制度全体の中に会社としての思想・意思、すなわち社長の思想・意思が反映されているか、それが社員に理解されているかが大切なのです。
次回以降そんな人事制度をどう設計し、構築していくのかの話に入って行きたいと思います。
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秋山 健一郎(アキヤマ ケンイチロウ) 株式会社みのり経営研究所 代表取締役
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