チャットGPTに聞いてみた「ジョブ型人事制度の導入方法」
※本コラムは秋山がみのり経営研究所ホームページのコラムに掲載した記事を転載したものです。前回2023年12月4日掲載「ジョブ(職務・役割)に基づく人事制度と日本的経営」との関連で、現在注目されているChatGPTを秋山が実際に使ってみた結果を記事にしています。ご参考になれば幸いです。
チャットGPTに聞いてみた「ジョブ型人事制度の導入方法」
チャットGPT とは、大変便利な道具が出来たものです。どんな質問にも答えてくれて、やり取りも自然でタイムリーかつ、かなり質の高い回答が得られます。さらに日々進化していて、その精度はさらに高まっているようです。技術的なことは詳しくは分かりませんが、日常の生活の中で重宝に使わせて頂いています。既に多くの方々が使用されているのではないでしょうか?逆に最近ではその危険性や問題点が多く指摘されています。
そこで早速専門領域である「人事」に関して色々な質問を投げかけてみて、その力量と問題点を検証してみようと思います。今人事の世界で話題になっている「ジョブ型人事」について、「ジョブ型人事制度を導入するにはどうしたら良いでしょうか?」という問いかけをしてみました。詳細な表現は省きますが、さらさらと下記のような趣旨の回答がすぐに出て来ました:
- 目的と方針を明確にする
- 職務分析を行う
- 職務の分類とグレーディングを設定する
- 職務評価を実施する
- 従業員の能力や適性に応じた役割や職務を決定する
- 従業員の育成や評価を実施する
それぞれの項目には詳細な説明があり、分からない点は追加質問をすれば即時に回答を与えてくれます。「職務(役割)に基づく人事制度」に慣れておられない方にとっては分かりやすい流れで、これで「ジョブ型人事制度」ができるのかと思われるかもしれません。しかしそれを専門にしている我々のような人間にとっては、「ちょっと待てよ」と思う点がいくつか目につきます。まず「職務評価」の位置づけがグレーディングの後に出てきています。本来「職務評価」はグレーディングの基礎となるそれぞれの職務の大きさ(重要度)を測定・評価するためのもので、グレーディングをやった後にやるのでは意味がありません。
そこでその旨を指摘し丁寧に「順番が間違っていませんか?」と問いかけました。その回答には思わず笑ってしまいました。ざっと次のような回答でした。「申し訳ありません。確かに、職務のグレーディングを行う前に職務評価を行う必要があります。・・・職務評価の結果を基に、職務のグレーディングを決定することが適切です。申し訳ありませんが、前回の回答が不正確でした」。正直な回答で大変好感が持てました。しかしこのような質問をしないと、それが正解と理解された方は、それに基づき行動を起こされるかもしれません。その結果を考えると恐ろしい気がします。
更に基本的な質問もしてみました。5番目の「従業員の能力や適性に応じて適切な役割や職務を決定する」と書いてあります。しかしジョブ型は最初にジョブありきですから、「順番が逆ではないですか?」と質問してみました。この回答も次のようなものでした。「おっしゃる通りでした。ジョブ型人事制度では、最初に職務(ジョブ)を設定し、その職務に必要な能力や適性を持った人材を採用・配置することが基本的な考え方となります。・・・お詫びいたします。有難うございました」。前の質問同様、素直に違いを認めお詫びされ、かつ今度はお礼までされてしまいました。
このような基本的な点に関して、間違った回答をさらさらと書いてしまうのは、回答生成のためのアルゴリズムによるのでしょうが、質問者の意図を考えるより、関連する言葉を手近なデータの中から選び出し並べているという印象を受けました。質問者が何をしたいかという視点が明確でないと、このような回答も解決策として通ってしまう可能性は十分あります。現実的なコンサルティングの場面でも実は同じことが起こっています。「ジョブ型人事」が流行っている昨今、顧客のジョブ型人事制度導入の要請に、従来日本的な人事制度構築を専門としてきたコンサルタントが、見よう見まねで職務分析から職務評価などを指導しているケースなどです。要請する企業が何をしようとしているのかの明確な意思がないと、形だけのジョブ型制度が出来上がってしまうことが、十分考えられます。
チャットGPTは便利な道具だけに、使うときは十分注意したいと思います。コンサルティングに関しても同じかもしれませんが、問いかける自分自身が何をしようとしているのかを明確に自覚して始めること。納得いかない点はとことん問い詰めること。最近はチャットGPTの問題点を指摘し、注意を促しているサイトもありますので、これらの問題点を理解した上で使用することで、最大限の効果が得られると思います。将来の問題としては、さらに技術的に進化し、多くの専門的な仕事が取って代わられることも予測されています。どこまで進化するかは分かりませんが、道具は道具として使いこなせるだけの意識は持っていたいものです。
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秋山 健一郎(アキヤマ ケンイチロウ) 株式会社みのり経営研究所 代表取締役
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