ロールプレイを演劇メソッドで効果的にする
社内講師養成のトレーニングをしていて多くの方からアドバイスを求められるのが演習運営です。特にペアやトリオでのロールプレイの運営に悩む方が多く、例えば互いに照れてしまい、本来の意図する演習にならなくなったり、決められたシチュエーションをこなすことが目的になり、台本の読み合わせのように終わってしまうケースがあったりと、ロールプレイの本当の効果を発揮させられずに困っている社内講師の方たちをみかけます。こうなってしまう要因にはいくつかあるのですが、自分の役割(ロール)をこなそうとするあまり、役を大袈裟に作ってしまったり、自分の役のことで精一杯になってしまうことなどが挙げられます。つまりは、目の前の相手に目が向いていないということです。
演劇メソッドのひとつにエチュードという即興の手法があります。これは演じる役者たちにシチュエーションだけを与えておいて、ほほ打ち合わせなしでシーンを芝居として成立させるというものです。それぞれの役者は一応の展開プランや自分のキャラクターを設定して臨みますが、実際は共演相手からの想定外のセリフで混沌とするときも多々あります。それでも役者であればシーンを成立させるために様々な工夫をしていきます。このとき見応えのあるエチュードは、役者同士のセリフがキャッチボールになっているときです。自分のセリフや演じ方だけを考えるのではなく、相手から投げられるセリフに全身で反応しようとするときにリアリティのある感情やセリフがついてきます。
少し話は逸れますが、私の大学時代の芝居仲間で古屋隆太さんというプロの俳優がいます。現在はアイリスオーヤマのCMで吉沢亮さんと共演しているバイプレイヤーですが、当時の彼とのエチュードはとてもやりやすく、私が役を演じているのも忘れてしまうくらいセリフが引きだされたのを覚えています。このとき彼がやっていたことは、決められたシチュエーション(制約)の中で、私のセリフを聴いて反応するという非常にシンプルなことでした。ただし、そこには単にセリフのやりとりというよりも、セリフに乗っている感情や、その裏側にある隠れた感情をも受け止めながら反応してもらっていたように感じています。今思えば、相手主体のエチュードでした。
このことを研修のロールプレイに置き換えるならば、それぞれ演じる人が、いかに話すか、いかに演じるかという自分中心の在り方ではなく、目の前の相手から発せられるセリフがどのような背景から出ているものなのか、何を言おうとしているのかを想像力を持って接することで、自分のセリフが生きたコミュニケーションになり、リアリティに富んだロールプレイが展開されると思っています。役割だからと自分が無理に演じようとせず、むしろ相手のセリフに乗っかって反応する感覚を意識できれば、仮に台本のあるシナリオだったとしても内省的かつ、共感的なロールプレイにつながってくることでしょう。新入社員研修のロールプレイ運営でいまひとつしっくりこないと感じている社内講師の方がいらっしゃれば、演習開始前の受講者に「相手のセリフを聴いて反応する」という留意点を1つ加えるだけでも気づきの多いロールプレイになっていくはずです。
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細谷幸裕(ホソヤユキヒロ) 株式会社 市進コンサルティング 代表取締役
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