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プロフェッショナルコラム

第71回 源泉所得税の仕組み

令和2年1月より、扶養控除の見直しが行われ、「源泉徴収税額表」が改定されました。
給与計算ソフトを使用していると自動的に所得税の計算がされるので、源泉所得税等が変更になっても気が付かない場合があります。
また、従業員から「どのような仕組みで所得税が計算されているのか」といった問い合わせを受けるケースもあるでしょう。
今回は、源泉所得税の仕組みについて見ていきたいと思います。

 

<毎月の所得税と年末調整の関係>

会社から給与を受けている人のことを、「給与所得者」と呼びます。給与所得者には、「所得税」と「復興特別所得税」が課税されます。
復興特別所得税は、東日本大震災から復興資金に使用する目的で、令和19年まで徴収される期間限定の税金です。

給与所得者の所得税と復興特別所得税は、会社が毎月の給与や賞与から徴収し、その年の最後に年末調整を行って精算することになっています。
1年間の給与総額に対する所得税・復興特別所得税の額と、毎月の給与から源泉徴収された所得税・復興特別所得税の合計額は必ずしも一致するとは限りません。

その理由は、大まかには次の原因によります。

1)子の結婚や就職などにより年の中途で控除対象扶養親族の数が変わる場合があるから。(扶養控除)
2)生命保険料控除や配偶者特別控除などは年末に控除することとなっているから。(保険料控除)
3)住宅ローンを組んでいる場合、住宅借入金等特別控除を利用できる場合があるから。(住宅借入金等特別控除)

所得税の控除の種類には、「所得控除」と「税額控除」があります。
所得控除は税額を計算する前の所得から差し引き、その後で税率をかけて税額を算出する控除方法です。もうひとつの税額控除は、所得税を算出した後の税額から、ダイレクトに差し引く控除方法になります。
「扶養控除」や「保険料控除」は所得控除で、「住宅借入金特別控除」は税額控除にあたります。

 

<所得税・復興特別所得税の計算手順>

国税庁が発行する「給与所得者と年末調整」に図表でも示されていますが、所得税・復興特別所得税を計算する手順は次の通りとなります。
この計算手順は年末調整の場合ですが、確定申告であっても考え方は基本的には同じになります。

1)年間の「収入」金額を確定する。
*年間の課税収入を合計します。通勤費等非課税所得は含めません。
2)年間の収入金額から給与所得控除を行い、「給与所得金額」を計算する。
*収入金額に応じて計算式にあてはめて算出します。
3)給与所得金額から社会保険料、扶養控除、保険料控除等を行い、「課税給与所得金額」を計算する。
*それぞれの項目ごとに控除額を計算し、給与所得金額から差し引いて算出します。
4)年間の「算出所得税額」を計算する。
*課税給与所得金額により、税率と控除額が決まっていますので、それにあわせて計算します。
5)算出所得税額から住宅借入金等特別控除を行い、「年間所得税額」を確定させる。
*税額控除である住宅借入金等控除額を差し引きます。
6)「復興特別所得税額」を計算し、所得税・復興特別所得税を確定する。
*年間所得税額に「2.1%」を乗じた金額が復興特別所得税額になります。

毎月の給与計算や賞与支給時には、年末調整のように細かく計算するのは困難なので、「課税所得金額」と「控除対象扶養親族数」だけで所得税を計算しています。
その年の最後に、毎月の給与と賞与の所得税額の合計額と、上記で計算した正しい年間の所得税と復興特別所得税を清算するのが「年末調整」です。
大部分の給与所得者は、年末調整によって1年間の所得税及び復興特別所得税の納税が完了しますので、確定申告の必要はないということになります。
簡単にいえば、毎月の給与やボーナスからは、概算で所得税と復興特別所得税を控除し、年末調整で年税額を確定させて、還付や徴収を行っているのです。

 

<令和2年の改正事項>

令和2年の所得税の計算においても、計算の仕組みは大きく変わることはありません。しかし、給与所得控除と基礎控除の見直しが行われ、月々の給与から徴収する所得税を計算する「源泉所得税額表」も改定されました
このため、給与や報酬が前年と一緒であったとして、所得税額が変わる場合があります。

主な改正事項は、次の4つです。

1)給与所得控除及び基礎控除の見直しが行われ、所得金額調整控除が創設
2)各種所得控除等の適用を受けるための扶養親族等の合計所得金額要件等の改正
3)「給与所得者の基礎控除申告書」及び「所得金額調整控除申告書」の新設
4)生命保険料控除証明書等を、電子データで提供することが可能に

これらの改正事項については、次回に詳しく紹介をしていきたいと思います。


法改正によって、所得税の金額が増える場合があります。令和2年1月の支払いから、新しい計算方法や税額表を適用しておかないと、年末調整時に不足分を徴収する必要が出てくることも考えられます。
きちんと対応できているか、再確認していただければと思います。


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コラム執筆者
川島孝一
川島孝一(カワシマコウイチ)
人事給与(ペイロール)アウトソーシングS-PAYCIAL担当顧問
経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。
(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
得意分野 法改正対策・助成金、労務・賃金、福利厚生、人事考課・目標管理
対応エリア 関東(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県)
所在地 港区

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