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専門家コラム

いま、「第2次組織開発ブーム」が来ている!

近年、企業や人材開発業界において「組織開発」が注目されています。現在、日本は第2次組織開発ブームが来ていると言われています。
ブームの裏には十分な知識や理解がないままに組織開発を実施し、思うような結果を得ることが出来ず組織開発自体が否定されてしまう危険性も存在しています。そこで組織開発とは何かについて解説していきます。
 

組織開発とは?

組織開発(Organization development)とは何かについて解説していきます。

組織開発に関する定義は数多く存在しますが、Warrickの「組織開発とは、組織の健全性、効果性、自己革新能力を高めるために、組織を理解し、発展させ、変革していく、計画的で協働的なプロセスである」という定義がわかりやすいでしょう。

組織開発を説明する際によく引用されるものの一つに、社会心理学者のスタイナーの公式があります。100Kgの物を引く力を持っている人3人と、300Kgの物を引く力を持つ1人が綱引きをした場合、どちらが勝つか? という場面を想像してください。

スタイナーの公式によれば、1人で300kgを引く力の1人ほうが勝つということになります。3人の方は、お互いが無意識に依存してしまう「社会的手抜き」が起きたり、事前に息を合わせるといったような「タスクの調整」を行わないためにパフォーマンスが発揮できないということです。

300kg > 100kg+100Kg+100Kg
スタイナーの公式「実際生産性=潜在的な生産性―欠損プロセスによるロス」

つまり集団、組織には何もしないとグループプロセスロスが生まれるということです。実際企業現場でも似たようなことが起きているのではないでしょうか? したがって、集団や組織の中の信頼関係やネットワーク、助け合いの規範といった「社会関係資本」を形成、発達させる必要があるのです。それによって、グループプロセスロスを抑制し、逆にメンバー間の相互支援や相乗効果によるプロセスゲインを得ようとする取り組みが組織開発であると言えます。

実際の生産性=潜在的な生産性-欠損プロセス+プロセスゲイン

 

人材開発と組織開発

人材開発を簡易的に表現すると、「企業の経営方針に基づくヒューマンリソースに対するアプローチ(経営者や従業員の能力アップや人間力の向上)であり、組織開発と同様企業組織の経営目標の達成に向けて従業員がより質の高い仕事を行い、成果を上げることを目指す取り組みである」と言えます。同じ目的を持つことから人材開発と組織開発には密接な関係があると言え、人材開発担当者は組織開発について理解しておく必要があります。少し強引ではありますが、前述の綱引きの例で例えるならば、綱引きをするメンバーの力をアップすることが人材開発であり、グループ内の社会的資本を形成、発達させることが組織開発のアプローチであると言えます。

 

プロセスとコンテント

組織開発を理解する上で知っておくべき概念の一つに、「コンテント」と「プロセス」があります。基本的な表現をするならば、人と人の関わりや仕事などにおいて目に見える部分をコンテント(Content)といいます。職場での仕事の内容、出来事、データ、状態、人や組織の働きや言動といった内容に関するものです。

一方、目に見えない部分をプロセス(Process)といい、プロセスにはタスクプロセス(Task Process)とメンテナンスプロセス(Maintenance Process)があります。

タスクプロセスは、主に仕事の進め方、手順、コミュニケーションの方法、ルール、決まり事など活動や結果としてコンテントにつながることや、関わり方、協働に関することです(厳密に言うと、タスクプロセスの一部は見えるものもある)。

メンテナンスプロセスとは、職場の人間関係、仕事へのモチベーション、コミュニケーションの質やあり様、メンバーの参加度、場の統制など人の意識や感情に関係するものです。

 

プロセスを知る

組織開発の基本的な取り組みは、組織のメンバーがお互いにプロセスを理解し、プロセスを改善、変化させ、そこから気づきや学びを得ることです。これにより、関係性やコミュニケーションの質が上がり、Warrickの定義「組織の健全性、効果性、自己革新能力を高める」ことにつながっていきます。

プロセスが難しいと感じる場合は次のように理解いただければと思います。私達は様々な体験や出来事、情報を五感を通じて受け取り、感情や思考が行われ行動につなげていきます。

「体験、出来事」→「認知」→「感情」→「思考」→「行動」

この中で主に認知、感情、思考の部分にプロセスが発生します。

認知:情報をどのように受け取ったか?
感情:どのような気持ちや心の変化が起きたか?
思考:何を思い、どのように考えたか?

この認知、感情、思考の部分は他人からは見えにくい部分です。

組織開発は、1940年代アメリカの社会心理学者クルト・レビンが集団の会話・作業において、コンテントに注目するよりプロセスに着目したほうが良い成果につながることを発見したことがルーツであると言われています。レビンの研究でうまれたプロセスを学ぶための取り組みに「トレーニンググループ(Tグループ)」があります。Tグループは、約1週間の合宿形式で行われます。「構成されていない環境(※)」で、メンバーが自由に関わり、発言、対話する中で、お互いのプロセスを感じ、プロセスを共有し、相互理解を深める中で様々な気づきや学びを得るというトレーニングプログラムです。プロセスを理解するには非常に効果的なトレーニングです。

※プログラムや講師・ファシリテーターの指示・管理のもとでセッション等が行われる環境を「構成的」といい、大まかな時間設定程度で参加者自由が確保される環境を「非構成的」と呼び区別しています。Tグループは非構成の代表といえます

 

ジョハリの窓

Tグループから生まれたツールの一つに多くの方がご存知の「ジョハリの窓」があります。

これは集団、対人関係の中において、それぞれに起きるプロセスを4つの窓で整理するものです。組織のメンバーが仕事や会議、何かの取り組みの中で起きる葛藤や健全性の喪失時に、自分に起きたプロセスを開示(自己開示)することや、自分の無意識の反応や振る舞いを他者から伝えてもらう(フィードバックを受けとる)ことを通して、お互いのプロセスを理解し背景や事情、感情を知り、そこから気づきを得て、改めて状況や物事を意味づけし直たりします。

「対話から事実が生まれる」という言葉がありますが、これはプロセスを語り合うことで知り得なかったことがお互い明らかになり認識が大きく変わることを意味します。

ジョハリの窓は、組織構成員が関わる場において開放の窓を大きくする(お互いのプロセスの理解を深める)ことで集団、組織の社会関係資本を形成することを可能にするツールであるといえます。


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コラム執筆者
的場正晃
的場正晃(マトバマサアキ)
PHP研究所 研修企画部長
使命感を共有し、全員が活躍できる組織へ
松下幸之助の経営観・人間観をベースにした研修プログラムにより、強い個と組織づくりを同時に実現します。
得意分野 モチベーション・組織活性化、キャリア開発、リーダーシップ、マネジメント、コーチング・ファシリテーション
対応エリア 全国
所在地 京都市南区

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