エンゲージメントが人的資本経営のキーファクターなのか?

ここ数年、企業において「人的資本経営」が重視されています。同時に、人的資本経営に関わる指標として「従業員エンゲージメント」が注目されています。人的資本経営とエンゲージメントはどのような関係にあるのでしょうか?あらためて整理しておきたいと思います。
無形資産の拡大が背景
人的資本経営が重視され始めた背景には、企業価値に占める無形資産の比重が高まってきたトレンドがあります。企業が将来に向けて成長を続けるには、先行投資が必要なのは言うまでもありませんが、デジタル経済の進展とともに、その投資の内容がかつての有形資産(工場や店舗などのハードウェア)から、無形資産に移り変わってきているのです。人的資本投資は、もちろん無形資産に含まれます。
有形資産は企業の財務情報(バランスシート)を見ればわかりますが、無形資産の大部分は財務情報には現れません。そのため、財務情報だけを見ていても適切な投資判断ができないため、世界的に非財務情報の開示のガイドラインが作られてきました。人的資本情報の開示もその流れの中にあります。
人的資本が扇の要
知的資本や社会・関係資本といった無形資産の価値を高めるためには、これまで以上に人への投資が求められます。価値創造の担い手である人材への投資は、無形投資における扇の要に位置付けられるのです。

実際に、毎年実施されている生保協会の投資家アンケートでも、中長期的な投資・財務戦略で重視すべき項目として、「人材投資」は第1位(76.5%)という結果が出ており、第2位の「IT投資」(61.2%)を大きく上回っています。
https://www.seiho.or.jp/info/news/2024/pdf/20240419_3_5.pdf
エンゲージメントは人材・組織マネジメント能力のバロメーター
人的資本投資が重要であったとしても、ただ単に投資すればよいわけでないことはもちろんです。人的資本投資によって、採用した人材が成長し、高いパフォーマンスを発揮することが求められますが、そのためには、従業員のエンゲージメントが高い状態にあることが不可欠です。エンゲージメントが低い状態で、高いパフォーマンスは期待できないからです。
そのため、会社全体のエンゲージメントの状態を定期的に把握し、継続的に向上させていくプロセスへの投資が重要になります。それは会社における人材・組織マネジメントを改善するプロセスと言えます。このプロセスがうまく機能している会社は、人的資本の価値を向上させるマネジメント能力を高めることができます。投資家がエンゲージメント指標の開示を重視するのはそのためです。
人的資本経営の中核に人材・組織マネジメントがあり、その巧拙がエンゲージメントの水準に現れる、という関係にあるのです。
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日本において、1on1とOKRを含む、パフォーマンスマネジメントの重要性をいち早く唱え、多くの企業の経営者と共にマネジメント改革に携わる。
東京大学法学部卒業後、アクセンチュアにて、人と組織の変革を担当するチェンジマネジメントグループの立ち上げに参画。同社のヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナー、エグゼクティブコミッティメンバーを歴任後、アジャイルHRを設立。
松丘啓司(マツオカケイジ) 株式会社アジャイルHR 代表取締役社長

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