MBOとは?MBO評価を活用した評価制度の構築方法まで解説
MBOとは?MBOのメリット・デメリット、成功・失敗事例からMBO評価を活用した評価制度の構築方法まで徹底解説します
MBO評価とは、会社の方針と社員自らが目指したい姿、方向性を擦り合わせ、一人ひとりが目標を設定し、成果へ向けたプロセスを管理することを指します
MBOとは
MBO(Management By Objectives:目標管理制度)とはアメリカの経営学者、ピーター・ドラッカーが提唱したマネジメントの概念として有名であり、1990年代から今日まで多くの企業様で導入されております。
MBO評価とは、会社の方針と社員自らが目指したい姿、方向性を擦り合わせ、一人ひとりが目標を設定し、成果へ向けたプロセスを管理することを指します。
社員は半年間又は1年間頑張った成果を正しく評価して欲しいという気持ちが高いため、何を目標として設定し、どのように評価していくのかが大事になります。
一般的に業績・能力・態度(情意)評価をベースに人事制度を構築していく企業が多いですが、業績評価を考えた場合、営業・販売系の職種は業績評価が数値でわかるため、評価項目が決めやすい一方で、その他の部門では、業績評価がやりにくいため、間接部門の業績評価をMBOを活用する形で代用する企業も多くございます。
しかし、昨今、MBOを導入してきた企業を見渡しますと、形骸化してしまっているケースも散見されます。
代表的な理由としては、「目的が正しく伝わっていない」、「評価者の知識不足」、「上から押しつけた目標を運用してしまっている」等が挙げられます。
加えて、部下との目標設定面談やフィードバック面談についても不十分なケースがございます。
MBOのメリット・デメリット
ではMBO(目標管理制度)評価は良くないのか。当然、制度ですから必ずメリットとデメリットがあります。以下メリット・デメリットでございます。
MBO(目標管理制度)のメリットは大きく3点あります。
■メリット
1点目は、自律型人材が育ちやすく人材育成につながることです。
MBO(目標管理制度)は自身の成長テーマを自ら考え上司と相談して課題・目標設定するので、課題解決へ向けたプロセス管理や、課題遂行能力がアップします。上司も部下との面談を通じて成長できます。
2点目は、モチベーションアップにつながりやすいことです。
自身が課題・目標を決めて行動することで、指示命令等「やらされている意識」が低くなることで、達成感や充実感を感じることができモチベーションアップにつながります。
3点目は評価が実施しやすくなることです。
目標の達成基準が明確になるため、目標達成度を可視化でき評価が実施しやすくなります。
MBO(目標管理制度)のデメリットも大きく3点あります。
■デメリット
1点目は、低い課題・目標設定になりやすいことです。
自身の成長テーマとはいえ、最終的には達成度で評価されるため、達成しやすい課題・目標の設定になりやすくなります。
2点目は、部門間の整合性が取りにくいことです。
自身がそれぞれの上司と面談等を通じて設定するため、どうしても甘辛がでやすくなります。
甘い上司の部下は達成度が上がり、辛い上司の部下は達成度が下がるといったことが起きやすくなり、全体での調整が必要です。
3点目は、評価者の業務負担が大幅に増加することです。
評価者は部下一人ひとりの目標設定の面談が必要となり、かつ目標の進捗確認等も実施するため、部下の数が多い評価者ほど、業務負担が増加します。
進捗管理として従業員に面談を行ないつつサポートしなければなりませんので、 通常の業務に支障をきたすほどの負担にもなりかねません。
従業員それぞれの目標は一律ではないので、個別に評価を行わなければならないのも評価者に負担をかけてしまいます。
MBO導入に際しては、管理者の負担をいかに減らすかも重要な課題となります。
MBO評価を活用した評価制度の構築方法
1.MBO導入の目的を共通認識する。
なぜMBOを導入するのか、どういう効果を目的にしているのかを共通認識する必要があります。
MBO(目標管理制度)が業績向上のためにあるのではなく、社員のモチベーションアップや、部下と評価者の成長にもつながるということを目的とし、全社員に理解させることが必要です。
しいては人材の成長が会社の成長につながります。
2.組織目標の共有と個人目標の設定
MBO(目標管理制度)の目的を共有できれば、次のステップは全社目標から各部門へ目標を落とし込み、その部門目標達成のために個人がどのような役割を担当するのか、どのような能力を伸ばす必要があるのか、具体的にできるのは何かを自身で考えさせ、評価者との面談を通じて個人目標を設定していきます。
その際、なるべく定量的に捉え、達成度がわかるようにすることが大切です。
安易に定性的な目標として設定してしまいますと、評価が難しく感覚的な判断に陥りやすいです。
※ただし、定性的であったとしても具体性や客観性があれば十分運用できると考えます。
低すぎるハードルや高すぎるハードル等どちらかに偏らないように部下の能力をみながらアドバイスを実施します。目標設定のポイントはスマート(SMART)にです。
Specific=具体的に
Measurable=達成度が測定できる
Achievable=現実に達成可能
Related=組織目標や全体戦略との関連性がある
Time-bound=明確な期限がある
です。
また繰り返しになりますが、業績向上も大切ですが、部下の成長を考えての課題・目標に設定することです。
課題・目標の押し付けになるとモチベーションが低下します。
3.上司(部門責任者又は役員)の承認
個人の目標が正しいと思っていても、会社全体でみると甘辛がでてしまいます。可能なら調整会議を設け、極力甘辛をなくし、等級毎または職種ごとの難易度の調整が必要です。
4.プロセス管理を実施
課題・目標の承認が下りれば、評価者は達成に向けて正しく行動できているかのプロセスチェックを実施します。
計画通りに進んでいない場合は、達成に向けてのアドバイス、ヘルプ、フォローを評価者が実施します。
目標を立てた後、評価まで放置ということにならないよう注意が必要です。
5.評価の実施
評価者と部下が面談を通じて課題・目標達成によるプロセスや結果を対話し、部下の自己評価と上司による評価を実施します。
この評価前面談を実施せず、各々で評価をして会社が査定した結果をもとにフィードバックをするケースも多いです。
6.フィードバック(フィードバック面談)
MBO(目標管理制度)はフィードバックを実施することで効果があがります。
タナベコンサルティングでは人事制度(評価制度)の中で一番大事にしている項目でもあります。
フィードバック面談に向け、「部下の話を聴く姿勢」をもって挑んでください。話の途中で遮ったり、自分の言いたいことだけを話すことにならないよう、必ず聴き役に徹してください。
まず半年又は1年の頑張りを労い褒めることからフィードバックがスタートします。世間話からリラックスしてもらうのも大事です。
部下を一方的に攻撃するような面談になったり、重箱の隅をつつくような面談はモチベーション低下はもちろんのこと逆効果になります。
自身の評価と会社の評価のギャップをプロセスを押さえながら正しくフィードバックします。
どこに「頑張りの誤解」があるのかを見つけ、そこを丁寧に理由を添えて説明します。
この部分が解消されないと、不満が残ったままになり最悪の場合は、正しく評価されないということで転職ということにつながります。
評価結果だけ伝える、賃金の増減といった話に終始するのでなく、ギャップを正しく伝え、次の成長へつながるようアドバイスや部下への期待を実施して本人のモチベーションを高めることです。もちろん面談はしないといった運用は問題外です。
ここで、MBO(目標管理制度)の失敗要因、成功要因を列挙いたします。
失敗企業の特徴5点
1.MBO(目標管理制度)の目的が評価することになっており、評価者の理解が得られていない。
2.業務が多忙で、部下との対話がなく、部下が設定した目標に対してノーチェックで決定している。
3.各社員が設定した目標の甘辛が激しく、調整もないため、社員の不満が高まっている。
(甘い上司の部下が得をし、辛い上司の部下が損をする、正しく頑張ったものが報われない)
4.MBOを設定した後、部下へのアドバイス、フォローもなく、評価まで何もしない。
5.フィードバック面談の実施がない。または実施しても評価結果を伝えるのみや、一方的なダメ出しになっている。
成功企業の特徴5点
1.MBOを通じて部下の成長と評価者の成長につながっている。
2.会社の方針を正しく理解し、部下の成長目標と一致するよう面談を通じて調整している。
3.目標設定に難易度を設け、簡単な目標を選ぶと100%達成しても80%とするなど、評価係数を取り入れて部門間の調整をおこなっている。
4.考課期間中も目標達成に向けアドバイスやフォローを行い、部下の成長につなげている。
5.フィードバックで部下と会社側との評価におけるギャップを正しく認識してもらい
課題の改善アドバイスと次の考課期間における期待などを伝えモチベーションアップにつながっている。
さいごに
社員が定着しない理由の1つに人事制度関連への不満があげられます。
目標管理制度は人事制度における1つの手段ではありますが、部下との面談を通じてコミュニケーションの場が増え、成長目標の共有が図れ、承認できるということは、若手社員のエンゲージメント向上にもつながります。エンゲージメントが高くなれば離職率が下がります。
採用強化で入口を広げるのも大切ですが、既存社員の定着率を高めるためにも、人事処遇制度に課題、問題がないかの点検を実施し、再構築するのであれば、その手段の1つにMBOを検討していただければと存じます。
評価者の業務負担は増えますが、目的の共有、理解ができていれば、それ以上の大きな成果につながると考えます。
制度が形骸化しないように部下との対話からスタートしてください。
※本コラムは福原が、タナベコンサルティングの経営者・人事部門のためのHR情報サイトにて連載している記事を転載したものです。
【コンサルタント紹介】
株式会社タナベコンサルティング
エグゼクティブパートナー 中部本部 副本部長
福原 啓祐
中堅・中小企業の事業承継や収益改善、企業再生に多くの実績を持つ。経営計画策定、収益構造改革、組織戦略構築、人事処遇制度の改善を得意とする当社トップコンサルタントの一人。持ち前の行動力に加え、顧客の心を捉えた改善対策立案、またその指導力には定評があり、多くのファンを持つ。
主な実績
・上場会社の鋳物部品の製造会社の中期経営計画策定
・中堅総合商社の中期ビジョン、中期経営計画策定から浸透
・地方銀行の人事施処遇制度の再構築
・中堅食品製造会社の人事処遇制度の改定
・中堅建設業の後継者育成とブレーンづくり
・上場総合小売業の経営幹部・幹部育成
・中堅建材卸会社の後継体制づくりと階層別研修
・中堅鉄工会社の組織・風土改革による収益力改善
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創業60年以上 約200業種 15,000社のコンサルティング実績
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タナベコンサルティング HRコンサルティング事業部(タナベコンサルティング コンサルティングジギョウブ) コンサルタント
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