自社の戦略と連動させる体系立てた人材育成手法とは
自社の戦略と連動させる体系立てた人材育成手法とは
求める人物像を確実に輩出できる企業内大学の組み立て方
自社における戦略把握を行い、必要となる人物像を具体化し、これに基づく育成体系を設計する
人材育成が進まない背景
ここ直近、政府からの発信や伊藤レポートなどを通じて、人的資本経営の重要性が問われるようになり、人材を「コスト」ではなく「資本」として捉え、人材価値を最大化することにより中長期的な企業価値向上を目指す経営のあり方に注目が集まっている。
しかし、依然として世界水準の人材投資額や教育投資額を見ると大きく溝をあけられているのが実情だ。
更にコンサルティング現場におけるリアルな声をあげると、依然としてOJT任せになっている、教育計画がたてられていないなど、さほど変化を感じられないのが筆者の率直な所感である。
とはいえ、ここ最近のトレンドをみると「リスキリング(学び直し)」と呼ばれる新たなキーワードが誕生した。大手企業を中心に未来を見据え、DX人材の育成に取り組みはじめ、また、政府の動きとしてもリスキリング支援への投資を表明するなど徐々にだが、人材育成に対する気運が高まりつつある。
自社における人材育成の目的とは
では、自社も流行りに乗っかって「リスキリング」に取り組もう!は間違えである。
先ほども大手を中心にと説明をしたが、これは戦略があってのことである。具体的には、将来予測をするとAI・ロボット化が進み、自社で働いている従業員の職務が消失してしまう懸念、またより付加価値を高めるためのローテーション、職務転換等の下準備であると筆者は考える。
よって、我々が最初に押さえなければいけないポイントは、自社の戦略に基づくポートフォリオの再設計と必要人材数の把握にある。
ここ数年でコロナやウクライナ紛争の影響により、大きく戦略転換を図らざるを得なかった。
これにより、組織変革を行い、従業員の役割や発揮すべきスキルも変わった(筆者もまさかWEB会議でコンサルティング、商談するとは思ってもいなかった)。これまで過去の成功体験や経験にすがっていた人材はおそらくついていくのが難しかったのではなかろうか。一方、戦略転換に基づきスピーディーに対応できた人材も多くいるであろう。
あらためて職種の見直し、働く従業員の役割などを変えられた企業が多くあった。
その中でも大きくは、リーダーシップを図る人材、専門性を発揮するプロフェッショナル人材の大きく2つのくくりに分けてポートフォリオの見直されている企業を見受ける。
では、将来リーダーは何名必要なのか、プロフェッショナルは何名必要なのかを中長期戦略と連動させ、これを具現化するために人材戦略から人材育成に至るまで設計することになる。
プロフェッショナルを養成するための企業内大学
従来の企業において、階層・役割に応じた人材育成に取り組んでいる。例えば、管理職になればリーダーシップ、コーチング、アカウンティングなど体系立てて学ばせている。
しかし、職種に応じた人材育成に関しては、前出のとおり、現場任せ・OJT中心に時間をじっくりかけながら、育成を図っている(放置?)ケースが多いのではないだろうか。
なぜ、このような状態となってしまうのか、コンサルティング経験を通じてわかったことが、そのプロフェッショナルの属人化になってしまっているのが、実情である。
彼のもとで働かないと習得できない、また教えてもらうのではなく、目で盗んで学ぶしかないといった症状である。
よって、これを解消するためにはプロフェッショナルが保有している知見や経験を可視化しなければならないし、これに基づいて正しく教える教わる仕組みが必要である。
ここで各社取り組んでいる仕組みが企業内大学(アカデミー)の設立である。
タナベコンサルティングにおいては現時点で全国約160社の企業内大学の設立を支援しており、多くの企業が企業内大学の設立を行い、プロフェッショナルが抱えている知識・経験を可視化し、自社オリジナルのカリキュラムを設計され、体系的かつ計画的に習得することが可能となり、結果社内のプロフェッショナルを確実に輩出する仕組みとして構築している。
企業内大学設立のための5つのポイント
では最後に、どのような手順を踏んで企業内大学を設立するのか、自社の戦略のに加え、推進・遂行する上での組織・ポートフォリオがが明確化となっていることが前提条件とし、下記の通りポイントを説明する。
1.成果に直結する人物像を明確にする
前出に記載したとおり、自社の事業モデルを踏まえ、戦略推進・遂行を図るうえで必要とする人材を具体化する。
例えば、小売・サービス業であれば店長(マネジメントする人材)の頭数であるし、建設業でいえば現場所長の
頭数なくして売上がたたない。また、明確化を図ると同時に必要とする知識・経験・スキルも可視化する。
これを実行するためにはヒアリングが有効的であるが、優秀人材は当たり前のように実行しているから、
インタビュー者は言っていることを深く掘り下げるような質問をすると良い。
2.企業内大学の枠組みを設計する
企業や学校に理念・方針があるとおり、企業内大学を展開する上で目的を明確にしなければならない。
そして、上記1の人材を輩出するために、どのようなキャリアステップを踏むのか、
成長段階での求める姿もあわせて具体化し、枠組みを設計する。例えば、〇年目では独力で担当業務をこなせる
ようになる、逆算して〇年目では先輩に補助を受けながら、担当業務を一通りこなせるなどである。
3.可視化された知識・経験・能力の習得方法を定めカリキュラム化を図る
習得方法は主にインプット(知識習得)とアウトプット(実践・スキル習得)の2つの軸に分けて設計する。
これは知識だけを習得しても、実際に行動してみなければ血肉化されないからである。
インプットは知識習得を目的でありますから、動画が主流となっている。その背景は、いつでも、どこでも
自分が空いた時間で自主的に学べるというメリットがあるからである。アウトプットは、ワーク、討議、
ロールプレイング、実地など様々な選択肢がある。これは必要とする知識・スキルに応じて、設定することが
重要。
4.カリキュラム化されたものを研修の概要と年間スケジュールに落とし込みを図る
習得方法が固まれば、次に実施することは研修概要としてとりまとめを行うことである。目的、内容、対象、実施時間
など更に掘り下げた内容となる。これを踏まえ、いつ実施するのか、年間教育スケジュールへ落とし込みを図り、
予め対象者へ告知する必要がある。その後、更に研修に向けてレジュメ作成、フォーマット作成など自社内の
担当部署もしくはプロジェクトの中で役割分担を行いながら形にしていく。
5.推進体制と効果測定の仕組みを検討する
運用7割・制度3割といわれるよう、運用が肝となる。成功している多くの企業は、担当部署任せではなく、他部署も
巻き込み、月1回は人材育成に特化した会議を実施し、研修の実施状況や受講者の成長度合いを確認
し対策を練っている。その中でも着目していただきたいのは、効果測定である。何を持って成果となるのか、
自社の戦略の中に含まれている人的資本指標(人事KPI)の状況変化をしっかりと押さえることが、
ここ直近におけるポイントとなっている。いわば、企業内大学で実践したことが人事KPIの改善にも繋げられる
からである。
これらポイントを踏まえ、自社の戦略実現に繋がる人材づくりへの参考にしていただければ幸いです。
※本コラムは盛田が、タナベコンサルティングの経営者・人事部門のためのHR情報サイトにて連載している記事を転載したものです。
【コンサルタント紹介】
株式会社タナベコンサルティング
HRコンサルティング事業部 エグゼクティブパートナー
盛田 恵介
セミナー責任者を経てコンサルティングに携わる。人づくりをデザインする総合プロデューサーとして、中堅・中小企業の人事・教育制度構築から運用に至るまでトータルでサポート。特に、様々な業種・業態の企業内大学(社内アカデミー)設立に実績を有し、多くの社員の成長を促すプログラム開発にクライアントから高い評価を受けている。
主な実績
・上場・中堅ゼネコンのアカデミー構築・運用支援
・中堅スーパーのアカデミー構築・運用支援
・中堅飲食業のアカデミー構築支援
・金属加工・製造業のアカデミー構築支援
・中堅建設業の人事制度構築支援
・中堅製造業の次世代幹部育成・ジュニアボード運営支援
・中堅サービス業、建設業、製造業企業の中期ビジョン策定
・卸売業、サービス業、建設業、製造業の社内アカデミー構築&人材育成支援
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タナベコンサルティング HRコンサルティング事業部(タナベコンサルティング コンサルティングジギョウブ) コンサルタント
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