製造業における人事制度の構築ステップと導入事例
製造業における人事制度の構築ステップと導入事例
製造業特有の課題を押さえ、社員が前向きになれる納得性の高い人事制度の構築
バリューチェーンで各職種の役割を押さえ、価値発揮のポイントを押さえることが肝になる
製造業での人事制度構築時、共通している課題とは
昨今の市場環境の変化やビジネスモデルの変化に伴い、人事制度再構築のご依頼は非常に多くなっております。
コンサルティングの現場では、様々な企業様の話を伺いますが、製造業に限らず、業歴の長い企業様は年功序列の色合いが人事制度の根本にあり、長らくメンテナンスもできていないケースが多いです。
部分的な微修正や変化する法律への対応は必要に迫られるため、実施をされていますが、制度の目的から再検討を自社だけでするにはハードルが高く、弊社のような外部の目を入れ、再構築されるケースが増えております。
これは以前の制度改定からかなり時間が空いており、当時の背景を誰もご存じないことに加え、社内の方々だけでは人事制度改訂の経験値が少ないことが背景にあります。また、特に新卒入社の方々はその会社のルールが唯一となりますので、今の時流と逆行したことが当然の会社文化になっていても、なかなか気付かないという点も挙げられます。
その中で、製造業の企業様で、よくある課題をいくつかご紹介します。
(1)経営理念はあるが、人事制度への繋がりが弱く、人事ポリシー(人材に対する考え方・指針)の設定がない
(2)営業系・開発系・製造系・スタッフ系の職種特性を評価しきれていない
(3)働き方改革に製造現場・営業現場が対応できていない
(4)新たな挑戦、社員のチャレンジを支援・評価する仕組みができていない
上記は特に多く見受けられる課題です。
では、この課題点を踏まえ、制度構築をどのようなステップで実施すれば良いかお伝えします。
課題を押さえた人事制度の構築ステップと他社の対応事例
課題を押さえながら、人事制度を再構築するステップとしては、以下を実行される事をオススメします。
1.経営理念・パーパスを再確認し、自社の大切にすべき上位概念を押さえる
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2.上位概念とともにビジョン・事業戦略を押さえた上で、人事ポリシーの設定
※人事ポリシーとは、企業としての「人・社員」に対する考え方、向き合い方を明文化したものあるべき社員像を設定する場合もあれば、企業として社員に対する宣言とする場合もあり、内容は様々
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3.人事ポリシーを根幹においた評価制度・賃金制度の「在り方」の検討
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4.評価制度のポイントを押さえた検討・構築
(1)等級・職種ごとの役割の整理
(2)職種特性やバリューチェーンを踏まえた評価項目の設定
(3)全職種で可能な限り定量的な評価項目の設定
①統一しにくい成果系項目は、MBO(目標管理制度)の導入も1つ
②長期スパンのミッションを担う職種は、評価期間ごとにマイルストーンを置き、進捗度を評価する
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5.賃金制度のポイントを押さえた検討・構築
(1)企業様によっては、職種別賃金制度を導入するところもある
(2)賃金差が付きにくい製造系社員への報い方の検討
①企業様によっては、「業務改善提案賞」などを設定し、日常業務+αの頑張りに報いる仕組みを導入している
②スキルマップの充足率が評価⇒賃金へ反映され、成長を可視化し、成長モチベーションアップを育てる
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6.すべてに1本の軸が通っているか確認
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7.社員への説明・試運用・本格運用の開始
人事制度の目的を押さえた上で、最適な運用と制度のブラッシュアップ
製造業においてよく見られる課題を挙げ、人事制度での対応事例とともに、制度構築のステップをご説明しました。
人事制度構築の際、大前提として押さえていただきたい点が2点あります。
1点目は、人事制度の目的です。それは「人材育成」です。
評価をし、賃金を決める側面はその一部で、大目的は、あるべき姿と社員一人ひとりの現在地を確認することで、今後の課題を抽出し、次の成長へつなげていくことです。この前提を押さえておくと、構築の中で迷った際にも適切な選択ができるようになります。
2点目は、今後も定期的に見直す認識を持っておくことです。企業の置かれた環境は常に変化するように、人事制度も常にブラッシュアップしなければなりません。企業によっては毎年評価項目を検討するところもあるくらいです。運用に耐えうるレベルまで構築ができれば、後は運用をしながら制度の完成度を上げていくことも選択可能です。
人事制度はあくまで手段ですので、運用する先のことを踏まえ構築ができると業績に貢献できる制度づくりを形にすることができます。
さいごに
今回は製造業で比較的多く出る課題を挙げ、人事制度構築のステップをご紹介しました。
とは言え、同じ製造業でも企業によって課題は様々であり、事業の成り立ちによって企業内での職種の
パワーバランスも様々です。企業の状況に合わせた制度設計ができると良いでしょう。
その上で、制度は常に改善を加えながら、構築2割、運用8割であることを念頭に置き、制度構築に取り組んでください。
最後に、多数の職種がある製造業だからこそ、お互いのそれぞれの役割を理解し、同じ方向に向かうことが重要です。
そのために人事制度が担う役割は大きく、社員一人ひとりの成長を支え、
経営理念・パーパス・ビジョンを実現できる制度になるような構築を目指していただきたいです。
※本コラムは立入が、タナベコンサルティングの経営者・人事部門のためのHR情報サイトにて連載している記事を転載したものです。
【コンサルタント紹介】
株式会社タナベコンサルティング HRコンサルティング事業部
HR大阪本部
立入 俊介
総合人材サービス会社にて、大手~中堅中小企業の新卒採用・人材育成支援に従事し、プレイングマネージャーとして組織マネジメントを担い、社内外両面の組織改革の経験後、当社へ入社。採用領域での知見を活かし、「社員が活き活きと働き、周囲に薦めたくなる組織作り」の信条のもと、顧客の理念・ビジョン・企業風土・採用競争力・制度設計・グループ人事まで、多面的要素から戦略的な人事コンサルティングに行っている。
主な実績
・新卒採用支援コンサルティング
・食品メーカー向け賃金制度設計コンサルティング
・人材育成支援コンサルティング
- 経営戦略・経営管理
- モチベーション・組織活性化
- 人材採用
- 人事考課・目標管理
- キャリア開発
創業60年以上 約200業種 15,000社のコンサルティング実績
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強い組織を実現する最適な人づくりを。
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タナベコンサルティング HRコンサルティング事業部(タナベコンサルティング コンサルティングジギョウブ) コンサルタント
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