社員の正当な危機感が、企業の“ゆでガエル”状態を救う
本日は、【ゆでガエル理論】をテーマに考えを深めていきたいと思います。
「ゆでガエル理論」とは、ゆっくりと進行する危機や環境変化に
対応することの大切さ、難しさを戒めるたとえ話の一種で、
おもに企業経営やビジネスの文脈でよく用いられます。
カエルを熱湯の中に入れると驚いて飛び出しますが、
常温の水に入れて徐々に熱すると、カエルはその温度変化に
慣れていき、生命の危機と気づかないうちにゆであがって
死んでしまうという話です。
理論といっても、実際は作り話で科学的にも誤りであることが
わかっていますが、経営者や経営学者、経営コンサルタント
などによってまことしやかに語られてきたため、
すでに一つの教訓として定着しています。
日本の人事部 HRペディア~人事辞典~より
https://jinjibu.jp/keyword/detl/737/
┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
■多忙で売上もアップしているから当分安泰?
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当社は技術系企業に特化したダイバーシティ経営の推進支援
に取り組んでいるため、やはり技術系企業(IT通信、建設など)
からのご相談がほとんどとなっています。
さすがに現在コンサルティングで関わらせていただいている
クライアント企業様においては、ゆでガエル理論に陥らぬよう
常に意識をされているのですが、
コロナ渦でリモートワーク中心の働き方が増加し、
DX推進も加速しているため、IT通信業などは
多忙を極めているのは皆さんご存じの通りかと思います。
「コロナ渦で仕事がない、失業したという業界や業種があるが
うちの業界は忙しくてありがたい限りですよ」
「一時期売上が落ち込みましたが、
最終的に売上も利益もアップして安堵しています」
そんな景気の良い話を伺うことも少なくありません。
私はそれらの話を聞きながら、果たして今の良い状況が
一過性のものなのか、それとも永続的に続くものなのか、
常に気を引き締めて見極めることが重要ではないか・・
とつい思ってしまいます。
“自社のコア・コンピタンスを活かせているか”
“市場のニーズ、将来的なニーズも含めて捉えているか”
こういったことを考え続けている企業もあれば、一方で
今忙しくて売上も伸びているから安堵している企業も
いるのが現状であると、D&I推進のご相談にいらっしゃる
企業の方のお話を通して感じている次第です。
┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
■社員ひとりひとりが正当な危機感を持つ
┗━━━━━━━━━━━━━━━┛
「会社経営のことは、経営層が考えればいいのであって
人事担当者や管理職はそこまで考えなくてもいいのでは・・」
という考えもあるかと思います。
もちろん、経営層は最も会社経営について考えるべき
立場にあります。
正当な危機感を持つべく、常にアンテナ高く
自社の外部環境・内部環境を評価し判断し続けねばなりません。
しかし、今の時代は経営者だけではなく、
少なくとも管理職、できれば次期管理職候補となっている
若手社員の方も、経営視点で仕事に取り組むことが
求められていると私は考えています。
日頃から会社全体を見る意識を持ち、
経営視点で今おかれている自社の状況に対して
正当な危機感を感じることーー。それはもしかすると
「起業家精神(アントレプレナーシップ)」
につながっているのではないかと思います。
与えられた仕事を正確にきっちりやり遂げる、ということも
大切な取り組み姿勢の1つだと思いますが、
経営視点で会社全体を捉えられるようになると
明らかに、会社での仕事内容や活動に変化が現れることは
必至です。
「今、自分が取り組み積み上げていくべきことは何か?」
「不測の事態に陥っても安定した売上をもたらす方法はあるか?」
「業務の生産性を高めてコスト削減につなげられないか?」
といった意気込みを持って仕事に向き合う姿勢は、
少し話せばすぐに分かるものではないでしょうか。
特に、私は仕事上様々な企業の、様々な立場の方と
お話しする機会が多くあるため、
「この人は経営視点を持って施策を考えているな」
「会社成長のために何をやるべきか本気で考えているな」
と、相手の話ぶりから判断できるようになったと感じています。
3年前の話にさかのぼりますが、コンサル先の企業様から、
管理職候補者の選抜面談への同席を依頼され、
当時経営視点があると判断したポテンシャルの高い方々を
次期リーダー候補者として選び、数年かけて育成に関わらせて
いただきました。
その関わった全員(!)が、今年度から管理職としての
第一歩を踏み出したという結果からも、私の人を見る“勘所”は
なかなかの精度かもしれないと思っている次第です。
(※もちろん、ここに至るまでの数え切れない失敗はまたの機会にお話できればと思います・・)
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■形だけの施策になっていませんか
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最近、当社にD&I推進でご相談いただく技術系企業様は、
今の世情が追い風となっているなどして
売上が伸びていて、勢いのある企業様が多いような
印象を持っています。
もちろんすべての企業様に当てはなることではありませんが、
ゆでガエル理論がチラついて見えるような企業様も
少なくないな、というのが現状だと感じています。
D&I推進やSDGs、ESG経営等々、よく分からなくても
取り組む方がよさそうだからやりましょう、という考えも
現状を打開するためには必要な考えの1つかもしれません。
しかしながら、実際にご相談に来られる人事部長や管理職
といった経営視点を持つべき立場の方との対話の中で、
正当な危機感を感じていないような様子が
垣間見えてしまうと、結局、全ての施策が【形だけ】で
終わってしまうのが火を見るより明らかではないでしょうか。
確かに、形になればやった気になるものです。
例えば・・
・SDGsバッチをつけた
・D&I推進研修を実施した
・ESG経営方針を自社HPへ掲載した など
形からスタートすることもあるかもしれませんが、
自社の取り組み状況や経営層の姿勢、そして自分自身についても
今一度振り返っていただき、「形だけでとどまっていないか?」と
考えていただく機会を設けていただければと思います。
その振り返りが、自社が“ゆでガエル理論”に陥らないための
貴重な取り組みの第一歩につながると私は考えています。
- 経営戦略・経営管理
- モチベーション・組織活性化
- キャリア開発
- リーダーシップ
- マネジメント
◆技術系企業D&I突破口となる次世代リーダー・女性管理職を育成
元NTT女性管理職10年、約500名のSE部門における人事育成担当3年の豊富な現場経験を持つ。これまでのべ5,000人以上の技術系企業のリーダー・管理職育成に携わる。専門は技術系企業に特化したD&I推進コンサルティング。
細木聡子(ホソキアキコ) 株式会社リノパートナーズ代表取締役/技術系ダイバーシティ経営コンサルタント/(公財)21世紀職業財団客員講師/中小企業診断士
対応エリア | 全国 |
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所在地 | 千代田区 |
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