管理職になったら、実務をやっている暇はない
管理職という立場になったのに、マネジメントに注力せずに実務をやってしまう人がいます。
自分で仕事を抱え込んで、部下、担当者の仕事も全部奪ってやってしまう・・・実は女性に多いことなのです。
というのも、女性は仕事に対する価値観が「仕事内容」という傾向があるためです。
男性の価値観は「役職」なので、その地位につけば仕事内容は関係ないという場合が多く、その役職についてもあいにく女性は地位のことなど考えていないため、部下がやるべき実務に手を出しがちなのです。
また、部下の仕事は、一段上にいる自分の役職が持っている権限のおかげで、対する部下や担当者レベルの人とのやりとりは、多少間違ったことを言ってもとやかく言われないので、ますます面白く感じて手を動かしてしまうのです。
さて、そんな部下の仕事を奪うような管理職に対して、どのように気づきを促す事ができるでしょうか?
全く知らない部署へ異動させる
部下の仕事をやってしまいがちなのが、現場からの叩き上げで管理職になった人です。
仕事内容は熟知しているし、部下より経験があるので、自分の方が上手く仕事をさばけるのは当然。
しかしそこで管理職が実務に手を出すと、部下は育たないばかりか、本来複数の部下で対応するべき仕事を自分一人で抱え込むため、成果にも繋がらなくなってしまいます。
例えば、人数が5人いたら、5人分の仕事の成果には絶対につながらないのです。
ちなみに、私がNTTにいた頃の印象ですが、管理職へ昇格すると全く知らない部署へ移動させ、マネジメント力だけを育成するよう専念させていたように思います。
そもそも、仕事の内容を知らないから、マネジメントに注力するしかないという環境を作ってしまおう、という意図が考えられます。
この記事を読んでいる企業の方で、現場からの叩き上げで管理職へ
昇格させた人がいらっしゃるなら、その人の下で働く部下たちが、仕事のやりづらさを感じていないかヒアリングする必要性についてご検討いただくと良いかもしれません。
マネジメントの面白さを伝える
マネジメントはつまらない仕事だ、と心の底で思っている管理職は意外と多いかもしれません。
確かに、実務という側面がなくなって面白さは半減するかもしれませんが、
マネージャーの仕事は簡単ではないからこそ、その辛さを乗り越えた先にある達成感があって、そこには、チームみんなでやる面白さ、そして部下の成長が見れる、という楽しみがあります。
私はよく「マネジメントは、痛気持ちいマッサージのようなもの」と言っていますが、
マネジメントという仕事から、実務とは違う「やりがい」を必ず発見していただけると私は確信しています。
例えば、個人的に楽しんでいた仕事の一つに、部下の責任を取って「上司として怒られる」という仕事がありました。
トラブルが発生して、謝罪しなければならなくなった時、チームで立てた戦略の一環として、
「私が責任を持って客先で怒られる」
というストーリを仕立て、実際にしっかりと客先で怒られたことで、行き詰まっていた仕事が一気に動き出すのを見ました。
怒られることは苦ではなかったし、何より部下が喜んで仕事をしてくれる姿を見れる、その醍醐味がそこにありました。
情報を活用して部下を守り、活かす
課長になった時、担当者や主査という時には見えなかった「違う景色」が目の前に広がった!と強烈に感じました。
中小企業診断士の資格を取っていたので、会社の仕事は実務だけではないことは理解していましたが、管理職になるまでは実感まで至っていなかったのです。
つまり、担当者時代は、自分の課長や部長といったリーダー層が何をしているのかさっぱり分からず、いてもいなくても同じではないか、仕事は現場の私たちが回しているのだと本気で思っていたのです。
しかし、長期的な戦略、会社の方針など、整合性をとって事業を拡大することを考える人や、チームのモチベーションを上げて成果を出すために管理をする人は絶対に必要です。
そこに気づいたのが、課長に昇格し、それまで得られなかった会社の情報が続々と
手元へ入ってくるようになってからです。
例えば、組織変更や人事情報、収支情報などと共に入ってくる会社の意図や考え方、
それは決定事項だけでなく途中の紆余曲折に至るまでが管理職には伝わってくるのです。
これは現場で働く社員たちの耳に入ると、余計な不安を煽り、最悪離職につながるかもしれません。
しかし、それらの情報に基づき、例えば組織変更に伴い今関わっている仕事が無くなる社員に対しては、モチベーションが下がらないように、徐々に残る仕事へ移行させたり、評価者会議において昇格対象者として引き上げられる部下がいるとしたら、他部署へ顔を売るようそれとなく仕向けて有能社員ぶりをPRさせたりするなどして、いかに部下を守り、引き上げられるか、そのために管理職だからこそ入ってくる情報を細かく分析し、部下マネジメントに活かしていました。
私自身も、こうやって上司から守られ、引き立てられていたんだと、
体で感じることができたのが管理職になってからでした。
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いかがでしたでしょうか?
会社が成長するためには、現場の実務をこなす社員が存分に力を発揮する必要があり、
そのために彼らのモチベーションを上げ、成長を促すための「スイッチ」を押さねばなりません。
そのスイッチを押すのは、やはりマネージャー、リーダの役割であり、
それこそがマネジメントという仕事だと思います。
だから、実務をやっている場合ではないのです。
私は、部下の手がけた仕事を基本的にはあまり直しませんし、直す時はなぜ直すかを、
考え方を含めてフィードバックします。すると、次からはフィードバックした部分は
一人でできるようになりますし、そういった細かい指導を繰り返すことで、
こちらの意図を先に汲み取って仕事がこなせる部下がひとり、またひとりと、どんどん増えていきます。
その結果、自分は楽になりながらも、部下ひとりひとりの生産性が高く、
成果を出せるチームへと成長させることができるのです。
そんな自分のマネジメントによるやりがいを感じることができるのが、管理職ではないかと私は考えます。
- 経営戦略・経営管理
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◆技術系企業D&I突破口となる次世代リーダー・女性管理職を育成
元NTT女性管理職10年、約500名のSE部門における人事育成担当3年の豊富な現場経験を持つ。これまでのべ5,000人以上の技術系企業のリーダー・管理職育成に携わる。専門は技術系企業に特化したD&I推進コンサルティング。
細木聡子(ホソキアキコ) 株式会社リノパートナーズ代表取締役/技術系ダイバーシティ経営コンサルタント/(公財)21世紀職業財団客員講師/中小企業診断士
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所在地 | 千代田区 |
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